昼、バスケ部の面々は泊まりを警戒する。
「一応、釘刺しておくけど、これ以上問題を起こさないでね」
金森先輩は神妙な面持ちで俺を見つめる。
昼、教室にバスケ部メンバーが集まって昼食を取っていた。と言っても、集まったのは水谷ファミリーのバスケ部だけだ。望美の計らいなのだが、バスケ部の面々の表情は暗い。
俺は金森先輩、月城、上田に、望美と亜香里、両方と付き合うことを話した。最初は3人とも喜んでくれた。
でも竜ヶ崎の件のせいで、バスケ部はこれ以上、不祥事を起こせないらしい。竜ヶ崎の時は、男女共に大会出場辞退の可能性まであったらしい。
だから、俺の責任は重大なのである。まして、女子と同じ部屋で寝るのだ。うん、なかなか痺れる展開である。内心、ちょっと楽しみな自分がいる。
だけど、相澤先生、考えが甘すぎるんじゃないか?
「バスケ部の今の状況だと、例えば男女の部屋を行き来しただけでダメそう」
金森先輩がそんなことを言う。
「いや、俺、女子部屋にいるみたいなもんなんですけど、それは?」
「水谷くんは特別なんだねぇ。でもそれってぇ、良いのかなぁ?3人で付き合うことより、そういう部分がずるいなぁ」
月城の言うことは正しい。バスケ部の色恋沙汰は知らないが、同じ旅館に泊まるなら夜に会いたいやつがいてもおかしくはない。
「先生は、マネージャーの部屋に泊まってくれるわけじゃない。女二人の部屋は怖い。だから、お兄が必要だった」
亜香里が説明する。でも、それは俺が必要な理由としては弱い。
「わたしぃ、用心棒としてマネージャー部屋にいようかぁ?水谷くんより、わたしのほうが、強いよぉ?」
「マネージャーの部屋なんて、作るから問題なんだよ。自分のユニフォームと靴下の洗濯くらい、自分でやろうよ」
月城と金森先輩がそれぞれ言う。そうだ。今まではマネージャーなんていなかったんだから、自分でみんなやっていたはずだ。
「泊まり自体が久々で、つまり、県大会出場が予想外すぎて、先生は悩んでいた。だから、わたしが協力することにした」
亜香里が続けて言う。
「先生は、部が強くなったら遠征や泊まりは増えるから、この機会に最適な方法を見つけたいと言っていた。だから、お兄が必要」
「いや、俺、いらなくね?」
「お兄が手を出さなければいい。簡単」
「亜香里、そういうことを言ってるんじゃないぞ?」
「上田は黙ってて。男バスも女バスも、竜ヶ崎先輩のせいで仲が悪くなったのは知ってる。だけど、これはチャンス」
「亜香里、颯人を部長にでもする気?」
は?望美、何言ってんだ?
「おい。俺は部長なんてやらねーし、みんなが認めないだろ」
「お兄はどうしたら部長、してくれる?」
「無理だ。そんな器じゃない」
「お姉がやれば、お兄もやるかな?」
「亜香里?ちょっと話が飛躍しすぎだよ。わたし、部長なんてやる気無いよ?」
「ノゾミンが部長やるのは賛成。一番バスケ上手いからね」
金森先輩は望美にずっと女バスにいて欲しい立場だから、顔をニヤつかせて食い気味に言ってくる。
月城は面白く無さそうにジト目で金森先輩を見ている。
月城は、望美までとはいかないが、地区予選で活躍したらしい。チーム二番目の得点源だったようだ。だけど、一番じゃなかったことに関しては気に食わないのだろう。女バスの部長になりたいと月城が思っていてもおかしくは無い。
「部長は月城でいいんじゃないか?」
「水谷くん、あなた、自分の彼女が酷い目にあったのを忘れたの?」
「あー、アレのことですか?別に本人達が気にしてなければ、俺はいいですよ」
「じゃなくて、自分の感情を抑えられない人に、部長は務まらないわ」
ふーん、そんなもんかね。
「上田、おまえ部長やれよ。一番上手いだろ、おまえ」
「嫌ですよ。俺は一年ですからやりません」
「亜香里みたいに飛び級したら?」
「いや、亜香里が飛び級できそうだからって、簡単に俺に言わないでくださいよ。水谷先輩、諦めて部長やりませんか?」
「やらねーよ!」
どうにも話がまとまりそうにない。
あと4日後には県大会だぞ?俺たち、このままで大丈夫なのか?色々とさー。
ーーーーーー
作者より。
このメンツで部長っぽくて、私情を抑えられる人、いなくね?
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