第3話 吉良坂さんのおっぱいは……
「な、なんで写真なんか……ってか見てないで助けるの手伝ってくれよ」
「大丈夫よ。その子、もう意識は戻ってるから」
「え?」
俺は視線を吉良坂さんに向けなおした。
……あ、たしかによく見ると眉毛も鼻もぴくぴく小刻みに動いている。
じゃあなんでこの人倒れたふりを続けてるの?
「もしもーし。吉良坂さーん?」
「……」
吉良坂さんは目を開けない。いやいや、もう梨本さんが真相ばらしてますよ。
「吉良坂さーん。もう大丈夫だから。ってかトイレの床って結構汚いと思うよ?」
「ひっ…………」
あ、いまこの人「ひっ」って言ったよ。確実に身体を起こそうとしたけど、根性で気絶したふりを続けている。いやいや、だからなんで?
「あの……吉良坂さん。もういいですって」
「…………」
「吉良坂さーん。もうばれてますよ」
「…………」
「だから吉良坂さんってば」
「なにこの無駄な時間」
梨本さんの心底うんざりっていう声が聞こえてきた。
「作画崩壊アニメを見てる方がましなレベルの茶番を見せられてる私の気持ちはいったい?」
梨本さんは目を細めて俺たちをじとーっと睨んでいる。
「いや、だって吉良坂さんが起きないから」
「だったらまどろっこしいことはやめて帆乃のおっぱいを揉みしだけばいいのよ」
「お、おおおおぱ、おっぱい?」
いきなりそんな爆弾発言!
たしかに吉良坂さんのおっぱいはダイナマイトだけども!
「帆乃のおっぱいはすごいのよ。超高級マシュマロよりもふわふわもちもちとろとろえろえろよ」
な、なんだって?
ふわふわもちもちとろとろえろえろ?
「しかも帆乃はおっぱいを揉まれるのを世界平和よりも強く望んでいて、スカートをめくられるのも、大晦日に新年に向けてカウントダウンするときくらい興奮するって」
「ちょっとでたらめ言わないでっ」
暴走する梨本さんを止めるため、顔を真っ赤にした吉良坂さんがようやく上半身を起こした。
いつもは物静かな彼女だが、いまは少し興奮しているように見える。
「私はそんなビッチじゃない。
俺を指さしながら、きっぱりと否定する吉良坂さん。
「大丈夫だよ吉良坂さん。梨本さんの冗談だってわかってるから。吉良坂さんがビッチだなんて、これっぽっちも信じてないから」
「そっか。それならよかった」
「こんなにおっぱいがえちえちなのにビッチじゃないって、逆にエロいわよね?」
「ちょっと臨! それ意味わかんないからもうやめて」
立ち上がった吉良坂さんが梨本さんの両肩をつかんで前後にぐらぐら揺らしている。あれれー、梨本さんニヤニヤしてますねぇ全く反省してないですねぇ。あと吉良坂さんのおっぱいの情報ありがとうございます! あとで最高級のマシュマロ買って揉んでみます! ……とは断じて思っていないよ。本当だよ。
「そんなことよりも」
梨本さんが吉良坂さんを押しのけて俺の前に立つ。
「宮田下くん。あなた、そんなに呑気にしてていいのかしら?」
梨本さんの瞳が黒く光る。ああ、これ、詐欺師がいいカモを見つけたときにする目だ。
「どういうことだよ」
「いまあなたが立っている場所、女子トイレの中よ」
あ! やばい忘れてた!
「いや、これはでも吉良坂さんが倒れてたからで」
「こ、れ」
梨本さんが、持っていたスマホの画面を俺の方に向ける。
「な、あ……それ、は」
そこには、さっき梨本さんに取られた写真があった。女子トイレの中で、倒れている吉良坂さんに覆いかぶさっている俺、俺、俺――――。
「この写真を見た人は、女子のトイレ中の音を聞きたいという個人的な性癖を満たすために女子トイレに侵入した宮田下くんが、とある女子生徒を押し倒して襲っているように見えるわよねぇ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます