亜香里は、良く頑張ってるよ。


「おにいっ、ちゅっ、んちゅっ」


「こら、あかり、焦りすぎだぞ?」


「焦って、ないよ?欲しいんだよ?お兄が」


どうしてこんなことになっているか、誰か教えてくれ。


母親が、急に買い物に行くと言い出した。そこまではいい。だが、望美がついて行った。その行動が予想外だったのだ。


残されたのは、亜香里。亜香里だ。


「お兄、今、誰もいないね?だから、もっと、もっと・・・」


「どうしたんだよ。ちょっと落ち着け?俺は逃げないから」


キスされたがりの亜香里が、俺の首筋に口付けしながら、体をぎゅっと密着させる。


亜香里の匂いが。ふわっ、と鼻をくすぐってくる。


甘い、脳幹を焼き尽くすような激情が込み上げてくる。


たまらずに俺はキスをする。キスでしか、答えられないから、無我夢中に。


「いいよ。お兄、もっと、もっと頂戴っ!」


「あかり・・・やべーぞ、これ・・・」


この先にあるのは、ゴールしかない。でも、俺が2人との関係性を論理的に進められないのなら、それは望美を裏切ることになる。それは、ダメだ。気の迷いは、断ち切る。


「亜香里?ペースを落とせ。止まらなくなる」


「・・・・・・せつないよ、お兄」


亜香里だって、わかってるはずだ。望美を裏切れない俺のことを。そして、亜香里自身もそう思ってることを。


亜香里が汗を、かいている。息遣いが、荒い。


やばい。だが、これ以上は、行かせない。


「どうした?あ、飛び級できるか不安なのか」


コクンと俺の首肩に顔を乗せている亜香里がうなずく。


自分のことで精一杯で、気づけなかった。ああ、またやっちまってる。亜香里のこと、全然考えてやれなかった。


「お兄、あかりが飛び級しなくても、一緒にいてくれる?」


「なんじゃそりゃ。当たり前だろ?」


「亜香里は、欲張りだよね?お兄のこと、困らせてるよね?」


「そんなことはない。俺が3人の中で1番欲張りだ。俺が1番、おまえたちを困らせてるんだ」


「亜香里は、自分が嫌いだったよ?お姉がいないと何もできない自分が。お兄がいないと、前に進めない自分が」


「だからあかりは、こんなに立派になったじゃねーか。偉いぞ?偉すぎる。俺の100倍頑張ってるからな」


「ほんとに?」


「俺が嘘をついてるように見えるか?」


密着していた体がほどけて、亜香里が俺を見る。泣いてる亜香里は、いつにも増して可愛い。


「見えない。涙でよく、お兄が見えない」


「よし、じゃあ俺が亜香里を引っ張ってやる。一緒に行こうぜ、全国に!」


「亜香里は、勝てるかなぁ?」


「いつも通りやれば大丈夫だ。望美もいる。俺も応援してる。3人で、頑張ろうな?」


「・・・うん!」


望美はほんとによく、亜香里を見てるよな。亜香里がいっぱいいっぱいだったから、俺に託したんだろう。


俺は、亜香里が俺と一緒で大会が不安だったのが、なぜだか嬉しかった。


3人で、頑張ろうぜ。俺らなら、できるからな。

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