霧雨に隠れない僕の
2121
霧雨に隠れない僕の
纏わりつくような霧雨は、肺の中までも水浸しにしようとしているようでうまく息が吸えない。湿気ばかりの空気を吸い、なんとか呼吸をして酸素を取り入れる。
曇り空の夕暮れは薄暗く、鬱々としたまま赤く彩られることもなく更けていく。隙間なく空を埋める雲は、僕の心象を表しているようで嫌になる。
早く、もっと早く日が暮れろ。
願うように毒づきながら、雨で重い前髪を払うついでに目許を拭う。
──霧雨も夕暮れも僕の涙なんて隠してくれないんだから、早く夜になれ。
止まらない涙が、また一粒地面に落ちた。
「ごめん、君のことをそんな風には見れない」
告白をしてすぐに、君の顔が翳ったのが分かった。幼馴染でいつも一緒にいた僕だから、その表情でどんな返事が来るかなんて容易に想像ができた。想像できたからといって、次の言葉に傷付かなくなる訳じゃない。耳に届いた僕を振る言葉は、優しい響きをしているのに深く深く心臓を痛め付ける。
だからって君までもそんなに痛みをこらえるような顔をしなくていいんだ。けど君は優しいから、僕のことを気遣って同じように痛んでくれる。
「大丈夫。明日からも変わらず友達だよ」
笑いながら言う僕の顔は、ちゃんと笑顔を作れていただろうか。僕の台詞に、「うん」と目に少し光を取り戻した君がやっぱり好きだったから、言ったことは裏切れない。
また明日学校でね、と別れた僕はなんとか最寄り駅まで辿り着いたものの、堪えきれず雑巾みたいに泣いている。
本当に格好悪い。まだ家にも着いていないし、周囲には人もいる。雨が降りだしたのに傘も持ってなくて、徒歩十五分の道のりをこのまま歩かなくちゃならない。心も身体も顔も、全部がぐちゃぐちゃで嫌になる。
涙を袖で拭い、一瞬暗転した視界の向こうにいるのは、笑いかける君の姿で。
言ったことは、守らなきゃ。
明日から、絶対にちゃんと友達をするからーー今日までは君を好きな僕でいさせてください。
霧雨に隠れない僕の 2121 @kanata2121
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