LOVE COOK!!

「お母さん!」


「はいはい」


コートからお母さんに声をかけると、そばにいた優子も動き出していた!


観客席に続く階段の下で合流して、お母さんにお願いしてみる。


「お母さん、美味しい鍋作ろう?神崎くんがお腹空かせてるの!」


「生協から鍋セット借りられるかしら?」


小さい頃やった芋煮会の時みたいに?


「でも、どこで調理しようね?お母さん、ここらへんで火が使える施設、あるかな?」


「・・・レンタルキッチン?」


「「レンタルキッチン!?」」


何それー!楽しそう!そんな場所あるんだね。


「1時間2500円、結構高いんですね」


優子がポチポチと携帯で調べてくれている。


お母さんが、気合いが入った必死の形相の優子を見て、目をぱちくりと瞬きさせていた。


でも、口元を隠すように手を当ててから一言。


「ふーん。そういうこと?」


「優子、神崎くんの好物わかる?」


「和洋中のどれかだったら、中華だってさ」


中華なのかいっ!?ちゃんこ鍋は中華じゃないよ。和食だよ?


「この匂いに負けない中華を作ればいいのね?」


アリーナの外を埋め尽くした匂いが、外に漏れだしている。


いや、なんかそこの男子トイレの中から強烈ってなちゃんこ臭がするよ?


「って亜香里じゃん。何してるの?」


「お姉」


男子トイレから出てきたのはなんと亜香里。そして、お腹をさすりながらヘロヘロになって出てきた男子三人。


え?どういうこと?


「鍋が、あるね・・・」


「亜香里、どういうこと?亜香里の仕業なの?」


「亜香里の親衛隊が、迷惑をかけた」


「やったでござる・・・拙者ら、不破氏を破った。不破なのに・・・フフフ」


「亜香里?友達を大切にしなさいといつも言っているでしょう?」


亜香里がこの男子達に何かされたんじゃないかって杞憂が吹っ飛んだ。この子、中学の時も親衛隊いたもんね。好かれやすいのかなんなのか・・・。


亜香里はドライな性格をしてるから、それをお母さんがわかっていて注意している。


「お母さん、この人たちは友達じゃなくて、ボディーガード。ねえ、みんなちゃんと反省して。ほうれんそうはきちんとして」


「ひ、姫のお母様!?大母上様ですと!?」


「その言い方、わたしがめっちゃ年取ってるみたいに聞こえるからやめてくれる?」


「ぎょ、御意!!」


「この鍋、どこで作ってきたの?借りられる場所があるの?」


「五橋姉様、おっしゃる通り。拙者ら、近場のレンタルキッチンを貸切で押さえているのだ」


「ちょうど良かった。じゃあ、ちょっとわたしに貸してくれない?」


「おおおおお!!!まさか大姉様も料理を!?」


「お母さん、あとは食材だけ買いに行こう?」


「お母さん、必要?だって望美の友達のこの子も行くんでしょう?」


「もちろん優子も行くよ!子供だけで行くのはちょっと心細いかなあ。初対面の男子もいるし・・・」


「亜香里はベンチに戻る」


「うん。何かあったら連絡してね」


よっし!あんまり時間かけなくて済みそう!第4クォーター始まるまで、超特急で作るよっ!


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