第11話 聖光噴火
「地の底の神よ。我が求めに
そう
それは
これは僕も初めて見る現象だ。
彼女が新たに上位スキルに実装した新スキルによるものだろう。
光り
僕は事前の打ち合わせ通り、ジェネットの肩にしがみついた。
「何を
穏やかなカイルの声だけど、そこにはわずかな緊迫感が
おそらくジェネットのことを下調べしていた彼にとってもこれは予期せぬ事態なんだろう。
カイルがそう言った
先ほどまでとは段違いの圧力に、僕は思わず苦痛の声を
「うぐぅぅぅ」
まるで全方位から見えない壁に押し
「アル様。今です」
同じく苦痛を
僕は必死の思いで
この
僕はそのうちの
「
同時にカイルが声を上げる。
「
ジェネットの動きを警戒したカイルの声が響くと、ジェネットの頭上から魔力で作られた灰色の
やばい!
だけど
「なにっ?」
「ご自慢の魔術も今の私には効果がないようですね」
すごいぞ。
魔法で強化したジェネットの体は今や、法力が高まって熱を発しているようにさえ見える。
それは
これを使うと全ステータスが一時的に強化される。
ただ、この
ジェネットには事前に伝えておいたけれど、この
そう。
天使長イザベラさんは
当然、ジェネットはそんなことはしていないから、魔法の有効時間は短くなる。
だけどジェネットは120秒あれば十分だと言った。
彼女は
「清らかなる光の
彼女の言葉に応じて周囲を
そして再び視界がクリアになり始めると、ジェネットの周囲は光の球体で
その球体の中にいる僕は体がフッと軽くなるのを感じた。
カイルの魔術結界の圧力から解放されたんだ。
これはジェネットの作ってくれた防御
それがジェネット本人のみならず、僕や
「そのようなもので身を守ってどうするというのだ? 口惜しいがワシは元より聖女殿を
あざ笑うようにそう言うカイルだけど、ジェネットはこれをまったく意に介さず、言葉を返した。
「この
そう言うとジェネットはもう一度、
「地の底に集まりし光の脈動を今こそ解き放ちたまえ。
彼女がそう声を発した次の瞬間、真下からドンッと激しく突き上げるような振動があった。
続いて小刻みな振動が生じ、それはすぐに大きな揺れへと変わっていく。
じ、地震か?
ひどく揺れる中でカイルは
「血迷ったか聖女殿。この船には爆薬を仕掛けてあると言ったはずだぞ。ハッタリなどではない。衝撃を与えれば……」
「被害を
ジェネットが冷然とそう告げると、床に亀裂が生じ、下から猛烈な光の波が突き上げてきたんだ。
それはまるで火口から溶岩が噴き上げるかのようだった。
床を破壊した光の
「ば、馬鹿な……」
そう言ったきり、カイルは光の中に飲み込まれて消え去った。
一瞬でそのライフが尽きてゲームオーバーになったんだ。
同時に船体が猛烈な勢いで上昇していくのを感じる。
光の噴火に押し上げられて海上へと浮上しているんだ。
だけど衝撃が加わったため、船のあちこちで爆発が起きた。
爆薬を仕掛けているというカイルの話は本当だったんだ。
光と海水、そして爆発に
激しい衝撃と轟音に耐え切れず、僕は思わず目を閉じた。
海水が降りかかってきてもジェネットの体を包み込む光の
そして
僕は軽く気を失っていたようで、ジェネットの声がそんな僕の意識を引き戻してくれたんだ。
「……ル様……アル様」
「……うぅ」
「アル様。もう大丈夫ですよ」
「ジェ……ジェネット」
気が付くと僕は海賊ハムスター達を入れたバスケットを抱えたまま、ジェネットに抱きかかえられていた。
光に
顔に吹きつけるのは強い海風で、潮の香りが鼻をついた。
僕らは潜水艇から無事に脱出し、海上に浮遊していたんだ。
すっかり夕暮れ時となって、西に
「た、助かったんだね」
「ええ。潜水艇はバラバラになってしまいましたが」
眼下を見下ろすと、見事に破壊された潜水艇の
僕はジェネットの手から離れると宙に浮かび、手に持っていたバスケットの中身を確認する。
ブレイディの薬液によってハムスターの姿となった
皆、ハムスター姿という慣れない状態に
彼らの薬の効果が切れる前に船に戻らないとならないな。
「もう少しそのまま我慢していて下さい」
僕はハムスターたちにそう言うと、そっとバスケットの
とにかくこうして皆、無事で脱出できたのもジェネットのおかげだった。
僕は彼女の勝利を思い返しながら歓喜の声を上げた。
「ジェネット。カイルに勝ったね」
「ええ。今頃カイルは運営本部にプログラムの状態で取り押さえられていることでしょう」
僕は先ほどのジェネットの大技を思い返しながら感嘆の声を
「
「実戦で使うのは初めてなので、まだ
そう言うジェネットはどこか疲れた顔をしている。
僕がかけた
「大丈夫? もしかしてさっきの新スキルはかなり負担が大きいんじゃ……」
「実はあの技、法力消費量がとてつもなくて、私の法力量だと満タンでも2回が限度なんです」
ランクAのNPCであるジェネットの法力量はものすごく多い。
そのジェネットでも2回が限度ってことは、相当な消費量なんだろう。
「ただし、さっきのは
「えええっ?」
「情けないことに、こうして浮かんでいるのも精一杯なんです」
そ、そうだったのか。
僕は辛そうなジェネットの姿を見て責任を感じてしまった。
体内の魔力回路を整備していたイザベラさんだからこそ出来たことであって、誰でも出来るわけじゃないんだ。
この魔法はおいそれと使うべきじゃないかもしれない。
「とにかく僕らが乗ってきた船に戻って休もう。ジェネット」
「はい。今しがた我が主にはまずは無事の一報を連絡をしておきました。カイルの結界だった潜水艇内から出たので、連絡も取れるようになっておりましたよ。後ほど落ち着いたらカイルの一件は報告しようかと」
「そうだね」
それから僕らは周囲を見回した。
僕らが乗ってきたガレー船は……えっ?
そこで僕は波間に
大海原に無数の木片が浮かんでいる。
そのどれもこれもが無残に打ち砕かれた船の破片だった。
その中にはガレー船の特徴である
「ガ、ガレー船が……」
粉々に打ち砕かれていたのは、間違いなく僕らが乗ってきたガレー船の
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