第32話 日曜日、スタン


日曜日の朝7時。寝起きの俺は、なんで曜日って日曜日から始まるんだろう、月曜日からでよくね?っていうどうでも良いことを考えていた。


そんな時、望美から連絡が来る。


あ、長文だ。


『昨日はありがとう。とても楽しかったです。はやちゃん独り占めできて嬉しかったなぁ。ちなみに今日はわたし、今からテニス部の助っ人をしに行きます。ぐっすり寝たので体調は万全!だから心配しないでね。


今日は亜香里の相手をしてあげてね』


二日連続で望美さんなのかと思ったら、亜香里さんかよ。


いつ来るんだろう?


ガチャガチャ


ん?なんか下の玄関から乱暴な鍵開けの音がする。


「お兄、おはよう」


あ、もう来たのね。


朝早く勝手に家に来るこの姉妹に、常識というものはあるのか?


まぁ、今更か。


俺は寝巻きのまま下に降りる。


「お兄、なんで、起きてるの?添い寝は?」


おまえも添い寝するつもりだったんかい。


「一時間遅い。出直してこい」


「あかりは朝弱い。今度は夜中に行く」


いや、危ないから。変質者に狙われるから。


「で、どっか行くのか?」


「まずは、見てもらいたいものがある」


なんだろう?虫だったら嫌だな。


「とりあえず、上がれよ」


「お邪魔します」


あ、今日親どっちも朝から親戚の家に行っていない日じゃん。すっかり忘れてたわ。


「はやまま、いないの?」


「今日一日いない」


「わたしを、食べる気?」


「なんでだよ」


「お姉呼ぶ?」


「あいつ今から用事あるんだろ?」


「ほんと、タイミング、悪い」


「二日連続で一緒にいたくないだろ」


「わたしは、お兄なら、365日、一緒でも平気」


こいつは、小さい時からそうだったよな。ずっと俺から離れなかった。今は大分お互いのそれぞれの時間があるけど、当時はまるっきり一緒だった気がする。


階段を登って俺の部屋に入る。


「で?俺の部屋で、何するんだ?」


「今から、お兄に見てほしいものがある」


「それはさっき聞いたぞ」


「わたしの、下着を見てほしい」


は?


「ちゃんと、見てね、


何だ?亜香里が下着を見せる?


そして、おかしいことがもうひとつ。


小学生の時振りに亜香里に名前を呼ばれた。


ぞくりと心が捕らわれる。


亜香里が履いているチェックのスカートを託しあげようとする。


「おい、亜香里、馬鹿な真似はよせ」


そんなの姉妹で見せ合いっこすればいいじゃないか。なぜ俺に見せる必要がある?


ぴくっ、と停止する亜香里。


「お兄に嫉妬されてみたいの。ダメ?」


「嫉妬?」


「わたしにも、嫉妬、して?」


「いつも嫉妬してるみたいに言うなよ」


「はやとに、嫉妬させるために、スカート丈を、もっとギリギリまで短くして、外を歩いても、いいよ?そしたら、はやとは、嫉妬してくれるかな?」


「やめろよ!」


想像して、思わず声を上げてしまった。


怒気がこもった声は、嫉妬とまではいかなくても、亜香里が望むものだったらしい。


にへら、とどこか安心したように笑う亜香里。


「はやと。それだよ。ずっと、欲しかった」


「おまえ、今日どうした?」


「どうもしてないよ。嘘なんかじゃない。亜香里の本当の気持ち」


満足げに微笑む亜香里の考えてることはわからない。


本当の気持ち?


亜香里の?


「どういう意味だ?」


「はやと、どうしたらわかってくれるかな」


移動して俺のベッドに座る亜香里。


「わたしね、考えたんだ。どうすればいいのか。はやとは、今のこの関係がお好み?」


「誰の、何の話だ」


俺は、動けなかった。


これ以上、話を進めたら、何かが壊れる気がした。

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