第42話・一刻も早く
「シーグリーン侯爵が裏切ったと言うことはギルバードさまも?」
「彼は教皇様のお子だったんですって」
さらに衝撃的なことをサンドラは言った。
「ギルバードさまが教皇様の? もしかして教皇様は自分の子を王位に就けようというの?」
「その通りよ。旦那さまは彼らの企みを阻止しようと水面下で動いていていたのだけど、向こうが一枚上手だったようで力が及ばなかったの」
サンドラが悔しそうに両膝の上で手を組む。
「今頃、王都はシーグリーン侯爵の手の者で包囲されているわ」
「そんなっ。じゃあ、サーファリアスさまは? 陛下は?」
シーグリーン侯爵と言えば現将軍でもある。彼の配下は軍部の者だ。その彼らを使って襲いかかられたなら──。
「サーファリアスさまが危ないっ。引き返しましょう」
「駄目よ。マーリー」
立ち上がり掛けたのを強く腕を引かれた。
「あなたが行ってどうなるの? 逆に足を引っ張ることになる」
冷や水を浴びせられたようだった。その通りだ。わたしが加勢したって何の意味も無い。教皇はすでにわたしの身元は掌握しているだろうから、もしも捕らわれたならサフィーラ帝国への人質とされかねない。
「私達に出来ることは速やかにオウロさまと合流することよ。サーファリアスはこの国が危ういと知った時に真っ先にあなたを逃す事を考えられた」
「サンドラ、あなたお兄さまの正体を知っていたの?」
「知ったのは最近よ。旦那さまからあなたを逃す相談を持ちかけられた時に」
あなたに同行している者たちもそうだと言われた。
「皆、驚いたでしょうね?」
「まあね。だからこの先、無事に逃げ切ることを考えて。オウロさまに会ったならあなたにしか出来ないこともあるでしょう? もしかしてその指輪を見て逆上してしまうかもしれないけど……」
サンドラが苦笑する。琥珀色の指輪を嵌めているからわたしがサーファリアスに求婚されたのはバレバレだったようだ。
彼女の言わんとしていることは察せられた。オウロはわたしに甘い。そのわたしが婚約者を助けてと求めればこの国の窮地は救われるかも知れないとサンドラは言っているのだ。
もし、サフィーラ帝国からの救援の兵をもらえればサーファリアスはこの国は助かる?
そう思ったら一刻も早くオウロに会いたくなった。
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