ここで水谷ファミリー
「があっ、はぁ、はぁ」
「ちょっとぅ。えぇ?ほんとにぃ?」
ガクンと体から力を抜いたストーカー先輩。パイプ椅子の間に座って椅子が四方にバラける。
お姉の料理を食べてもダメだったかー。相当消耗していたみたい。
「君は、はぁ、ふざけてるのか?」
「なんのこと?」
「なぜ水谷を本気にさせない。君ならできるだろう?五橋妹・・・」
「できるならやってる」
「・・・とぼけないでくれ。君は水谷に関することならなんでも、知ってるんじゃないか?」
「知ってるかもしれないけど、大体は本人任せ。お兄がやりたいことを見てるだけだよ?」
「それでも、だ。水谷の力を元に戻すことはできないのか?あの動きさえできれば!」
「自分が動けないからって、人に委ねるのは良くない」
「僕はそんなつもりはない。ただ、もったいないと思うだけだ」
うん。普通の人ならそう思うだろうね。でもね、そうやって勝手に期待されて潰れていく人をたくさん見ているから、亜香里はお兄の好きにすればいいと思ってるよ。
それはお姉も一緒のよう・・・ではなかったけどね。お姉はお兄に期待しちゃうし。亜香里はお兄に期待してないわけじゃないけど、わたし自身がびっくりしないようにちょっと距離を取ってお兄を観察してる感じかな。
お兄は凄すぎる。でも、人間はずっと良い調子ではいられないし、悪い時期も必ず来る。だから、ダメな時支えてあげるために、わたしは羽目を外さないようにしてるつもりなんだけどな。
今は、どうもお兄の活躍を願ってしまう。
わたしがストーカー先輩と喋ってる間も、お姉の応援は止まない。
「はやっ!一歩目!!出だしだよ!」
その声援が、お兄へのアドバイスになっているかはわからない。
だって、お兄が覚醒して最高の時の動きはまるで稲妻みたいだっから。一歩目どころじゃない。貫くような動きだった。
お兄は、良い時の感覚を体で覚えてるはず。その動きができないのは、やっぱり使う筋肉とか反射神経がもう人間の動きじゃ無かったのかもしれない。
「違う!ぴゃーだよ!バリバリっ!だよっ!」
だんだん、お姉の応援がアバウトなアドバイスに変わってきた。
わかっているのは、お兄はポイントゲッタータイプでは無いということ。あくまでガードポジション。だから、須藤のように何でもできるタイプではない。
だから、須藤とは戦っている領域が違うと思う。お兄には、お兄の良さを出して欲しい。亜香里の真似とかしてもいいけど、元々はカッコつけお兄の真似しただけだし。
ん?カッコつけ?
「お姉!!」
「どしたの?あかり」
「応援の仕方を変えて!ダメなところじゃなくて、お兄の良いところだけ言って!亜香里もやるから」
「はやとを褒めればいいの?めっちゃ褒めちゃうよ?全身褒めるよ?」
「ほら、月城先輩も。お願いします」
「えぇ?わたしなんかの応援、嬉しいのかなぁ?」
「「水谷ファミリーでしょ!?」」
お姉とハモった。他の女子だったら効果無いかもしれない。でも、月城先輩なら多分効果ある。
そして、柊先輩や金森先輩、神崎先輩のお姉さんも協力して欲しいっ!
メガホンを持って、うちの応援席に向かって叫んだ。
「伝令!!伝令!!」
二階の柵越しに出てきた柊先輩がひょっこり現れて手を振る。
「水谷ファミリーの女子、集合!!水谷ファミリーの、女子、全員、集合っ!!」
それを聞いた水谷ファミリー女子陣がバタバタと走る。
俺は?といった感じでブラジャー薫先輩が自分の顔を指差してる。
うん、一応、呼んでおこうかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます