第40話 横山先生の依頼
昼休み、横山ちゃんに進路指導室に呼び出された。
なぜか望美と一緒に。
うん。呼び出される様な悪いことは・・・して・・・無いはず。
「わたしたち、イケナイ遊びをしてたのがバレちゃったのかな?」
向かう途中、こいつはニヤニヤしながらこちらを見て来る。
一応望美に釘を刺しておくか。
「いいか?もしそれについて聞かれても、ややこしくなるから、余計なこと言うんじゃねーぞ?」
「はやちゃん。真面目な話、呼び出されたのは神崎くんのことだと思うよ?」
「え?じゃあなんで放課後活動メンバーの柊は一緒に呼び出されなかったんだ?」
「横山ちゃん、色恋沙汰に妙に鋭いでしょう?優子が神崎くんのこと好きって知ってるから、あえて外したんだと思うよ」
「横山ちゃん、とんでもないな」
失礼しますと進路指導室に入る。
横山ちゃんは中央の机で弁当を食べていた。
「よう、バカップル。元気か?子供だけは作るなよ。わたしの首が飛ぶ」
「先生、わたしたちを呼び出した理由ってそれですか?」
子供ってなんだよ。そんな突拍子も無いことを言われたらもう、俺らは付き合ってないと否定することすら面倒になる。
「そんなわけないだろう。とりあえず座ってくれ」
だよな。助かった。つーことは、神崎の件か。
「神崎に何かあったんですか?」
「あったんだろうが、本人から教えてもらえていない」
「え?神崎くんは元気なんですか?」
「ああ。今日一日バイトをしている筈だ」
は?バイト!?え?
望美が反応する。
「ええっ!?バイト!?どうしてですか?神崎くんちはお母さんとお姉さんしかいないみたいですけど、そこまで貧乏なんですか?」
「いや、いくら貧乏と言えどもそこまででは無いだろう。だから、わたしも不思議なのだ」
神崎から、母子家庭であることは聞いていた。神崎の姉がこの学校にいることも知ってる。
だが、なぜ、大学志望のおまえが、平日の日中まで学校に行かずにバイトをする必要がある?
「先生、わかりました。俺たちが本人に理由を聞いてきてほしいということですね?」
「ああ。柊にも言おうか迷ったが、あいつは思い込みが激しいからな。わたしからは当たり障りの無い感じに言っておくよ。うん、今から柊用の活動を考えねばな」
なんだそれ。柊どんまい。
「今日の放課後活動は神崎のバイト先に赴き、神崎に理由を聞いてくる、だ。別に結果をわたしに言わなくても構わん。二人がこれを口実にデートするのも結構」
デートしてもいいのかよ!と内心突っ込んでしまったが、横山ちゃんの目つきが変わる。
「だが、どんな理由があるにせよ。君たちは学校推薦を決めるための集まりをしているんだ。やる気の無いやつは言うだけ時間の無駄だ。だから、下らない理由だったら神崎を説得してなくてもいい。そこの判断は任せる」
それ遠回しに、俺らにもイチャイチャするんじゃねーぞって言ってませんかね?
「先生、颯人とわたしはいつもイチャイチャしてるように見えますが、いつでも本気です」
「グフゥ」
横山ちゃんにクリティカルヒット!
望美、それ以上はやめなさい。窒息してしまう。
「いいからもう行け。この後柊も呼び出さなきゃならない」
ーーーーーー
「お兄、わたしも行く」
放課後、亜香里に事情を説明して上田と部活に行ってもらおうとしたのだが、亜香里はついて来るらしい。
「いいんじゃない?神崎くんのバイト先ってファーストフード店でしょ?店の中で待てるからいいじゃん」
「まぁ、いいか。亜香里、ちゃんとおとなしくしてるんだぞ」
「お兄!子供扱い、禁止!」
頬を膨らませて怒り出す亜香里。
なんか、奇しくも昨日と似た状況、同じメンツになってしまった。
横山先生の目が光ってる以上、今日は真面目に依頼をこなしますかね。
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