第38話 結果、望美を誰にも見せたくない
部屋のエアコンをつける。暖房にしないと、こいつらが風邪をひいてしまう。
二人は俺の部屋のドアの前で着替えているらしい。確かにこんなこと、親がいたらできないよなぁ、と呑気に考えることにした。
トントン、とドアがノックされた。寒いんだから、早く入れよ。マジで風邪ひくぞ。
二人が入ってくる。亜香里はシャチの絵が描いてあるパーカーを着ている。ちょっとぶかぶかに着崩しているのが可愛らしい。
そして望美はピンクのシャツのロングチェニックだ。望美のほうが、薄着で寒そうである。
「お兄、お姉を暖めてあげて」
亜香里は水着を着ていないようだ。下に白のミニスカートをを履いている。さっき濡れた時に水着は着たから、洗濯したのかもしれない。
それより、亜香里がなぜか挙動不審である。何か警戒しているような態勢だ。
「亜香里?どうした?」
「そろそろはやままが帰ってくるから、見張りがてら、夕食を作る。ごゆっくり〜」
そう言って部屋を出て行くあかり。
まじかよ。
部屋に残された俺と望美。さっきから望美が一言も喋らない。ずっと顔を赤らめて、もじもじしている。
「ほら、と、とりあえず、座れよ」
「う、うん」
なんなんだこの空気は。
今から勉強する?とか話変えたら怒るんだろうな。こんな時、どうしたらいい?教えてイケメン神崎!
「はやちゃん。寒いよ」
「下履けよ。エアコンもうちょっと強くするか?」
「はやちゃんに、ハグしてもらいたい」
ハグ、ハグかぁ。レベル高いなぁ。
「風邪ひいちゃうよ。お願い」
望美の紅潮した顔、ずっと俺を見つめる綺麗な瞳に降参しつつ、俺は望美を抱きしめた。
望美の体の震えがぴたりと止まった。
「これでいいか?」
望美が俺の胸に顔を埋めてもぞもぞしている。
「うん。あったかい。颯人の心臓、速いよ?」
「そりゃあ、こんな可愛い子抱きしめるの、初めてだからな」
「ちゃんと、ドキドキしてくれて嬉しいな」
「そうなのか?」
「ねぇ、いつも悪戯ばかりして、ごめんね?」
「どうしたよ急に」
「言いたくなったの。一応、これでも自覚はあるから」
「さいですか」
自覚はあるのか。無自覚で俺を振り回してるのかと思っていた。あえて理由は聞かねえぞ。
しばらく、俺らは抱き合っていた。お互い無言だったが、何も喋らなくても、今のままでいいかなと思っていた。
エアコンが効いてきて、部屋が暖まった。服を着ている俺がちょっと暑いなと感じたぐらいの時、望美が顔を上げた。
「暖まったから、脱いであげようか?見たいでしょ」
「さっき試着室で見たじゃねーか」
「ねぇ、こういう時は素直に見たいですって言ってくれたほうが嬉しいんだよ?」
望美がチェニックを脱ぎ出す。望美の買った白いビキニと共に、白い素肌が見えた。
こんな近くで水着姿になるなよ。興奮して鼻息荒くなるじゃねーか。
どこを見ても完璧。露出した部分、全てを隠したい。しまっておきたい。実際、叶うなら俺にしか見せないでほしい。鎖骨も、柔らかそうな胸も、可愛いおへそも、滑らかな曲線の太ももだって。
そして何より、その恥ずかしがってる表情が堪らなく可愛くて、ずっと見ていたくなる。
「・・・どう、ですか?」
望美が胸を隠しながらもじもじしている。
いや、もう隠せてねーから。
「やっぱ、これを他の人に見せるのは無しだな」
「ええっ!?そんなに嫉妬しちゃうの?」
「するわー、絶対。自信がある」
「じゃあ、この仮説はダメだった、ということで。また違う説を探そうよ」
そう言って、そそくさと何事も無かったかのように、チェニックを着る望美。
部屋のドアの前で、望美が振り向く。
「もし、付き合ったら、いっぱい触らせてあげるからね?」
「は?」
わざとらしく舌を出して首をかしげて見せる望美は、俺がその真意を問う間もなく出て行ってしまった。
「あー、もう。バレバレかよー!!」
悶えに悶える。あー、くそ。男の本能には抗えないってことですか。
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