望美視点 気持ち悪いってどういうこと?
お母さんが来てる。
多分、亜香里も気づいているだろうけど、颯人の応援に集中してるみたい。お母さんがいるからって特に気にすることはない。
―――懸念材料がふたつある。
一つは、わたしたちに関する、周りの目。
さっき、ベンチの後ろから応援していたうちの女バスから、「気持ち悪い」発言が出た。
何についてか、邪推するほどわたしは試合の応援に集中してないわけではないよ。
でも、続け様に出たセリフが「尻軽女」だった。
後ろを振り返ると、さやかっちと金森先輩がぞろぞろと女バスのみんなを連れて行ってしまった。
なぜ、わたしたち3人で付き合っているからって、影でこそこそ面白おかしく尻軽女って言うんだろうか。
教室だったら、まだ大丈夫だった。颯人がみんなの前で喋ってくれたし。
でも、ここにはわたしたちの関係を知る人は少ない。
複数人と付き合ってるから、尻が軽い?冗談じゃない!
颯人には聞こえているのだろうか?鈍感だけど、わたしたちが乏しめられていたらわかると思う。わたしは、顔に出やすいタイプだから、笑ってる顔なんて作ることがでずに、平気な顔くらいにしかできない。
なんで、女バスから気持ち悪い発言が出るのかな?
今日は女子はまだもう1試合あるのに最悪な雰囲気だ。
「颯人に、伸び伸びとバスケしてもらいたいな」
そのために、わたしができることは何だろうか。―――決まってるんだ。
わたしは、ベンチに帰ってくる颯人を見ないで、女バスが移動したほうに歩きだした。
「お姉、わたしが行く?」
はっとして亜香里の顔を見る。
亜香里にはどうやら、聞えていたみたい。少し伏し目がちにしたその表情は、悲しげだった。
亜香里をこんな顔にする人を、わたしは許したくない。
「ううん。ちょっと、行ってくるね。颯人のこと、お願いね?」
ーーーーーー
アリーナを出て、階段を上っていく。
―――――全ての人に認めてもらうのは難しい。
わかってる。だけど、行かなくちゃ。
「そんな顔して、何しに行くんだ?」
サングラスをかけた女性に声をかけられる。あ、この人・・・
「横山先生!?」
「タテカワだよ、タテカワ!」
「・・・何でもいいですけど、こんなところで何してるんですか?」
「なに、今にも泣きそうな生徒を見たら、放っておけないものだ。学年一位の悩み事に興味が沸いてね」
「それを今、解決しに行くんですけど」
「まあ、待て。上には女バスがいる。君の母親もだ。君は、自分の母親の前で喚き散らす気なのか?」
「・・・・・・そう、です」
「頭が良い判断とは言えないね。勿論、我慢しろと言っているのではない。だが、君の友人たちは君のために、解決しようと頑張るそうだよ?君にそれを伝えておいてくれと言われたんだ」
「金森先輩とさやかっちがですか?」
「そうだ。君たちは何でも自分たちで解決しようとしすぎる。いつからそんな万能なやつになったんだ?肩の力を抜いて、今は戻れ」
「・・・・・・」
「全く。あいつに似て強情だ」
先生がわたしの肩を持って、体がくるっと半回転した。
ポンっと背中を押される。
「旦那の雄姿は今だけだぞ?目に焼き付けとけよ?」
むー。そのまま戻るわけでもなく、振り向いてひとこと言いたくなった。
「はあ・・・わかりました。でも、先生はわたしの味方なんだか何なのかわからないです」
「わたしはきっかけ作りしかしないさ。無理強いなんてしない。君たち自身の人生だからね」
「ありがとう、ございます。ちょっと落ち着きました」
「ある意味で、君が一番厄介だな」
「はいー?」
なんですかそれって聞く前に、横山先生は階段を上って行ってしまった。
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