銀の桜花

夏野陽炎

Truth Episode 0

 人の身である者は、人ならざるものに憧れた。

 人ならざるものは、人の身に憧れた。

 あるべき死を忘れたがゆえに、人としての尊厳ある死を求めて。その肉体が灰になることを恐れ、肉体の永遠性を妄信したからこそ。

 幾人をも――幾たびも、喰らい続けた。


 その行いが冒涜的で、罪悪感を持つべきということなど、とうに忘れていたから。

 誰も正してなどくれず、正せる者など誰一人としていなかったら、この欲望が正義だと確信できた。

 故に。

 貪欲に喰らい、血を啜り、人の体を求め続けていられた。


 ここまで来たまえよ。もし君が、終りをもたらせるのならば。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る