第17話 嵐龍槍斧《シュガール》
「馬鹿な……」
アナリンの繰り出す直撃型の
だけど僕が新たに手にした武器・
そして目の前に展開されたコマンド・ウインドウには、この武器の名前が表示されている。
【
それが新しい僕の武器の名だ。
初めて手にするはずのその
「武器が変わったか。奇妙な術を使う」
そしてアナリンは立て続けに
だけど僕は
アナリンは僕の動きが変わったことを感じ取ったのか、舌打ちをするとわずかに後方に下がって距離を取った。
「チッ!」
す、すごい……。
我ながら先ほどまでとは比べ物にならないほど
僕はすぐに理解した。
これは槍を得意とするノアと、
剣の使い手ではないからこそ、僕の
僕はあらためて自分が手にしている
全体が
そして一番目立つ特徴は、両側に
これは金銀の
これならいける。
防戦一方だった僕はここが好機と見て、一気に攻勢をかけた。
「行くぞ!」
「調子に乗るな!」
僕がアナリンに向かって鋭く踏み込むと、彼女は僕を斬り捨てるべく僕以上の速度で
だけど僕はその刃を穂先で弾くと
「チッ!」
アナリンは舌打ちをしてそれを刀で払うと一歩後退し、
その顔には警戒の色が
反撃……出来た。
今まで防戦一方だったけれど、初めてアナリンに反撃することが出来たんだ。
この
そこから僕は果敢に攻撃を仕掛けていった。
さらにこの武器の優れたところは、僕の意思で
槍のように長い状態で敵を突くことも出来れば、
敵との距離を
まるで槍と
もちろん僕の技量じゃ満足に扱えなかっただろうけど、今はヴィクトリアとノアの技術がこの身に宿っている。
これならアナリンと渡り合えるかもしれない。
そこから僕は
アナリンはさすがの刀さばきでこちらの攻撃を防ぎ、一撃も当てられないものの、彼女の攻撃もこちらはしっかりと防ぐことが出来た。
やれるぞ。
戦況が変わりつつあることを悟ったらしいアナリンだけど、その顔には
「少しはやれるようになったようだが、貴様の敗北は変わらぬ」
そう言うとアナリンは
また
僕は腰を落として
「
一瞬で間合いを詰めてくるアナリンが僕の胸を目がけて抜刀する。
避けることは到底出来ないほどの速度であり、僕は反射的にそれを
さっきと同じように衝撃を受け止められるか?
そう思った僕だけど、アナリンは
フェイントだ!
「くっ!」
だけど僕は
そして二度目となる打ち合いで僕は気が付いた。
僕はやはりノー・ダメージだった。
「おのれっ!」
アナリンは二度目の
僕は両足を踏ん張ってこれに耐えた。
そこで僕は気が付いたんだ。
二度の
どういうことだ?
あのゲージは僕らのダメージ量を表しているはずで、金と銀の
だけどこの
要するに
これならこのゲージが空にならない限り、僕はアナリンの直撃型・
「
アナリンはそう言って後方へ大きく飛び
「
光の刃が乱れ飛び、僕に襲い来る。
今のライフで一発でもクリーンヒットを浴びたらゲージが尽きてしまうだろう。
だけど僕の両腕は……いや、全身はスムーズに動いて
次々と飛来する光の刃を僕は確実に弾き飛ばし、アナリンの
それを見たアナリンは表情を改めた。
「なるほど……
そう言うとアナリンは
その動作に僕はハッと息を飲んだ。
妖刀・
その鬼気迫る強さは一度見たら忘れられない。
僕はこの間にアイテム・ストックから最上級の回復ドリンクを取り出して、それを一気に飲んだ。
残り10%ほどだったライフが一気に70%まで回復する。
だけどアナリンはそんな僕を泰然と
「フンッ。そんなことをしても一時しのぎに過ぎんぞ。それより貴様の相手をしている間にあの魔女にチョロチョロと動かれて、王女を取り逃がしでもしたら面倒なのでな。一気に決めさせてもらう」
そう言うと彼女は完全に
しょ、勝負を
僕がそれを邪魔することなく
一時的に戦闘能力を大きく向上させるものの、一定時間を過ぎてしまえば
自慢の刀が
つまり……アナリンが勝負を
もちろんこれは僕にとっても危険な
いくら能力を重ね着したような今の僕でも勝算は大きくない。
緊張に身を
薄紅色の瞳、頭部に生えた2本の赤い角、開いた口元からは鋭い牙が
そして
何度見てもその様子には本能的な恐怖を覚えずにはいられない。
生ける者の命を断ち切るためだけに存在する死神の刃だ。
「さぁ……あの世行きの時間だ」
そう言うアナリンの姿が一瞬で視界から消えた。
僕の中に息づくジェネット達4人が脳内に
僕は振り向くことなく、ほとんど反射的にその場にしゃがみ込んだ。
すると背後からすぐ頭上を恐ろしいほどの剣圧が通り過ぎたのを感じて僕は察したんだ。
アナリンは一瞬で僕の後ろに回り込んだんだ。
それは目で追えないほどの速度だった。
しゃがみこんだ僕は地面に転がりながら自分の勘を信じて
そこにアナリンの振り下ろした一刀がぶち当たる。
「ハアッ!」
「くぅっ!」
その一撃を受け止めた僕の体に強烈な負荷がかかる。
な、何て重い一撃だ。
ヴィクトリアの力でも受け止めるのがやっとだ。
「ほう。貴様の頭を真っ二つにするつもりで攻撃を加えたのだがな。よく受け止めた。だが……」
必死にアナリンの刀を受け止める僕を、彼女は足で蹴り飛ばした。
「くっ!」
お腹に鋭い蹴りを浴びて地面に転がった僕はすぐに立ち上がる。
だけどすでにそこにアナリンの姿はない。
即座に背後を振り返っても、そこにも彼女の姿はなかった。
そこで再び僕の脳内に
上だ!
そんな声が聞こえたような気がして僕は
硬質な音が鳴り響き、そこにアナリンの一撃が振り下ろされる。
アナリンは頭上へと舞い上がり、そこから刀を振り下ろしてきたんだ。
そして……。
「うぐっ!」
左肩に激痛が走る。
今度は受け止めきれずに
「それが精一杯か!」
アナリンは再び僕の腹を蹴りつけ。
さらに刀を横一閃に斬り払う。
僕はすぐさま
「くっ!」
転倒した僕の首に向けて
僕はそれをギリギリのところで避けて地面を転がるけれど、
「うわっ!」
僕は
「ごふっ!」
後方に飛んで距離を取りながら、僕は必死に冷静さを保とうと努力した。
だけど覚醒したアナリンの動きを目で
一瞬でも気を抜けば致命傷となる一刀を浴びてしまうという緊張感に、どうしても
「頃合いだ。そろそろ死ね」
そう言うとアナリンは居合いの構いを見せる。
く、来る!
「
アナリンが刀を抜き放った瞬間、僕が体の正面に構えていた
そ、速射型の光の刃が目に見えないほど速い。
「くあっ!」
僕は
だけど次の瞬間、左の肩が大きく斬り裂かれて、おびただしい量の鮮血が舞い散った。
「うっ……ああああっ!」
左肩を斬り裂かれた痛みに僕は思わず苦痛の声を
ノアの
そして一気にライフが半分以下になってしまった。
おそらく僕の反応が遅れて、光の刃を完全には受け止め切れなかったんだ。
この事実に僕は震える
「死が近付いたな」
殺意に
せっかく縮んだはずの実力差がまた広がったことに、僕は
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