宇宙人の都合で誘拐された挙句一緒に事故に巻き込まれて剣と魔法の異世界に墜落。だから宇宙人らの技術で戦闘スーツを作って魔王をぶちのめす!
ぶっ飛び猿
プロローグ
「どうっすか?ハマりそう?」
「……無理だわこれも。やっぱりいくらなんでも無茶だっつーの」
近未来的な空間の中、俺はベットらしい土台で目を覚ました途端、相談らしき会話が耳に入った。
突然のことで何がなんだか分からない。
俺は先ほどまで眠っていて、目の前には全身青タイツでたらこ唇のおっさんと、少し天然パーマ気味のスーパーサ○ヤ人3っぽい髪した13歳ぐらいの柄が悪そうな美少女が、ぺちゃくちゃ喋っている最中。
もし宇宙人というのが存在するのなら、きっと目に映る二人のことを言うのだろう。
……いや、それはないと信じたい。
テレビで見るエイリアンのグロテスクさが感じられず、どう見ても俺たちと同じ一般市民そのもの。
身長も体格も、人間と全く同じ。
おっさんのような全身タイツと、触覚が生えた帽子という珍妙なファッションを除けば、完全に似ていると言ってもおかしくはないというほど人間とそっくりな宇宙人だなと思えた。
その二人は、日本人と同じ色をした瞳をパチパチさせ、目覚めたばかりで状況が掴めてなくぼーっとしている俺をじっと見つめていた。
……俺は、先ほど前の記憶を思い出す。
※
……俺の名は武藤ツクル。彼女なき暦16年の高校一年生だ。
こう見えて俺は、世界からはメカニックの神童と呼ばれているほどの才能を持っているらしい。
5歳ごろに興味範囲で車のエンジンパーツの一つを作ってしまったことが世間的に話題を呼んだことから始まった。
10歳ごろには小さな作業機械を、13歳頃の夏休みにはアメリカに招待され、特別に軍事兵器をも作ったことにより、世界的に注目されている。
まさに、『現実世界のト○ー・スターク誕生か!?』と言わんばかりの有名人だ。
だけど俺は有名になったとかそんなことはどうでもよく、普段学校から帰った後に家で機械やロボットを作っている毎日を過ごし、物作りの仕事ができればそれだけで十分だった。
そんなある日、いつも通りにメカ弄りしていたら、一部部品がないことに気付いて明日休みだったこともあり外出した。
深夜ごろに無事機材が購入でき、後は組み立てだけだと思って上機嫌に帰宅していた、そんな時だった。
真っ暗な空から無数に流れる流れ星。
珍しいな……っと思ったその時、流れ星の一つがハエのような動きを……。
そしてその星は徐々に肥大していく。
肉眼で形状がよく見えるようになった時、それは星ではなかった。
間違いなくUFOそのもの。
それを見た俺は唖然として、口を開いたまま動くことすら忘れてしまった。
そして…………
……これがSF系の一種であるキャトルミューティレーション?いまだに信じられず呆然としている俺。
「全く、なんでこんなにもネジ穴ちっこいんっすかね? ふざけんじゃねーぞ◯S4」
「やっぱり素人が自分で修理なんざ無理があるわ。修理に出そうぜ。ゲオに」
「でも金とられるのも嫌じゃないですかー? アタイらの科学力とかで修理具やパーツも無料で手に入れるようなもんですし有効活用しないと」
「いやでも勝手に分解したりしてしまうと、場合によっては業者側は修理してくれないとか言ってたの忘れてないか?」
「マジっすか!?」
「マジモンのマジ。買った時に付いてきた保証書、どこにしまったんだお前?」
「いやアレもう捨てたっす」
「お前という奴は……」
このままでは話が進まない。
俺はひとまず起き上がって彼らに話しかけようとしたが、自分の右手を見た途端……
「……え? ぇええ!!? わぁぁぁぁぁぁ!!? どうなってんのこれわぁぁぁぁぁぁ!!?」
「あ、起きやがったっす」
「お前がでけェ声だしってっから」
俺は我を忘れすぐさま跳ね起き、この宇宙人?共に勢いよく問い出す。
「お前ら!! 俺の体に何しやがったんだ!? 見てみろこの右中指を!!」
100%の怒りで奴らに挿し見せる俺の右中指。
指は普通、長さも太さもバラバラだが、物を掴めるようにバランスよくちょうどいい感じに構造になってる。
だが今の俺の右中指はどうであろうか。
どっからどう見ても長さが通常の2倍あり、太さも3分の1までスマートになってる。
しかも色具合も日本人特有の黄色人種カラーから、鋼鉄特有の鋼カラーに変色しているのだ。
そして先端の先には爪がなく、かわりに変わった形の十字っぽい突起物?が。
……うん、間違いなくプラスドライバーに人体改造されちゃってるよ!
「……いや、前からそんな感じだったっすよ」
「嘘つくんじゃねえよ!! 十本ある指の内一本だけこんなのってどう考えても不自然だろーが!!」
「そう〜いう種族なんでしょお宅らって。あるいはあんたが変異種だっただけじゃないですかぁ〜?」
ロリ娘宇宙人は俺の言うことを全て聞き流すような対応してやがる。
こいつ!! 完全にシラを切る気満々だよ!!
「……うちの後輩がすんません。ちょっとこの惑星のゲーム機の一つ、買ったばかりの『◯S4』が故障したっぽくてその修理のためにちょろっと……」
「はぁ!? ◯S4!!?」
「だから言わないでくださいっすよォォォ!!」
タイツ野郎が暴露した衝撃的な事実に、ロリ娘野郎は嫌そうに地団駄踏みやがってる。
それよりもゲーム機の修理のために俺の体を!?
ここまでふざけた理由だと怒りを通り越して殺意が湧き出るんですけど!?
大体ドライバーなんざすぐ近くのホームセンターで買えば安く済む話だろ! 何考えてんだこいつら!?
「うぉい!! ◯S4の修理のためにって、どういうことだ!?」
「ち、違うですよ!! ストップストップ、殺意剥き出しでドライバーをこっちに向けないで!!とにかく話を聞いて欲しいっす!!」
俺の殺意に恐れを感じたのか、宇宙人二人組がオドオドしながら諫めだす。
そして双方落ち着き直し、ロリ宇宙人が経緯を話し始めた。
……とにかく落ち着こう。このままじゃ話にならないからまず聞こう。
それに相手は二人だ、メカいじりしかできない学生の俺が太刀打ちできる相手でもない。
ここは冷静になろう、冷静に。
「実はさぁ、アタイたちとある恐竜サバイバルゲームをやっててっすね、『A◯K』って言うんっすけど、それでさぁ、アタイの◯S4直んないと先輩にマスターっていうボスキャラ先に攻略されそうなのよ」
「えっ、マスターなんてそう簡単に攻略出来やしねえよ」
「いやそう言ってもアレじゃないっすか。先輩アタイが出来なかった間にマンティコア攻略してたっすよね? アタイまだ出来ていないのに攻略法ネタバレしてきたじゃないっすか?どうかと思うんだよねーあれって」
……どうしよう、なんとなく分かってはいたけど、落ち着いて話を聞いた俺がバカに思えた。
マジでこいつらどうしよう?どうやって八つ裂きにしてやろうか?
……もういい、考えるのをやめよう。
いつもはツッコミだけは勢いのある俺だが、今回はその勢いを用いてあいつらを__
気がついた時には、俺の目の中に天井から照らされる怪しげな光が飛び込んできた。
それを目にした途端、先ほどまでの怒りが徐々に消えてゆく。
全身の力も抜け、そのまま倒れ寝込んでしまう。
……どうなってんだこりゃ、俺に一体何したんだあいつら……
ダメだ、力が抜けて喋れなくなってる。
そればかりか、だんだん眠気が……
「なんとか間に合って眠らせることができそうだけど、どうすんの一体?」
「うーん、◯S4もう諦めるっす。もうちっとしたら◯S5発売されっからそっちで遊ぶことにするっすよ」
「確かに買っとけばいずれA◯Kの5版が発売されるかもしれないっすからね、それがいいっすよ。んでこいつはどうする?」
「んなもん、適当な異世界に捨てとけばいいっすよ。ここをこうっと……」
「馬鹿!! そこは緊急移動用の高速移動装置……」
突如警報が鳴り出し宇宙人どもは急に騒ぎ出した。
……何言っているのかさっぱり聞こえなかったが、俺はなすすべもなく、静かに目を閉ざして意識を失った。
※
「……いつ死んでんじゃねえのか?」
「水ぶっかけろ」
気がつき意識が朦朧としている中、突如顔から冷水をかけられたような感触を感じ、びっくりした俺は跳ね起きた。
周り一面が木で埋め尽くされているこの場所で、俺は緑色の小人っぽい奴らに囲まれている。
全員手には剣とか斧とかを持っており、なんだか殺伐とした空気を醸し出している。
指も元に戻ってないからして夢じゃなさそうだし……、え? どゆこと?
「……すけて〜、誰か助けてくだざぁ〜い」
困惑している中、妙に聞き覚えのある声が聞こえ振り向く。
その先に、例のロリ宇宙人が石器時代の獲物として狩られた豚のように木に縛られ、俺を囲んでいる小人どもに運ばれている。
へん!! 人の気持ちも考えずに自分だけの都合であんなことするからバチ当たったんだよざまぁwww……って言える状況じゃないよね俺も!!
「生きてたみたいだからこいつも鉱山に連れてけ」
一体の小人がそう言うなり、俺もロリ宇宙人と同じ状態にされ運ばれながら森を渡り、やがて一つの洞窟の中に入っていった。
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