元気吸収中の話
「え?何やってるの?試合は?」
紗希さんに声をかけられる。立ち上がろうとしたが、望美の手が俺の肩に乗って、床に引き戻される。
「はひはんほんにひわ」
「食べるのに忙しそうね。どう?調子は」
「ほひほひへふ」
紗希さんとは、姉妹両方と付き合うと宣言してから全く話していなかった。何というか、少し俺から避けていた感があった。
「不思議そうな顔してるわね。男の子って、何で勝手に決めちゃうんだろ?」
「はひぃ???」
「まぁ、望美も亜香里も、その辺を合わせていくのは慣れてるから。勝手に反抗期にならないでね?」
「はんほうひ???」
「あら、わかってないわね。うちの旦那と同じでしょ?次に会う時には・・・とかの下りがね。まぁ姉妹の母親としてあなたの壁になってもいいのだけれど、頑張ってる人を卑下するほど意地悪じゃないわ」
「・・・ひんははん?」
真也さんと俺は似たようななことをしようとしたのだろうか?
次に会う時は立派な男になって認めてもらおうとは思っていた。でも、どうすればいいのかは結局わからないままだ。
ただ、こいつらが俺についてきて良かったなと思えるように、できることからやろうとはずっと考えているのだ。
おっと。考え事して咀嚼が止まってしまう。早く食べないと。箸を持って俺の様子を見ている亜香里が待ってくれている。
「はやと、シュウマイ出すの忘れてた。あとコロッケも・・・食べる?」
「はへふ」
「高麗人参入ってるからバッキバキになるよ。頑張ってね?」
バッキバキってめっちゃ強そうなんだけど俺どうなっちゃうんだろ?
「はい、お兄。あーん」
鼻でしか息ができない。亜香里と望美の女子特有の匂いが俺を支配する。
お、おお?なんか、無性に走りたくなってきたぞ?
「根菜を食べると精力つくんだって。蓮根さんも出てきたよ。はい、あーん」
「あああーんんん」
もう食えん。お茶をくれ。俺は試合に出たい!
「あかり特製の、愛を濃縮したジュースです」
愛?どれ飲んでみるか。ごくごくごくん。
「す、すっぱい・・・」
「クエン酸と亜香里の唾液を少々」
「こんな時に何言ってんだよ」
「お姉の唾液のほうが良かった?」
「そういう意味じゃなくてだなぁ・・・」
体が熱くなってきた。火照るどころじゃない。なんだこれ?調子良い・・・のか?
心臓がバクバクしてきた。
「はや、安心して。媚薬は入れてないから。お母さんの監視付きだから大丈夫だよ?」
「望美さん!?」
「だから、変なものは入れてないってば。・・・顔色良くなったね。行ってらっしゃい」
「お兄、ほら行くよ」
「望美、片付けはわたしと子豚さんたちでやっておくから、行ってきなさいな」
「お母さん・・・ありがとね!」
立ち上がると、激しく脈打つ血流が頭を刺激して、ボコンボコンと頭の横で音が鳴って落ち着かない。
え?大丈夫なのか?さっきより体調おかしくなってね?
「お姉、マジで何入れたの?」
「んー、すっぽん?」
「・・・お兄、どんまい。頑張って発散してきて」
体が動くのに、視界が安定しない。
俺は2人に引っ張られながらアリーナの中に戻るのだった。
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