第40話・サフィーラ帝国に帰って頂きたい
三ヶ月後。オウロはサフィーラ帝国に帰ることになった。わたしの同行はなくなった。彼はわたしの願いを聞き入れてくれて一端、この件を保留にしてくれたのだ。
わたしはこの屋敷に来てから学んだことを無駄にはしたくなかった。オウロにあの晩、今後どうしたいか聞かれて宮殿女官になりたい事を伝えていた。その気持ちを組んでもらったのだ。
出立の日。わたしには「今度会う時まで元気でな」と、言い残し、サーファリアスには「泣かせるなよ」と、意味深な言葉を残して去って行った。
サンドラ始め、この屋敷の使用人達は彼と仲良くしていたので「寂しくなるわ」と、漏らしていた。
それから一ヶ月ほど過ぎて、サーファリアスの帰りが遅くなり、宮殿に泊まり込む日が増えて来た。三ヶ月ほど過ぎた頃には王都も落ち着かない様子を見せ始め、わたしの預かり知らないところで何か起き始めているような不安を感じていた。
そんなある日、彼の書斎に呼ばれて言われた。
「マーリー嬢。あなたにはサフィーラ帝国に帰って頂きたい」
「……! なぜですか?」
「オウロ殿には連絡が付いています。明日には出立してアンバー家の別荘の方へ向かって欲しい。明後日にはオウロ殿と合流して帰国する手はずになっています」
「サーファリアスさま。一体何が起きているのですか?」
久しぶりに会ったサーファリアスはやつれたように見えた。
「わたしには言えないことですか? 教えてくれなければ行きません」
卑怯な手かと思ったけど、何の説明もなくこの屋敷を追われるのは嫌だった。
「地方で暴動が起きました。ルイ陛下を王位から引きずり下ろそうとしている動きが見られます。あなたのことが相手方に知られれば抗争に巻き込まれてしまいます。それをオウロ殿下も私も望みません。向こうに行くのにサンドラ始め、数名の侍女と護衛の者をこちらからも数名付けます。向こうに着いたら彼等の面倒を見てやってはくれませんか?」
サーファリアスは隠し事をしなかった。彼はサフィーラ皇帝の娘であるわたしを、この国の政争に巻き込みたくないからサフィーラ帝国に逃すと言っているように感じられた。
しかもわたしが嫌だと拒めないようにサンドラ達、同行者の面倒を見て欲しいだなんて。そんな言われ方をしたらとても拒めそうにない。
「分かりました。サンドラ達を連れてサフィーラ帝国に向かいます」
「良かった。これで私は心置きなく相手に立ち向かえます」
「サーファリアスさま。ご無理はなさらないで下さいね?」
「あなたも。何でも抱え込んで頑張りすぎないように。何かあったらサンドラやオウロ殿下を頼って下さい」
「それをサーファリアスさまが言いますか?」
自分の事よりも人の事を熱心に心配している場合では無いでしょうにと言えば、その場に跪かれた。
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