第37話 ギルドを追放された最強の探索者、引退してダンジョン教習所の教官になったら生徒たちから崇拝される

 アリス暗殺の首謀者たちを国の衛兵たちに渡した後、俺は再び教官としての業務に戻った。


「それじゃあ、今日の授業はこれで終了とする」


「「「ありがとうございました!」」」


 グラウンドに集まる生徒たちは、きっちりした態度でお辞儀した。

 ボイコットされた時のことを考えると、生徒たちの俺を見る目は随分と変わったような気がする。中には面と向かって「尊敬しています!」と言ってくれる子もいたが、正直嬉しさ半分、戸惑い半分といった感想だ。そのような視線にはまだ慣れていない。


「レクト教官っ!」


「なんだ、シャッハ?」


「今日の放課後、アタシの新技開発に付き合ってよ!!」


 シャッハがキラキラとした目でこちらを見つめながら言った。


「新技って……この前試していたパンチか」


「うん! アタシも教官みたいに、パンチ一発でどんな困難でも吹き飛ばせるようになりたくて!」


「いや、あれは簡単には真似できない技なんだが……」


 俺がギガンテスの生み出した壁に穴を空けた時のことを言っているのだろう。

 あれは混沌元素でないと難しい技だ。しかし、それに近い技なら教えられるかもしれないと思い、少し考え込むと……いつの間にか、わらわらと他の生徒たちも集まってきた。


「レクト教官! 俺と模擬戦しようぜ! 次は一発くらい入れてみせるから!」


「お前ではまだ教官に、かすり傷ひとつつけられないだろう。……それより教官。《元素纏い》の運用効率について、確認をお願いしたいのですが……」


「あ、あの、教官。私も、元素レベルの上げ方について相談が……」


 レイ、スメルク、ハルが各々の要望を伝えに来た。

 授業が終わった直後から放課後にも勉強の予定を入れようとするとは……やはり一組の生徒たちは皆、モチベーションが高い。そんな彼らのためなら、俺もなんとか予定を空けたいと思うが……。


「み、皆さん、駄目ですよ! 今日は私の個人レッスンをすると約束しているんです!!」


 アリスが他の生徒たちの前に立ちはだかって言う。

 そう言えば、そんな約束をしていた。しかし他の生徒たちは――。


「アリスはこの前もやっただろう」


「そうだぜ。独り占めは駄目だ」


「わ、私も個人レッスン、したい……」


 アリスに怯むことなく、クラスメイトたちは言う。


「大体アリスの個人レッスンって、殆どただのお茶会じゃん!」


「ななな、何故知ってるんですかっ!?」


 シャッハの発言に、アリスは顔を真っ赤にした。

 それは勿論、覗き見していたからだろう。アリスは気づいていなかったが、お茶会をしている際、彼らはこっそり俺たちの様子を窺っていた。


 ちなみにお茶会の話題は、半分以上が天賦元素の使い方についてだったり、フラマク公爵家のその後についてだったりなので、決して意味のない雑談ではない。


 そのお茶会によると、アリスは両親と話し合った結果、今後も教習所へ通うことにしたようだ。

 フラマク公爵の言う通り、アリスの両親は天賦元素について知っていたらしい。天賦元素が最も活きる職業は、恐らく探索者だ。そのためアリスは今後も探索者を志す道を選び、両親にも背中を押された。


「アリスさ~、ぶっちゃけ教官とお話ししたいだけでしょ~?」


「ちちち、違います! その、偶には……そういう気分の時もありますけど」


 目の前で言い合っている生徒たちに、小さく溜息を吐く。

 相変わらず、このクラスは仲がいい。


「よし、じゃあ全部やろう」


 俺の言葉に、生徒たちは「全部?」と首を傾げた。


「レイとシャッハは模擬戦だ。もしレイが勝てば、次は俺が相手になってやる。シャッハはレイを実験台にして新技を試してみろ。……その二人の戦いを見ながら、俺とアリスとスメルクとハルの四人はお茶会をする。話題は、《元素纏い》の運用効率と、元素レベルの向上について。……これでいこう」


 おぉ〜、と全員が納得した様子を見せる。

 しかし次の瞬間、アリスだけ我に返った様子で、顔を真っ赤にした。


「わ、私、お茶会がしたいなんて言ってないです!!」


 アリスが大きな声で言う。

 じゃあしないのか? と尋ねると、アリスは小さな声で「……やりたいです」と答えた。








●実習後の各生徒および教官の元素レベル



・レイ=スティルブ

【属性レベル】

 総合:13

  火:26

  水:10

  土:25

  風:15

  雷:7

  光:3

  闇:3


・スメルク=イーザン

【属性レベル】

 総合:12

  火:4

  水:30

  土:2

  風:35

  雷:5

  光:3

  闇:3


・ハル=ソプリア

【属性レベル】

 総合:12

  火:4

  水:40

  土:5

  風:20

  雷:7

  光:3

  闇:3


・シャッハ=フォワード

【属性レベル】

 総合:13

  火:19

  水:5

  土:41

  風:13

  雷:7

  光:3

  闇:3


・アリス=フィリハレート

【属性レベル】

 総合:11

  火:14

  水:10

  土:23

  風:13

  雷:14

  光:3+100(天賦元素)

  闇:3

 備考:光属性の天賦元素。


・レクト

【属性レベル】

 総合:501

  火:504

  水:497

  土:499

  風:506

  雷:502

  光:496

  闇:506

 備考:混沌元素。





※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


 一章完結です!

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

 今後の更新については近況ノートにて。


 本作を気に入っていただけた方は、

 お手数ですが、★評価を是非お願いいたします!



また現在、小説家になろう様にて新連載を始めています。

よろしければこちらもお楽しみください。



人脈チート持ちの俺、国王に「腰巾着」と馬鹿にされて勇者パーティを追放されたので、他国で仲間たちと自由に暮らすことにした ~勇者パーティが制御不能になって大暴れしてるらしいけど知らん~


https://ncode.syosetu.com/n7848gp/




【あらすじ】

 その英雄――座右の銘は「他力本願」。


 人脈という名の武器を使いこなし、最強の冒険者パーティを結成してみせたネットは、数々の世界的偉業の陰で暗躍してきた。


 しかしある日、国王に呼ばれたネットは残酷な宣言を下される。


「貴様の冒険者パーティを、我が国の勇者パーティに任命する。ただし貴様はいらん。追放だ!」


 国王はネットをただの腰巾着と考え、勇者パーティには不要な存在だと判断した。


「あのパーティは俺が制御しないと、めちゃくちゃに暴れ回りますけど、いいんですか?」

「腰巾着の言い訳など聞きたくない!」


 最後の忠告も無視されたネットは、一人パーティから追い出される。

 ネットは他国へ向かい、別の仲間たちと自由に過ごすことにした。


 他国に渡ったネットは様々な活躍をしてみせる。王子、王女、騎士団長、名うての冒険者……あらゆる者たちとの縁があり、彼らから慕われているネットのもとには、毎日のように非日常的な事情が転がり込んできた。


 一方……国王は知らなかった。

 ネットが集めた勇者パーティは、実力こそあるが、とんでもない問題児だらけであることを。


 パーティの手綱を握っていたネットが消えた今、勇者パーティは制御不能に陥り、国王にとてつもない負担をかけることになった。



 ネットのことをよく知る者たちは、彼のことをこう評価する。


「あの男は、勇者にはなれないが――誰かを勇者にできる男だ」


 これは、他力本願をモットーとする男が、あらゆる異変の裏で暗躍し、世界中に影響を与えていく物語。




人脈特化の主人公が、最強の仲間たちと共に活躍するお話です!

本作とはまた違ったタイプの最強主人公をお楽しみいただけます。その上で、本作と同じように終盤は思いっきり盛り上げるつもりです。


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