公爵の長男に転生したけど、職業スキルがスライム従魔師だったので、王太女との婚約を破棄され追放されてしまった。

克全

第1章

第1話:婚約破棄追放

「アレックス様、お待ちしておりました」


 王太女との婚約を破棄され、大魔境に追放された俺の行く手を、弟の側近が阻む。

 少しは情けというモノを持ってもらいたいと心底思う。

 傅役のトーマスや他の側近達が嘆願を繰り返してくれて、内々で確実に殺すところを、大魔境に追放して天の配剤に委ねる所まで父に交渉してくれたのだ。

 見送ってくれた俺の側近達に見つからない大魔境の中で待ち伏せするなんて、性格が悪いにもほどがあるぞ、ノア、ジャック、チャール、レオ。


「父上の決定に逆らう気か」


 わずかな希望を抱いて父の名を出してみるが……


「残念ではございますが、アレックス様は公爵閣下に見捨てられたのです。

 家中の不和を防ぐために、表向きトーマス殿達の嘆願を聞き入れる形にしただけで、内心では最初から殺すつもりでおられたのです」


 正直最初からそんな気はしていたのだ。

 転生して前世の記憶を持っている俺は、生まれてからずっと優秀だった。

 父も心から俺の事を期待していたからこそ、王太女との婚約を成立させたのだ。

 普通の庶民なら、不遇な職業スキルでも問題なかっただろう。

 だが、リークン公爵家から女王の王配に出す男の職業スキルが、スライムの従魔師という訳にはいかないのだろう。


「最後に聞かせて欲しい、俺を殺すと言い出したのは、父上が先か、それともお前達が先か、どちらなんだ」


「……我々が先でございます、お覚悟を、アレックス様」


 ノア達は最後の情で嘘をついてくれたようだ。

 言い淀んだ表情から見ても、最初に言ったのは父だろう。

 父としても、仕方のない決断だったかもしれない。

 生れてから十三年間、ずっと好き合うように仕向けられた俺とクラリス王太女だ。

 今さらクラリス王太女に、弟のジェームスを愛せと言っても無理がある。

 ましてどこかに俺が生きているとなれば、クラリス王太女は俺を探し出して、王配にすると言い出してしまうかもしれないのだ。


「分かった、最後に情けをかけてくれてありがとう。

 その情けに免じて殺さないでおいてやるよ、ノア、ジャック、チャール、レオ」


 俺が神から授かった天職は、最弱で役立たずと呼ばれるスライム従魔師だ。

 この世界はまるでゲームのようで、どれだけ魔力があっても、スキルがなければ術として魔力を使えない。

 生れてからずっと経絡経穴やアーユルヴェーダに従って魔力を流し、俺の知るこの世界歴代最強に魔導師を軽く凌駕する魔力にまで成長しても、何の役にも立たない。


 だが、心を通わせたスライムを通じてなら、スライムが持つスキルの範囲なら、その膨大な魔力を使うことができるのだ。

 備えあれば憂いなしとはよく言ったもので、ラノベやアニメの世界を参考に、全ての魔術を使う練習や、あらゆる魔獣を従える練習をしていたお陰で、スライムしか従えることができない事を、神託を受ける前に知ることができていたのさ。

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