神崎瑞稀先輩に再会した。


「神崎は今日もバイトだったんだな」


「いらっしゃいませ〜。って水谷か。ごめん、今日練習に行けなくてさ」


月城と喋った後、神崎のバイト先に来た。いい加減、腹が減って死にそうだ。


「明日は来るんだろ?おまえをスタメンに入れたから、明日はナンバープレイとか確認したいんだけど」


ナンバープレイとは、攻め手が無くなった時や、ここぞという場面で点数が欲しい時に、ガードが指示するのことだ。


パスするやつやスクリーンをかける場所、もちろん、最後にシュートを打つやつも決める。


明日、2通りぐらいみんなで動きを覚えたいなー。


「へぇー、かっこいいね。水谷が番号を言うだけで相手が混乱するんだろう?」


「じゃなくて、本気で動きを決めないと、本番で使えないぞ」


「わかってるよ。ちゃんと覚える。今日は、何を食べるのかい?」


「満足バーガー2つと、えっと、飲み物は・・・」


「好きなのを飲むといいよ。今日も、姉さんが来てる」


お?マジか。


前に座ったことのある、店の角の席を見る。


あっ、あの黒髪ロングは瑞稀先輩だ。その席の向かいに座ってる栗色の頭は・・・は!?望美!?


なんであいつが来てるんだ?練習はどうした!


まぁ、それはいいとして、神崎、やっぱりお前さぁ・・・。


「神崎ってシスコンなのか?」


「違うよ。そう言う水谷だって、ストーカーなのかい?」


「ストーカーじゃねぇよ!」


「五橋が一人でいる時なんて、最近滅多に見ないからね。珍しく彼氏無しで来たと思ったら、まさか彼氏が追って来るなんてね」


「偶然だ。たまたまだ」


「はい、満足バーガー2つ。あとは、五橋からポテトもらいなよ。3つ頼んでたよ?流石に無理なんじゃないかな」


「え?どでかポテト盛りを?」


「そうだよ。姉さんも引いてたなぁ」


あいつ、どんだけポテト好きなんだよ!





ーーーーーー


「よう、望美。おまえ、バスケの練習は?」


「は、はやちゃん!ち、ちがうの。ダイエットしてるよ?ダイエット、頑張ってるよ!」


「ポテト食べながらダイエットとか凄えな。本当にダイエットしてるやつに謝れ」


「あなたの彼女、食べ過ぎよ。胸がでかいのも納得するわね」


「お久しぶりです、瑞稀先輩。ご一緒していいですか?」


「むしろ、わたしが邪魔みたいだし、いなくなろうか?」


「嫌です!先輩っ、恋バナはまだ途中ですよ?」


「恋バナじゃなくて、惚気話でしょう?わたしから、何も喋ってないじゃない」


俺はもういいかな、と思って望美の隣に座る。


瑞稀先輩が睨んでくる。怖い・・・


「先輩が話してくれないから、先輩から喋っても恥ずかしくならないように、わたしがめちゃくちゃ恥ずかしいことを喋ってるんじゃないですか」


「望美さん!?あんまり赤裸々に語らないで!?」


「わたしからすれば、あなたたち2人の喋ってることは、どっちも内容の変わらない惚気話よ。あぁ、ブラックコーヒーが欲しいわ」


目の前にはお盆一杯の山盛りポテトがある。でも、この間の2つ分の量と変わらないように見える。


さては、こいつ。もう既に1つ分は食べたな?


「つーか、部活行けよ。なんで休んでるんだ。亜香里は行ったんだろ?」


「むー。いいじゃん別に。颯人のせいで瑞稀先輩と話せなかったんだから」


「は?なんで俺のせいなんだよ?」


「付き合ってから、ずぅーーーーーーっと颯人と一緒にいるんだよ?優子と恋バナする暇しかないくらい、わたしは颯人と一緒にいるんだよ?」


「ほ、ほう。それで?」


「土日だって、ずっと2人でイチャイチャしてたじゃん?だから、瑞稀先輩にお礼を言う機会が無かったの。やっと、今日、その機会を作れたわけだよ」


「俺を束縛男みたいに言わないでほしいんだけど・・・」


「別にわたしの中でははやちゃんが優先順位1番だから、気にしなくていいよ。でも、ポテトは食べたかったの。今日だけは許して?ね?」


望美が両手を合わせて上目遣いをしながら、首を傾けてみせる。


「まぁ、いいけどさ」


おまえの中で、バスケはポテト以下なのかよ。みんなには黙っておくからな。


「あのー、わたし、まだお礼なんて言われてませんよ?」


「お礼は颯人が言います。わたしは、颯人が来るまで待ってただけなので」


「やっぱりそうなんだ。付き合いたての彼氏いる人が、ふらっと1人で来ないよね」


は?え?どういう事?


「颯人の看病に行った次の日、なんではやちゃんはここに来たの?」


「いや、神崎というイケメンに相談しようと思ってだなぁ」


「わたしが泣いてたのも気が付かずに?」


「・・・ごめん、望美」


「やっぱりわたしと付き合っても、颯人は変わらないね。安心しちゃった。だって、今日、わたしと亜香里に用事があったから、迷わずここに来たんでしょ?」


「暇だから来たんじゃねーよ!飯食いに来たんだよ!」


「わざわざ駅前に?ほんと、付き合う前と行動が変わらないねぇ」


「う、うるせぇな。暇な時間は何したっていいだろ?」


「水谷くん、焦りすぎて、暇だったって認めてるわよ?」


瑞稀先輩まで俺の敵なんですかあああ!!黙っていて欲しかったあああ!!


「うん、うん。颯人は浮気できないタイプだから安心だなぁ。さっき、さやかっちから連絡来たんだけどね?屋上に呼び出すのは浮気とおんなじだからやめなさいだってさ」


「どこに呼び出したっていいだろ!亜香里と飯食ってた場所だから、落ち着くんだよ!」


腹減ってるのに、それどころじゃない。満足バーガーを食えない。突っ込みどころが多すぎる。喋りながらポテトを食える望美はなんなんだ!









ーーーーーー


作者より


望美の優先順位は


颯人=亜香里=ポテト


です!


作者はポテトに岩塩追加派です(聞いてない



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