第23話 最後の一手
僕は
そして眼下のアナリンに向けて左手で魔法を放った。
僕にとって最も
「
僕の指先から連続で放たれた
だけどその
「
僕の手のひらから放射された光の
この
「
アナリンはこれをも
その瞬間に僕は地面に足をつけて踏ん張り、
そして上段から振り下ろされる
硬質化した僕の構える
ズッシリと重くなった僕の両足が石の床にめり込むけれど、僕は何とか後方に吹き飛ばされずにその場に踏みとどまる。
そして斬撃を受け切った僕は瞬時に硬化を解いて息を吐き出すと、間髪入れずに次の一手を打った。
「
ノアの得意とする白と黒の炎のブレスが僕の口から吐き出され、アナリンの顔を
「グガアッ……」
アナリンは
今だ!
僕が念じると
僕はヴィクトリアから分けてもらった腕力と念力を駆使して
「
この一撃でアナリンの手から
強い決意を持って繰り出した
アナリンはこれを一回一回受け流すけれど、僕は構わずに最大出力で
「うおおおおおっ!」
いけっ!
いくんだ!
ここで一気にたたみかけろ!
僕は勢いをグングン増して
すると十数度めの刃を受け止めたアナリンの
同時にメキッという嫌な音がする。
おそらくヒジの骨が折れているはずだ。
無理な動きに耐えかねて、ついに彼女の右腕が悲鳴を上げたんだ。
あれならもう今までみたいに刀を振ることは出来ない。
そう思った僕は一気に
その時……。
「ガアッ……」
アナリンの右ヒジからブシュッと赤い血が噴き出したかと思うと彼女は……いや、
予想以上に速いその刃を受け止めようと僕は
「うぐっ!」
ノアの
ふ、深い斬撃だ。
ノアの
「くっ!」
僕は痛みを
そんな僕に向かってアナリンが最上段に
その右ヒジは肌が裂けて……ほ、骨が見えている。
そこまでして……。
その異常な光景にゾッとして息をするのも忘れる僕の目の前で、
回避も防御も間に合わない。
や、やられる!
「くっ……えっ?」
その瞬間、真横から何かが僕にぶつかってきたんだ。
それは一陣の黒い風で、アナリンが
あまりにも一瞬のことで状況を理解しかねる僕の首に、熱い息がかかる。
どうやら僕は何かに
「ブルルッ!」
耳元でそんな声が聞こえたかと思うと、僕の体がブンッと中に投げ出された。
「うわっ!」
前後不覚に
温かなそれは動物の背中だったんだ。
馬?
いや……
空中を
赤く
その
僕にとっては印象深い
「て……天烈!」
そう。
それはアナリンの愛馬にして
天烈は
北の森で炎に巻かれて傷ついていた翼は、
天烈が……助けてくれたのか?
「天烈……僕を助けてくれたの?」
僕がそう
「アイタッ! な、何で?」
僕を助けてくれたわけじゃないのか?
僕が目を白黒させている間にも、天烈は地上を見下ろしたままグルグルと空中を
そんな天烈が見下ろしているのは、バルコニーの上に立つアナリンだ。
僕はハッとした。
「そ、そうか……。君は主人があんな姿になってしまったことを嘆いているんだね」
何となく僕にはそんな天烈の気持ちが分かるような気がした。
かつてミランダが自我を失い、不条理な破壊行為を無差別に行っていた時があった。
その時、僕は何とも言えない悲しいような納得いかないような気持ちになったから。
天烈も今、そんな気持ちなのかもしれない。
僕は天烈の背中の
「天烈。力を貸してほしい。君の主人を……アナリンをあの
僕の言葉を理解してくれたのかどうかは分からないけれど、天烈は首を頭上に向けて大きく
地上からは天烈に乗る僕を撃ち落とそうと、アナリンが速射型の
天烈は自慢の飛行速度で赤い光刃をかわすけれど、自分を攻撃してくる主人の姿に悲しげな鳴き声を上げた。
僕はグッと
「天烈。辛いよね。僕にとっては敵だけど、君の主人はもっと誇り高いサムライのはずだ。あんな姿であるはずがないんだ」
僕は左手で天烈の
アナリンに
天烈の加速で突っ込んで、一気に
僕は頭の中でそのイメージを
でも、まだ何かが足りないような気がする。
そのための力を……。
そう考えながら僕は自分の左手首を見た。
そしてそこに宿るジェネットの白い
そうだ。
僕にはまだ手が残されていた。
僕は右手に握った
この武器はこの姿に至るまでに様々な
今もその力がこの中には眠っているはずだ。
だったら……。
「イザベラさん。僕に力を貸して下さい」
僕がそう念じると
いける。
この大一番の勝負を制するための最後の一手を打つんだ。
僕は
「
一次的に能力の大幅強化をすることが出来る強力な魔法だ。
それは僕にとって最後の切り札であると同時に、失敗すれば自滅の危険を
それは彼女の体内に魔力回路がカスタマイズされていたからだ。
先日の潜水艇での戦いで、魔力回路のないジェネットにこの魔法をかけた時は、法力が高まり過ぎて彼女が後に動けなくなってしまうほどの負担を体にかけることになってしまった。
そのリスクは僕にとっても同じだ。
この魔法によって力が一時的に高まったとしてもそれは長くは続かないだろうし、効果が切れた後は体への負担が大き過ぎて戦えなくなってしまうだろう。
それでも僕はこの一瞬に賭けることを決めたんだ。
そうしなければ
最後の一手はやるかやられるかの
「くぅぅぅぅっ!」
金色の粒子は僕の体内に
体の奥底から猛烈な熱が
まるで焼けた金属を飲み込んでしまったかのようだ。
だけど強い力が……この身に余るほどの強い力が
筋肉が盛り上がり、それに
血流が全身を活発に駆け廻り、心臓の鼓動が早くなる。
それでいて脳が覚醒状態となり、五感が冴え渡った。
感じる。
ものすごいドーピング効果だ。
「天烈!」
僕の叫びに応じて天烈は一瞬で上空高く舞い上がる。
遠くに見える地平線がうっすらと明るくなっているのが見えた。
夜明けが近い。
天烈は青い
猛烈な風圧と重力が体に襲いかかって来る。
僕はそれに耐えて
勝負は一度きり。
最高の一撃をここで放つんだ。
眼下ではアナリンが居合いの構えを見せている。
勝てなければ死あるのみ。
それでも僕は
気合いの声を張り上げながら僕は全力で
「いけぇぇぇぇぇぇっ!」
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