第11話:斥候か刺客か忍者
俺はヒュージスライムが集めた薬草と毒草と素材をギルドで売った。
最高品質の薬草と毒草と素材は思っていた以上の高値で売れた。
売ったお金で、回復薬と解毒薬と鉄剣と木刀と木盾を買った。
木刀と木盾を買ったのは、資金が足らなかったからではない。
木刀と木盾をという物をスライムに覚えさせて、自作させたかったからだ。
原材料が普通の木ではなく、魔樹の中でも硬い材木を原材料にしているので、鍛造技術の低い安物の鉄剣が相手なら十分対抗できる。
「本当にでかいな、こんな巨大なスライムが相手だと、俺達でも勝てないかもな」
「おい、何弱気な事言っているんだ。
いくらでかくても所詮スライムはスライムだ、俺達が連携すれば勝てる」
あるB級冒険者パーティーの攻撃魔術士が冷静な判断をしたが、愚かな剣士が変な自信とプライドから、その言葉を否定してくる。
まあ、別に気にする必要などない。
攻撃してきたら愛しいスライムの食材にしてやるだけだ。
慎重なA級パーティーはそんな会話に加わることなく、何時でもスライムから逃げられるように、十分な距離を取っている。
まあ、ヒュージスライムが本気で攻撃したら、その程度の距離に意味はない。
「おい、依頼に関係ない事でもめるんじゃない。
今回索敵するのはゴブリンで、それを成功させるためにヒュージスライムが必要だとマスターが判断した、それ以上でもそれ以下でもない。
お前が余計な挑発をしてスライム従魔師ともめたら、お前を告発する。
その覚悟があって今の言葉を口にしているだろうな」
「……すまん、この通りだ、告発だけは止めてくれ」
「本当ならスライム従魔師に謝るべきだが、お前にもプライドがあるだろうから、そこまでは言わんが、俺の生きる道を邪魔するなら密かに殺すぞ」
「……はい、すみません」
A級パーティーの斥候はよほど恐れられているのだろう。
もしかしたら斥候ではなく中級職の刺客か上級職の忍者なのかもしれない。
まあ、俺にはどちらでも構わない、ヒュージスライムが中級職や上級職のスキルを奪えるかどうか、興味があるのはそれだけだ。
「準備ができているのなら出発だ、配置はギルドで決めた通りだ」
そのままA級パーティーの斥候役が全パーティーの指揮を執った。
A級パーティーのリーダーは上級職の賢者だと聞いていたのだが、索敵を主任務にする時は斥候役が指揮を執るようだ。
この斥候はたぶん忍者なのだろう。
忍者を中心に右に1つのB級パーティー、その外側に俺とヒュージスライム。
左側にはB級パーティーが2つ等間隔にいる。
言葉で指示する事などなく、全部身振り手振りで指示してくる。
その指揮ぶりはとても安心できたし、何より俺の大切なスライムを馬鹿にした連中を左端に配置した、その慎重さも気に入った。
この忍者の指揮なら無事に索敵が可能だと思った。
まあ、俺が大切にしていたのはそんな事ではなく、成体スライムを合体統合させるか魔獣魔蟲を捕食する事で、ヒュージスライムが次の進化を遂げる事だった。
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