第45話 全員揃うってなかなか難しい
今日も待ちに待った昼休みがやってきた。昼休みはご飯を食べる至福の時間、そのものだ。決して先生に呼び出される時間でも、誰かに告白される時間でもない。
だが、無常にも薫は部活の先輩に呼び出されたらしく、只今不在だ。かわいそうに。
「昨日はどうも。お昼ご一緒していいかな?」
「いらっしゃい、神崎くん。今日は優子の隣の刑にしてあげる」
「えっ、えっ!?わたし!?」
神崎と望美と柊が喋っている。望美は何かしらこじつけて柊と神崎を一緒にしたいようだ。
「昨日の放課後活動、柊は何してたんだ?」
俺も会話に加わる。
「えーっと、鳥の、観察?」
バードウォッチングが奉仕活動になるのだろうか?横山ちゃん、活動ってもしかして何でもアリ?
「へぇー。公園にでも行ったのかい?」
「ち。違うよ?校庭のサッカーゴールの後ろに巣箱があるんだけど、あそこに去年からメジロが住んでるの」
結構危ないところに巣箱置いてるな。ボールが飛んできて壊しそうだが。
「そうなんだ。メジロはずっと巣箱にいるのかい?」
「うん。最近はずっといるみたい。昨日はわたしが来たらいなくなっちゃって、その間、巣箱の下を掃除をしたんだよ」
なんだ、ちゃんと掃除頼まれてたんじゃないか。横山ちゃん、疑ってすまんな。
「掃除はすぐ終わったんだけど、わたしがいなくなったら巣箱にメジロが戻ってくるんだ。だから、できるだけ近くで見たくて、だるまさんが転んだみたいにゆっくり近づいたり離れたりしてたの」
「それを柊が一人でやってると想像したらかなりシュールだな」
「昨日の君の睨めっこもなかなかだったよ?」
「神崎ィ!」
ニヤニヤしてる神崎を睨みつける俺。
「優子、いいなぁ。わたしも見てみたい」
「望美も一緒にだるまさんが転んだ、する?」
「小学生の時以来でおもしろそう!颯人もやろうよ!」
「は?神崎が行くなら行ってもいいぞ?」
「僕の金髪を見たらメジロが逃げるよ」
と、俺らが話していると他のやつらが教室に入ってくる。
「お兄、さっきぶり」
「失礼します。なんか、一年の俺が何度も出入りして大丈夫なんですかね?」
まずは亜香里と上田が来た。
「颯人が許してるからいいんだよ?」
望美さん?俺にそんな権力はありませんが。
「ノゾミンこんにちはー!今日も練習内容変える?変えちゃう?」
「えー?どうしよっかなぁー?」
なんで望美がいると、練習内容変わるんだよ。おかしいだろ!
金森先輩の後ろから月城がジト目で見てくる。
「せんぱぁい?なんでノゾミンばかり贔屓するの?わたしぃ、また怒っちゃうよぉ?」
それを聞いて真っ青になる金森先輩。望美と月城と、どっちも機嫌取るのが大変そうだな。
「今日は何の記念で集まったの?」
柊が望美に聞いてくる。
「何もないけど、しいて言うならBBQ決定記念かな?話進めようよ!」
今日の望美の弁当はロコモコ丼だった。ハンバーグは弁当の主役。つまり神。
毒見の薫がいなくて、月城の重箱に入っていた鰻重はみんなで分けた。
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