3章 勇者vs元奴隷? エクレシアを賭けた(笑)バトル!

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「早速クエストに行くわよ!! 魔法放ってもぶっ倒れなくなったのか調べるのよ!!」


 ギルド内でアリスは机をばんっと叩きそう言った。


「いえ、そろそろ次の街に行きましょう。ここでの情報収集も十分行って、魔王の居場所の手がかりが掴めなかったし」

「まだですわ!! ひとまずこの街の皆様をイーシズ教に入信させてからでも遅くはないかと」

「儂はマリファナ栽培の最中におまんらに捕まったから、偉い人にバレる前にとんずらしたい」

「店員さーん、このお肉おかわりー」


 まとまりがなってねーぞこのパーティー。

 ってかネコマタはとんでもないことを暴露しやがったような……。


 ちなみにネコマタとは、この間仲間にした猫神のことだ。

 あんなセクハラ猫を猫神だなんて呼ぶなんざ、神様みたいに扱ってる感じで尺に触るから、別名で呼ぶことにすることに。

 そしてチリが『面倒なんでネコマタでいいんじゃないっすか?』といい加減なことを言った結果、それに全員が同意したことによりネコマタという名前となったのだ。


「まあ、クエスト行くにせよ次の街に行くにせよ、あれなんとかしろよイリス。お前が元凶でもあるんだから」


 ため息を吐きながら指差し出し方角には、イリスと同じイーシズ教の従者達が騒いでる。


「アクホーン教の教徒達にはできなかったクエストを、イーシズ教の教徒がいるパーティーが見事に達成しました。これはまさにアクホーン教よりイーシズ教が優秀という証です。」

「冒険者の皆様、どうか力を合わせて邪悪なアクホーン教を滅ぼし、この国の国教をイーシズ教とすることが世界平和につながるのです」

「どうかイーシズ教をお願いしまーす」


 こんな勧誘演説を毎日毎日、もううんざりするよ。

 他の冒険者達も鬱陶しいような表情で信者達を見ていたが、連中は全く動じず続けている。

 何故こんなことになったかというと、俺たちがネコマタが元凶だった高難易度クエストをクリアしたことが原因だ。

 そのクエストに昔、イーシズ教の宿敵であるアクホーン教が挑んだらしいが、撃退されたことをイリスから聞いたことがある。

 そのクエストを俺達がクリアしちゃった結果、イリスがこの街のイーシズ教の本部教会に報告した後、こうなっちゃったって感じだ。


「いいではありませんか。ワタクシ達は何も嘘など言っておりません。事実を言うことに何が問題があるのでしょうか?」

「事実云々はどうでも良くて、俺が言いたいのは自重しろってことだよ。まあ宣伝したい気持ちもわからなくないけど限度ってもんが」


 言いかけた時にギルドの出入り口の扉が大きな音を立て開かれた。


「ここに不当な演説を行い、アクホーン教を侮辱する愚かで薄汚いイーシズ教徒達がいるって聞いたが、本当のようだな?」


 先頭の男がそう言うと、なんか屈強な教徒達がゾロゾロと中に入ってきたんだけど!?


「やべえ!! アクホーン教の連中だ!!」

「みんな逃げろ!! また勧誘戦争が始まるぞ!!」

「どっちも入信したくねえ!! って言うより死にたくねえ!!」

「ギルドか入信か命のどれかを選ぶとしたら、ギルドマスターとして当然命を選ぶぜ!!」


 そしてなんか大慌てで冒険者達やギルドのカーボウイマスターが、勝手口から逃げるように出て行ったんだけど?

 そんでそのアクホーン教? って言う教徒達とイーシズ教の教徒達の間に、漫画とかでよく見る対立時に飛び散る火花っぽいのが見えるのは気のせいだろうか?


「何を言っておられるのですか糞臭漂うアクホーン教の皆様? 我々イーシズ教は事実を言ったまでですよ。あなた方が達成不可だった高難易度クエストを我らイーシズ教の従者が見事に達成したではありませんか。これが何よりの証拠では?」

「バカバカしい。そんなのはただのマグレで証拠にも何もなりませんよ。そんな理由で我らがイーシズ教より劣っているとかなど100パーセント間違っていることを説き伏せるなんて、やはりアクホーン教より圧倒的格下のイーシズ教のやり方は陰湿そのものですね」


 急に低レベルな口喧嘩を始めやがったよこいつら。


「どっちもどっち。双方レベルがお子様っすね」


 今回ばかりはチリに賛同できると思った時。


「二人とも逃げるわよ! 巻き込まれたら命がないわ!!」


 血相変えて俺達も一緒に逃げるように促してるエクレシア。

 え? ちょっとマジで一体何!?


「待て待て待ってくれよ!! やばそうな雰囲気だだ漏れなのはわかるけど、勧誘戦争ってなんだ!?」

「国教になるかもしれない二大宗教、イーシズ教とアクホーン教の戦いが始まるの!! ただの冒険者同士の喧嘩っぽいのじゃなく、剣で相手を斬り殺したり魔法で焼き殺したりもはや戦争同然!! その戦いに巻き込まれたら誤って殺されるか強制入信されるかどちらかの未来しかないわ!!」

「つまり北斗と南斗の支配権による聖戦ってことっすね」

「それどこの世紀末!?」


 おい!! その話本当だとしたら、国教になるかもしれない二大宗教の従者様達揃って一体何やってんの!?

 って思いながら再び振り返ってみたら、アクホーン教もイーシズ教も剣や杖構えちゃってるし!?

 みんな揃って殺す気満々じゃん!!


「やはりアクホーン教はこの世にいてはならない悪教ですね」

「それはイーシズ教のことですよ。そんな悪教を広める悪魔の手先的集団は……」

「「汚物一人残さず消毒じゃ!! ヒャッハァァァ!!!」」

「ギルド内で血祭り宗教祭が開始したァァァァァァ!!!」


 ぶつかり合う剣と剣、魔法と魔法、飛び出る血飛沫。

 本当に戦争そのものと化しちゃってるよ……。

 いや、確かに宗教がらみで戦争起きることなんざ、俺のいた世界でもあったよ。

 でもお互い何があったかわからないけどさ、この状況は大体最低でも酔っ払い共の喧嘩、最悪でもヤクザ同士の抗争みたいなもんだよね?

 それ如きに本当の意味で皆殺しにしようとする時点で僧侶失格だよ!!

 あんたら人に悟りを教える資格すらないよ!!

 って感じに思いながら呆れて見てる中、エクレシアに手を引っ張られる。


「早く!! マジで死んじゃうから!!」

「ちょちょちょ!? 確かにすぐ逃げなきゃだが、アリスとイリスはまだ!!」

「あの二人はもう諦めましょう」


 エクレシアにしては珍しい一言だが、チリの指先の向きを見た途端納得したよ。


「アクホーン教よ、全員消えなさい!! アンダーショット!!」

「ちょっとネコマタ!! あんた力貸すって言ってたわよね!?」

「アホか!! こないなとこでお前さんの上級魔法ぶっ放したら、ギルドごと崩れ窒息してまうて!!」


 ……そういえばイリスって、イーシズ教でしたね。

 んでアリスが加勢してる理由はただ一つ、暴れたいだけだなありゃ。


「……よし、逃げるぞ」

「「ウィ・ムッシュ!」」


 さようなら、アリス、イリス。

 短い間だったが楽しかったぞ。

 心の中でそう別れを告げた時……。


「消えろイーシズ教!!」


 突如出入り口から巨大な暴風が舞い上がり、アリスとイリスを含めたイーシズ教徒達を全て吹き飛ばした。


「な、なんだぁ!?」


 俺たちは驚き振り返ると、出入り口の前には俺と同じ色の髪をした男が立っていた。

 妙に正義感が強そうな見た目で、鮮やかな緑色をした主役キャラが着こなす鎧を着て、腰元に鞘に収めた剣をぶら下げている。

 そして、妙にイケメンそうな顔がなんか腹立つ。


「悪しき邪教を広めみんなを惑わせるイーシズ教め!! 女神アルミス様により転生した、この転生の勇者、剣崎けんざき恭介きょうすけの手で……、ん?」


 なんかカッコつけて名乗ったと思ったら急に黙り込んだよあいつ。

 ってか、あいつ転生って言ってなかった?

 そして名前からして……、まさか!!


「やっぱり!! エクレシア!? エクレシアじゃないか!!」


 俺が声をかけようとした瞬間、あの恭介って男、エクレシアの名前を呼びやがった。

 そしてそのエクレシア本人は、なんか気まずそうな顔をしてるが……。


「なぁ、俺あいつに関して一目みた途端色々気になる点があるんだけど、それよりもあいつってお前の知り合い?」


 俺はエクレシアの耳元で相手に聞こえないように尋ねてみたら……。


「彼は剣崎恭介。私やライアンと同じ、四人の勇者のうちの一人よ」


 俺は目を大きく見広げ、その剣崎恭介って男をガン見した。

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