夏風学園

@Hane9494

第1話

夏風学園 壱ノ戦

 

 屍人、人の形をする人ならざるもの。それは人を襲い魂を吸い取る邪悪な存在。そして屍人を倒す為に「夏風学園」は建設された。

 

 制服に着替え部屋から出ると、玄関の前に兄はいない。

「お兄ちゃん、私先に行くね。」

 と、声をかけ、兄を置いて一人で登校することにした。

 私は御門百花。今年、夏風学園高等部一年生になった。

 兄の御門輝檜佐は夏風学園高等部三年生で、生徒会副会長を務めている。

 学園は、いくつもの課題や試練を乗り越えた三十名しか入学出来ない超名門校である。

 この学園には色々な種族が入学している。神族、龍族、魔族、鬼族、死神族、キメラ族...。

 私の母は神族。父は人間の家系で私は父の血を多く引いているために人間である。

 兄は神族で水を操ることが出来る。私には姉もいたが、屍人との交戦中に殺られてしまった。

 あまり家に帰って来ない姉が本当に帰らぬ人となってしまったと聞いた時は、暫くショックから立ち直れなかった。

 それでもやがては立ち直り、この学園を目指した。

 学園は中高一貫だが兄や両親の勧めで高校から転入する形になった。沢山体力をつけたりなど学力を上げるのを頑張り転入が出来た。

 

 私が学園に登校中。警報が鳴った。

「屍人が現れました。市民の皆さんは急いで逃げてください。」

 怖くなった私はその場に屈んでしまう。巨大な屍人は私に気付いて魂を吸い取ろうと迫ってくる。すると「そこまでだ。」

 どこか懐かしい声が聞こえたと同時に屍人の体に弓が刺さり消滅した。

 私が顔を上げると

「その制服、夏風学園の学生だな。なぜ戦わなかった。デバイスは配られているはずだ。」

 そう言う彼は武装しており、腰には刀を二本、手には弓を持っていた。

「こ、怖くて...」

 恐怖で泣きそうになるのを抑え震えた声でそう言うと

「はぁ、おい、こいつを救護班に連れて行け」

 彼は落ち着いた声で側に居た救護班に命令した。

 

 救護室のベットに横になり「あの、兄は、兄の輝檜佐は来てますか?」

 救護班の人にそう聞くと

「あぁ、御門輝檜佐だね。来てるよ。今生徒会長代理の会議中だね。俺も今から会議があるから行くね。」

 そう言うと救護班の先輩は出ていった。私はベットから降り、救護班の先輩に

「あの、校内を少し見て来てもいいですか?」

 と聞いた。救護班の先輩は先生を連れてきた。

「君、病気持ち?」

 と先生は聞いてきた。

「喘息持ちですが...」

 そう答えると椅子に座り先生は「おかしいな...」と、困ったような顔をして言う。

「何がですか?」

 先生は不思議そうに「君の血を調べた所、君から人間以外の反応が出ている。」

 私は人間以外のなんでもない、もし母と同じ神族なら発症が遅すぎる。それに神族なら小学生になるまでに目に六角の星の紋章が出る。私には今でも紋章は出ていない。兄は小学生の頃に力を使えた。姉もそうだった。

 姉は光を操れた。いつも力を使って私を楽しませてくれた優しい姉だった。

 救護室に私を助けてくれた先輩が腕に怪我をして入ってきて、

「先生、包帯と薬を」

 と言った。

 私は慌てて「あ、あの、ありがとうございました」と頭を下げる。腕に包帯を巻いた彼は「別にお前を助けた訳じゃない。屍人を倒したらお前が側に居ただけだ。」

 と言われた。謝って損したと感じた。

「あ、零夜、その子に校内案内してあげなよ。」

 先生が言うと

「え、俺がですか?」

「あぁ、任せたよ」

 と言って奥に行ってしまった。

 零夜、先生は彼をそう呼んだ。聞いた事がある名前だ。

 そうだ、会長だ。兄が愚痴を言ってた。この人が会長龍門寺零夜さん。

 なんか嫌な人だな、目付きは悪く、髪が金色。

 零夜さんが私を見ていた。

「あの、何か?」

 私は何かしてしまったのか不安になった。「はぁ、校内案内するんだろ、着いてこい。」零夜さんは面倒臭いなと言わんばかりに大きなため息をつき、救護室を出る。


 零夜さんが案内中に「この学校のでは、ほとんどの授業が戦術を学ぶ事に充てられている。ここでは学力より戦闘力重視だ。戦場に行けるのも戦闘力のある者だけだ。そして戦闘者には、特別免許も発行されている。」

 そう説明をしてくれた。

 また警報がなり出した。

「屍人出現。龍門寺零夜、御門輝檜佐、真也真琴、林崎高利、出動を命ずる。」

 そう流れるやいなや、零夜さんは

「ここに居ろ、絶対に離れるな。」

 と言い窓から飛び出した。

 私はびっくりして「れ、零夜さん!」と下を見ると、居ない。

「なんだ。」

 と低い声がした。零夜さんは宙に浮いている。

「あの、飛んでるんですか?」

 零夜さんは翼などは生えていない。

「この靴だ、特殊構造でコンパクトジェットが付いてるから飛ぶことが可能だ。」

 私は機械改造が得意なので、興味が湧いた。グラウンドからバイク音がする。校庭を見ると

「零夜!早く行くぞ!」

 バイクに乗った兄がいた。「落ち着けよ輝檜佐、零夜。早く行くぞ。」落ち着いた先輩が二人「分かってる。」そう言い、飛んで行った。

「あの人が真也真琴さんと林崎高利さんかな。お兄ちゃん、怒ってたな。」そう思った。

 

 二十分後、私が廊下に座っていると四人は帰ってきた。

「案内の続きをするか。」窓から入ってきた零夜さんが何事もなかったかのように隣に立った。兄が走ってきて

「妹の百花と何話してんだ?」

 私と零夜さんの間に入り私達を遠ざける兄。

「お兄ちゃん、零夜さんに校内案内してもらってたの。」

 そう言うと兄は零夜さんを見て

「なら俺も同行する。」

 武装を解除した兄は、私の側に来た。

 零夜さんは

「はぁ、面倒臭いな。」

 小さい声でそう言ったが、兄は耳が良いので聞こえていた。

「なんだと?」

 刀を構える兄に

「俺に勝てるとでも?」

 零夜さんも刀を手に持ち戦う気満々である。

 真琴さんが走ってきて

「こらこら、ここで戦うな、闘技場行け。」

 二人を引きづり闘技場を開ける真琴さん。

 

 兄と零夜さんは武装をし、武器を持ち戦闘準備を整える。

「俺が勝つ。」

 と兄

「今回も俺に負けるがいい。」

 悪役のような発言をする零夜さん。

 真琴さんが真ん中に立つ。

 武器を置き正座する二人。

「今から龍門寺零夜対御門輝檜佐の対決を始める。両者武器を持ち立て!」

 と声をかけた。刀を持ち構える二人。真琴さんの合図で戦闘が始まった。兄が零夜さんに突っ込みながら、「今回は俺の勝ちだ!」と勝利宣言する。「可夢偉電乱」相手の刀を折るほどの威力を持つ御門家最強の技をくりだすが零夜さんの刀はビクともせずに「獅死、白虎!」兄の刀を一瞬で折る。

「い、威力が上がってるだと?!」

 兄の刀はボロボロに崩れた。「俺と刀は日々強くなる。」

 そう言いながら刀をしまう零夜さん。

 兄は刀が折れへこんでいる。零夜さんが私に近づいてきて、

「兄のように弱くなるなよ。」

「さぁ、案内の続きだ」

 零夜さんは何事も無かったように案内をしてくれた。

 

 兄は緊急会議が入ったらしく、私は兄より先に家に帰り母に今日の事を話した。

 母は夜ご飯の買い出しに行きった。一人でテレビを見ていると呼び鈴がなった。

「龍門寺だ。百花の忘れ物だ。」

 忘れ物?何忘れたっけ。

 と思いながら玄関を開ける。「私、何忘れました?」

「これ、百花のだろ?」

 雪の結晶の形をしたヘアピンを出す。

「あ、私のです。どうして私だと?」私のヘアピンは女子に人気のもので、私だと言う確信はなかったはず...。

「お前を最初に見た時は付けていたが、校内案内の時は付けていなかったからだ。確かに確信はなかったが、一か八で届けた。」

 こう言う優しい所が私は嫌いではない。

 しかし私ではなかったらどうしてたのだろうか...。

 それにしても私の家は学校からは遠い、零夜さんは明らかに歩きだった。

「零夜さん、今日歩きで来たんですか?」靴を見ても普通の靴であった。「あぁ。」そう言い帰ろうとした零夜さんに、「あ、あの、ヘアピンのお礼がしたいので...あ、そうだ!ケーキ食べていきませんか?もう夜も遅いですし。」

「構わない。御門家にお世話になる訳にはいかない。」

 零夜さんが姉の件で家に沢山お世話になったと聞いたのを思い出した。

「少しだけでもどうですか?お礼したいですし...」

 そう言うと零夜さんは少し悩み、

「百花の親は何と言っている?」

 そうだ、まだ聞いていなかった。

「す、少し待っててください。」

 私は親に電話をかけ、「今、先輩が来てるんだけど、もう夜遅いから今日泊まってもらってもいいかな」すると母は

「あら、彼氏さん?」

 笑いそうな声で聞いてきた「ち、違うから!ただの先輩!良い!」

 少し顔が赤くなってしまった。零夜さんは少し大きい声に驚いていた。「まぁいいんじゃない。」そう言い電話を切った。

「何と言っていた?」

「良いそうです。親も泊まっていってほしいみたいです。」

 少し盛ってしまったがバレないだろう。

「そうか、なら泊まらせてもらおうか。」

 初めて異性を泊める。恥ずかしい?様な気持ちとモヤモヤした気持ちがした。

 数分経ち母達が帰ってきて、零夜さんを歓迎した。

「あら久しぶりね、零夜君。」

 母はニコニコしながら言った。

 零夜さんは晩御飯を作っている母の手伝いをしてくれていた。

 深夜になりまだお風呂に入っていなかった。

「零夜君、お風呂入ったら?」

 風呂場に案内する母。私は先輩の布団を準備していた。先輩がお風呂をすませた。寝室に案内した。

「先輩はこちらで。」

 ベットの下に布団をしいて私は布団に入り零夜さんはアラームをかけ布団に入った。

「アラームかけるんですね。」

 と聞くと零夜さんはスマホを置いた。

「朝は弱いんだ。」

 と言い零夜さんは眠りについた。

 

 次の日の朝、目を覚ますと零夜さんは帰った後だった。置き手紙には「お世話になりました。俺は帰りますので。」と書いてあ。今起きた母は「朝ごはんだけでも食べていけばよかったのに。」そう言い朝ごはんを作り始めた。

 私はご飯を食べ準備を終わらせ学園に向かった。

 

 登校すると生徒達が急いで戦闘の準備をしている。

「あの、何が始まるんですか?」

 零夜さんは刀と弓を持っていた。

「今から新種の屍人の討伐だ。」

 そう言い一般男子生徒全員出陣しいった。

 みんながソワソワしている時に、「龍門寺零夜、御門輝檜佐、真也真琴、林崎高利、屍人の攻撃により大怪我をおっている、今すぐ救護班は出陣せよ。」

 とアナウンスが流れた。救護班が直ちに戦場に向かった。

 

 零夜さん達が帰ってきた。

 零夜さん達は傷だらけで皆救護室に運ばれた。

「俺達だけじゃ無理だ。」諦めた兄

「まだ行けるはずだ。」無茶をしようとする真也さん

「...」屍人の攻撃により肺をやられた林崎さん

 零夜さんは腕から血が垂れている。

 救護班が治療をしていると別のアナウンス。「特攻隊が出陣。皆は待機。」と流れた。特攻部隊...大丈夫なのだろうか。私は不安で外に向かった。

 校門を出ると目の前に新種の屍人が倒れていた

 屍人の頭には男子生徒が乗っていた。

「よ、百花久しぶりだな!」

 と私を見て名前を呼ぶ人が居る。

「あなたは...誰?」

 記憶にない人だ。誰なのだろうか。

「あー忘れてるか、悪い。自己紹介はまた後で。」

 彼は屍人の群れに入って行った。

 

 零夜さんに近づき

「あの、特攻隊ってなんですか?」

 零夜さんは手当を受け。

「特攻隊ってのは俺達が負けた時に出陣する隊だ。」

 そう言うと、特攻隊が新種の屍人を倒し、戻ってきた。さっきの男の子が走って来た。

「久しぶり!」と私に抱きついてきた。私はパニックになり、彼の頬を叩いて立っている零夜さんの後ろに隠れた。

「何故俺の後ろ...」

 と突っ込まれたが「お、尾形幸治、久しぶりだな。」

 兄は明るく彼の名を呼び握手をした。「お兄ちゃん、この人誰?」

 そう聞くと兄は「お前の許嫁だよ」と兄が言った。

「許嫁?!」

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