月城沙耶香は愉快に笑う


バスケ部の活動を終えた後、望美に月城の連絡先を聞いた。


何も言わずに教えてくれたから、俺が月城に浮気をするとは思ってないらしい。


むしろ、月城は俺の苦手なタイプだ。天然パーマで見た目は可愛いのだけど、望美に嫉妬するあいつを見たら考え方は変わる。


女の嫉妬ってやつは恐ろしい。肝に銘じなきゃな。


「わたしを屋上に呼び出すなんてぇ。粋な計らいねぇ」


「なんか勘違いしてねぇか?」


汗臭い疲れた体を引きずって屋上にたどり着いた俺の前には、月城が立っていた。


いつぞやの望美とのバトル?が思い出される。


「告白じゃないのはわかるよぉ?でもぉ、亜香里ちゃんとイチャイチャした場所に呼び出すなんてぇ。どんな性癖してるのぉ?」


亜香里はこいつに喋ってたのかよ!!


「まじかよ。それを知ってるなら、場所を変えてもいいけど・・・」


「めんどくさぁい。女子はこの後練習なの。早くしてぇ?」


なんか、なんというか、シチュエーションと月城の言葉がエロいな。いかんいかん!早急に望美に甘えねばならない。が、その前に聞きたいことは聞こう。


「おまえはまだ、竜ヶ崎が好きなのか?」


「うーんん、可哀想な、人が好きだよぉ?」


「おまえの好きなタイプは聞いてないんだが・・・」


「竜ヶ崎ちゃんをちょ〜っと脅したら、何でも言うこと聞くようになっちゃったんだぁ」


お、おう。


「なんか、楽しそうだな」


「楽しぃ。すんごく。亜香里ちゃんに感謝しなきゃねぇ」


「また、亜香里が絡んでるのか?」


「水谷くんが本当に望美と付き合う前に、一回相談にのってるからねぇ」


うげ。やっぱりバレてましたよね?彼氏のフリ。


「騙してたのは悪かった」


「別にいいよぉ?水谷くん、わたしのこと苦手でしょう?人を呪い殺すような顔見せちゃったしねぇ」


「苦手っつうか。敵じゃなくて良かったと言うべきか・・・」


「あらぁ、そんなにわたしのこと評価してくれるのねぇ。でもぉ、いくらわたしでも、あの姉妹には勝てないのよぉ?良かったわね。あの二人がいれば、水谷くんの未来は明るいわぁ」


「亜香里に頼まれて、竜ヶ崎を手玉に取ったのか?」


「亜香里ちゃんはそんなひどいこと指示しないよぉ?亜香里ちゃんがプレーヤーになって、全国に行って、できれば男子も全国に行って、一緒の旅館に泊まって水谷くんと既成事実作らなきゃって言ってたのぉ」


「壮大な仰天プランだな!?」


「だから、わたしは動いたのぉ。面白そうだったからねぇ。それにぃ、相談乗ってた時の亜香里ちゃんはを覚悟してたのよぉ?可哀想だったから、応援したくなっちゃったぁ」


うっ。亜香里のやつ、負けそうだって思ってたのか。相談相手を辞めたいって言うから、おかしいと思ってたんだよな。


「ちなみにぃ、全部望美にも話してるから大丈夫よぉ?」


何が大丈夫なのかわからない。月城まで動くと俺は全くついていけそうにないな。


「竜ヶ崎をどうやって脅したんだ?」


「乙女の足に一生消えない傷をつけたから、結婚してぇ?って言っただけよぉ?逃げられたけどねぇ。追い詰めたわぁ」


ガチもんのホラーじゃねぇか!!


「水谷くんのハーレムも楽しそうねぇ。わたしも入っていぃ?役に立つよぉ?」


「いらない。マジで」


「いけずぅ」


いや、こいつ絶対俺のこと好きじゃ無いだろ。一度でもOKしたら地獄に落ちそうな地雷なんて、踏めるかッ!


なんか、一気に竜ヶ崎が可哀想になってきわ。


「どうでもいいことなんだけど、いつまで竜ヶ崎で遊ぶ気なんだ?」


「何いってるのぉ?死ぬまでよぉ?」


どんまい、竜ヶ崎。俺は助けられない。おまえは月城に気に入られたばかりに、底無し沼にハマっちまったんだな。

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