気が付いたら残り13日越えて11日だったから炊飯器セットして炊飯押したらタイムスリップした

影神

紅い炊飯器



人の為にと生きてきた。



それを望み、使命として。



やりたい事等なくただただ茫然と、


自分はここに居るべきではないと。



まるで風が吹いたような感覚にずっと囚われていた。




そうこうしている内に時間は流れ、


嫌なことに耐える日々を送り、


それを当たり前のようにこなした。



すると、ある日。


自分のそれらに活を入れるかの様に、身体を壊す。



正確には、介護をし転倒しかけた利用者を庇ったら神経をやった。



いろいろと難あり、解決するかのように思えたが、


労災を切られ、現在に至る。




人が当たり前のように通る道よりも険しく、


"普通"と呼ばれる"者ら"とは自分の居る次元が違う事に、


遠の昔からは薄々感じてはいたが"そう"だった。




私はこの世界で"普通"と呼ばれる『人間』というものではなかった。




人間に固執する訳ではないが、弾かれると寂しくもなるものだ。




人間として扱われない為、私は世間で言う「紐」になった。



紐と言う状況下に置かれただけありがたいだろう。




私はこの時間を使い、いろいろな事を再度、學んだ。



日々に感謝し、与えられたものに感謝した。



考え方や価値観を知り、自らを覗き見た。



だが、底には何が映るでもなく、ただただ痛々しい自分がいた。




価値観や思想、時間が過ぎようとも私はあの頃から何も変わってはいなかった。




煙草を吹かし、珈琲を流すように入れると、私は執筆を始める。



誰が見るかもしれぬ、称賛にあたいしない金にもならない事をする。



それは、私が唯一今出来ること。




創作された"モノ"に感情を揺さぶり、感じた事を表現する。




そして、自分を正当化し、時に自分を追い詰める日々を繰り返す。




衣類を洗濯し、天気が良ければ掃除をし、時間になれば米を研ぎ、炊飯器のスイッチを押す。



インターホンの音に怯えをなし、郵送屋にすら鼓動を早める。




SNSを見れば、勝ち組を擁護する者らで溢れ返り、


『均衡』と呼ばれるものを目の当たりにする。



「努力したのだから当たり前」



「引摺り合ってどうする」



「成りたいのなら成ればいい」



偏った見解が正論とされ、現実を押し付けられる。




そんな毎日を繰り返す。



いつまで続くか、いつまで続けるのか。




私は今日も『幸せ』を謳歌する。




当たり前のように過ぎる時間を当たり前の様に。




天気の良い今日は洗濯物がよく乾く。



夕飯用に米を研ぎスイッチを押す。




まともに働いて貯金をする兄弟。



日々に疲れて嘆く友。




羨ましくも思いながら自らの幸せを噛み締める。




炊飯器にセットし、ボタンを押す。




タイマーが鳴り、籠った煙が舞い上がると共に、


"私は過去へとタイムスリップする。"




繰り返し、リセットされたようにまた次の日へと。




月曜が始まり、日曜日が終わり、


天気が変わり、季節が変わる頃、



今年もまた終わる。




結局、私は何度繰り返しても何も変わらなかった。



初めからやって、変えようとしても。




そうしてわかった事がひとつだけ。




『変わる気がない奴は変わる事が出来ない。』



ということ。




私の今の『幸せ』をあなたにも授けよう。




"あなたが幸せになりますように。"









































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気が付いたら残り13日越えて11日だったから炊飯器セットして炊飯押したらタイムスリップした 影神 @kagegami

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