※亜香里視点 囲まれて話してバスケに向けて


「亜香里ちゃん、望美ちゃんが先に水谷くんと付き合って、辛かったんじゃない?」


わたしの席の周りに女性陣が集まっている。聞きたいことがあるなら聞けば良いよ。あかりは逃げないからね。


「辛かった。お兄がいない生活は虚無」


「ねぇねぇ、そのお兄って言うの、なんで?小さい頃からそう呼んでるの?」


「お兄は、お兄。わたしの手を取ってくれた唯一の人。あかりの王子様。結婚しようって言ったけど、断られたから、お兄ちゃんになってもらうことで我慢してた」


「すごおおおおい!一途に想ってたんだね」


勝手に女性陣が盛り上がっている。名前も知らない人に赤裸々に話すのが正解かと聞かれれば、それはNOだ。


でも、亜香里は馬鹿なフリをしていたほうがいいかもしれない。飛び級予定だけど、ポンコツ純粋後輩キャラを目指した方が、角が立たない気がする。


このキャラって女性受けが悪いんだけど、今のところは上手くいきそうだ。


お姉をチラッと見る。なんとも言えない顔で苦笑いしてるけど、手を振ってる。どうやら許容範囲らしい。許してもらえているので、わたしが止まる理由は無い。


「飛び級って、水谷くんのためだよね?彼のどこが好きなの?」


「全部。ダメなとこも含めて。だから、お兄のダメなところがあったら言ってね?あかりがなんとかするから」


「水谷くんって、普段喋らないから、なんか、怖い感じがあるんだよね」


「お兄は女性には優しい」


「男性には?」


「お姉とわたしを狙わなければ、という条件付きだけど、基本男性にも優しいよ?」


「僕は水谷に結構相談乗ってもらってるんだ。彼は結構良い人だよ?」


神崎先輩が話に混ざってきて、フォローしてくれる。


「水谷はもう付き合ってるんだし、恋人にちょっかい出してくる人を警戒するのは当たり前だよ。まぁ、あの嫉妬ビームは僕には効かないから、参考にならないと思うけど」


ビームって表現が面白くて笑っちゃいそうになる。


あ、でも、神崎先輩には効かないんだ。お兄の嫉妬耐えられる人と耐えられない人の違いは何だろう?


まさか、イケメンだから大丈夫、とか?


わたしは全然イケメンだと思わないんだけどね。お兄が言ってるから、話を合わせてるだけだし。


「神崎先輩は、何で効かないんですか?」


「僕?うーん、何でだろう。人の色恋沙汰に、あんまり興味が無いからかな。だから、妬まれても、無意味なことしてるなぁ、って思うかな」


なるほど。お兄の嫉妬が効く相手は恋愛に興味がある人限定、っと。


柊先輩をチラッと見る。神崎先輩の発言にあたふたしてる様子。ちょっと悲しそうな顔をしてる。


柊先輩のこと、応援してあげたいんだけど・・・まぁ、それはわたしじゃなくて、お姉がやるとして。


「話が変わりますけど神崎先輩、バスケ部入りませんか?お姉もお兄も誘ってないみたいなので、マネージャーの亜香里が誘います」


「実は、相澤先生に頼まれてて、もう県大会だけ協力しますって言ってあるんだ」


相澤先生!流石!仕事早い!


「それはびっくり仰天。でも良かったです。一緒に全国行けるように頑張りましょう」


というか、今から神崎先輩がバスケ部に入部しても、県大会には出られないけどね。でも、お兄が神崎先輩と楽しそうにバスケしてるの思い出したら、誘っちゃった。


むふふ。これで、男女揃って全国に行ける確率がちょびっとだけ上がったよ?お兄。


あとはあの人に声をかけておこう。相澤先生なら、もう手は打ってるだろうけどね。

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