第14話:強襲

「急げ、女子供やH級の者は領都に逃げ込め。

 G級は女子供を護衛して領都に行け。

 F級以上は5つに班分けして徐々に領都まで撤退する。

 絶対に背中を見せるなよ、見せた時が死ぬ時だと思え」


 ギルドマスターも無理を言う、この状態では恐怖で逃げて当然だ。

 逃げたら処刑される社会でであっても、限られた使命感のある者だけ恐怖に打ち勝って留まるくらいで、普通は命を最優先して逃げるのが人間というモノだ。

 特に命と利益を秤にかけて戦う冒険者は、無理な命令を聞く必要などない。

 多くのラノベやアニメにあるような、強制依頼などこの世界にはない。

 国同士はもちろん貴族同士が争うこの世界では、貴族領にいる冒険者は半ば領主に抱えられている状態なので、あまりに危険な場合は緊急招集でも他領の冒険者は招集を拒否するだろう。


「マスター、俺がゴブリンと戦って時間稼ぎをしよう。

 その代わりと言っては何だが、ギルド所有の武器と防具を貸してくれ」


 マスターが本気で悩んでいるが、当然だろう。

 これから強大なゴブリンの大軍勢と戦うのなら、武器や防具は大切だ。

 昨日会ったばかりの俺に簡単に貸し与えられるものじゃない。


「悪いが無理だ、全ての武器を領民に貸し与えることになっている。

 ゴブリンから奪った武器を使うようにしてくれ」


「分かった、そうさせてもらおう」


 ガキの俺が偉そうな口をきいても、受け入れるだけの度量があるマスターだけあって、返却されない覚悟で領民に武器と防具を放出するのだな。

 漢気のあるマスターには敬意を払うべきだ。

 それに、ゴブリンから武器を奪って使う事は考えていなかった。

 ノア達から奪った武器は使ってるのに、我ながらうかつだな。


「では、俺は移動中だというゴブリンの群れに行かせてもらう」


「へん、自分だけ逃げるんじゃないだろうな」


 昨日言い掛かりをつけて来ていたB級パーティーの剣士が喧嘩を売ってくる。

 こんな奴でもB級パーティーの剣士だから、それなりに戦えるのだろう。

 叩きのめしては戦力が減ってしまうが、俺がロードスライムと時間稼ぎするのなら、少々の戦力減少には目を瞑ってもらおう。


「うわ、止めろ、止めないか、止めてくれ、止めないとただじゃおかないぞ。

 うっぐっうううう、ごっぷっほ、くるしい、死ぬ、死んじまう。

 許せ、謝るから、謝るから許せ、すまない、ごめん、許してくれ」


「おい、止めろ、止めないか、同じ冒険者だろ、許してやれ、うぎゃ」


 腹の立つ剣士は、ロードスライムに確保させて身体の中に取り込んで溺れさせた。

 時々身体から出して悲鳴をあげさせてやった。

 溺死する寸前で出すから、窒息寸前の苦しみを何度も繰り返すことになる。

 強面で仲裁に入ろうとした槍士は、一撃で顎を砕いてやった。


「そのくらいにしてやってくれ、2人とも二階級降格にするから。

 アレックスは俺の権限でD級にする。

 これからの働き次第ではレベルに関係なく王都本部にC級に特別申請する。

 それで手を打ってくれ、頼む」

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