第13話 鬼婆

吉宮停留所から虚空蔵様…いや、広尾神社までは徒歩で5分程度、そこから鎌崎本家までは徒歩で3分程度。

入口までは徒歩で1分ほどだが、なにぶん敷地が広いものでそこで2分ほどついやしてしまうのだ。

「ささ、入って入って」と花南さんが案内してくれた。

「あれま、これはこれは花南に広尾のお孫さん、それに寺田のお孫さんまでそろい踏みとは…」と言いつつ、鬼婆さまが登場した。

「失礼、名前を名乗るのを忘れていたねぇ…。私は鎌崎 りょう。ここの世話役みたいなもんを任せれとるババ様なんだ。」と凌さんは語った。

一通り自己紹介を終えたあと、「御伽原と神宮寺の人間とは基本的に関わりたくはないが、まぁ、花南のお友達だから丁寧に扱わんとな…」と凌さんがポツリと呟いた。

「あの…神宮寺家はともかくとして、なんで御伽原家とも関わりたくないんですか?」とニナが不安そうに聞く。

「それはな、御伽原…、ニナちゃんのお父さんはね、うちの娘の婚約者でな、でも、ニナちゃんはウチの孫じゃない。ここまで言えば忖度そんたくしてくれるかな…?」とぎこちなく答える。

「あ、つまり、凌さんの娘さんの方が色々あってその原因が御伽原家にあるんじゃないかと思ってるという事ですか?」とニナが聞く。

「まぁ、そういうことだ」と凌さんが答える。

「アレは広尾家にも関連する話だからね。吉宮の人はみんな、オシロイさまの祟りだ何とかって言ってるみたい」と花南さんが言う。

「あんなに優しい子が豹変してまさか、あんなことをしでかすとは…」と凌さんが言う。

「あんなことって、一体なんなんですか!?」と声を荒らげて聞いた。

「まぁ、落ち着いたらどうかね。」と凌さんが諭さとす。

「簡単に言うとな、ウチの娘が、広尾の婆さま…つまりは、勝くんのおばさんをな、バットで殴ったんだよ。そして、亡くなられた。そんな惨劇がなこの吉宮で起こったんだ…」と凌さんが話す。

「もちろん、あんたが生まれる前だがね。」と付け足す。

「そんなことがこの街で…」と皆、騒然そうぜんとする。

「さてと、みんなでゲームして気分転換しよう!」と花南さんが言う。

もう少し空気を読んで欲しい気持ちもあるが、今は早くこの暗い空気から明るい空気に変えたかった。

だからこそ、みんな賛成した。

-続く-

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