第7話 東将姫アナリン
「アリアナ!」
ヴィクトリアのピンチに駆けつけてくれたのは、手分けして逃げ遅れた人がいないか周辺を見回っていたアリアナだった。
アリアナに猛スピードで蹴り飛ばされたサムライ少女は
地上に落下した
「ヴィクトリア、誰と戦ってるの?」
「変なサムライの女がアルフレッドに刃物突きつけてやがったんだよ。アリアナ。あいつはアタシがタイマンでぶっ飛ばすんだから、手を出すなよ」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。やられてるじゃんヴィクトリア」
「う、うるせえな! これから反撃するところだったんだよ!」
そんなことを言い合うヴィクトリアとアリアナだけど、彼女たちはなぜサムライの少女が僕に刃物を突き付けたのかは知らない。
彼女の目当ては、破壊された王城から脱出したという王女様だ。
サムライ少女が何者で、どうして王女様を
さっき僕がマヤちゃんたちを救い出した
それが分かったらサムライ少女は僕の舌を
思わず身震いしそうになりながらその言葉を思い返し、僕は足元の地面に突き立ったままの刃物に目を止めた。
ついさっきサムライ少女が僕の腕を串刺しにしようとした
僕はそれを拾い上げた。
腹切り……そういえば聞いたことがある。
サムライたちは自らの
しょ、正気の
この刃で自分のオナカを……うぅ。
考えただけでオナカが痛くなってくる。
そんなことを思いながら僕は
すると、【
「東将姫……アナリン」
それが彼女の名前なんだろうか。
それにしても東将姫って……彼女はどこかの国のお姫様なのか?
そんな人がたった1人で刀を振るって、この国の王女様を探している?
次々と浮かぶ疑問に
彼女はヴィクトリアとアリアナの姿を冷然と見つめながら言い放つ。
「邪魔立てする者は
アナリンというサムライ少女は気迫のこもった表情で地面を蹴ると、素早くこちらに向かってきた。
それに応戦するべく、アリアナとヴィクトリアは先を競うようにしてアナリンに攻撃を仕掛けていく。
アリアナはすばやく動き回りながら10メートルほどの距離を保って、彼女の中距離攻撃スキルである魔法・
アナリンは
そこにヴィクトリアが
アナリンはその両方に対処し切れずに
「チッ! アタシはタイマンでケリつけたかったんだよ」
加勢によって2対1になったのが面白くなかったのか、ヴィクトリアが不満げにそう言う。
そんな彼女の言葉にアリアナは肩をすくめる。
「あのミランダだってジェネット達と一緒に戦ってるんだから、ヴィクトリアも我慢しなきゃ」
アリアナの言う通りだ。
ミランダも本来なら人の手なんか借りずに自分の力だけで戦いたい性分のはずだけど、今はアニヒレートという強大な敵を前に、ジェネットやノアと共闘している。
それを理解してくれてヴィクトリアは渋々
「アル君は今のうちにその子を避難させて!」
そう言うアリアナに僕は
あの2人が戦ってくれている以上、僕がここにいたところで足手まといになるだけだ。
今はマヤちゃん達を安全な場所まで連れていかないと。
そう思った僕はマヤちゃんの手を引いてその場から離れようとした。
「マヤちゃん。ここはあのお姉ちゃんたちに任せて安全な場所へ……」
僕がそう言いかけたその時、
「逃がさぬぞ!
そう言ってものすごい速度でこちらに向かってくる彼女に、アリアナとヴィクトリアがすぐさま攻撃を仕掛ける。
「行かせない!
「くたばっちまえ!
2人の攻撃が襲い来る中、アナリンは刀の
そして体を激しく回転させながら、まるで乱れ踊るように刀を
「
すぐに刀から猛烈なつむじ風が巻き起こり、回転するアナリンの体を包み込む。
そのつむじ風に触れた途端、
あれは……ただのつむじ風じゃないぞ。
風の勢いは増していき、徐々に
「刃の風に刻まれろ!」
アナリンがそう叫んだ瞬間、彼女の体を取り巻いていた
僕は
すると……。
「痛っ!」
肩や腰、そして耳たぶに鋭い痛みを感じて僕は思わず苦痛の声を
い、一体何なんだ?
「アルフレッドおにいちゃん! 血が出てるよ!」
僕の腕の中でマヤちゃんが不安げに声を上げた通り、痛む耳たぶに手を触れると、指に血が付いた。
そして痛む肩や腰の辺りは兵服が切り裂かれ、血が
僕はアナリンの発した言葉通り、
そして慌てて後方を振り返る。
辺りはアナリンが巻き起こした
「アリアナ! ヴィクトリア!」
アナリン本人から数十メートル離れている僕はこのくらいの切り傷で済んだけれど、至近距離でこれを浴びたあの2人はこんな程度じゃ済まないはずだ。
僕は強い危機感に
すると巻き上がった
心配する僕の見つめる先では、ヴィクトリアがアリアナの前に仁王立ちして刃の風から守ってあげていたんだ。
そのヴィクトリアの体は全身が
あれは……。
「っぷはあっ!」
そうヴィクトリアが大きく息を吐いた
そしてあれだけ至近距離でアナリンの刃の風を受けたにも関わらず、ヴィクトリアの体はまったくの無傷だった。
僕は思わず
「
それはヴィクトリアの中位スキルで、瞬時に体を硬化させる防御技だ。
彼女が呼吸を止めている間しか効果は持続しないし自分自身も一切の身動きが取れなくなってしまうけれど、その間は物理攻撃も魔法攻撃も受け付けない無敵状態になれる。
アナリンの
そのおかげでアリアナも無傷だった。
「あ、危なかったぁ。助かったよヴィクトリア」
ホッと息をつくアリアナの前でヴィクトリアはあらためて
「おいサムライ女。アタシらはそんな簡単じゃねえぞ」
それを受けたアナリンは刀を
そして決然とヴィクトリを
「そのようだな。貴様らほどの使い手にはそうそう出会えまい。本来ならばじっくり相手をしてみたいところだが、
そう言うとアナリンは左手で
そしてまるで刀に語りかけるかのように言ったんだ。
「
彼女がそう言った
自分の身に危険が差し迫っているかのような、ピリピリとした気配が僕の肌を刺す。
そしてアナリンの持つ
彼女の黒い瞳が薄紅色に変化し、冷然としていたその表情が殺気を帯びた好戦的なそれに変わった。
そしてアナリンの頭髪の間から赤く
彼女のその姿はまるで悪魔がその身に
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