俺の進路希望調査票に何故か幼馴染の名前がある

とろにか

第1話 プロローグ

ーーー進路調査の時期がやってきた。



晴れて高校二年生となった文系の俺に将来のことを聞かれても、何をしたいかを決めることはできずに、ただ漠然と、なるようになるさ、と答えてしまう。


幸い、周りにいるのが大学進学を考えている連中ばかりだったので、第一希望は大学進学と書くのがベターだということはわかっている。


俺、水谷颯人は学校の名誉のために一応、第一志望を大学進学と書いた。


「よう、颯人。お前も大学進学か?国立か私立かどうかは決めたか?」


前の席に座って後ろの俺に話しかけるこいつの名は福山薫。クラス替えで知ってるやつのほとんどが理系に行ったようだが、高校に入ってからの友人と呼べるこいつがいるのは、ある意味ラッキーだったかもしれない。


「これ、そんなに詳しく書くやつだっけ?進路希望なんて、これからの成績でどんどん変わるんじゃないか?」


「うちの高校は特待生みたいなクラスは設けないみたいだからな。まずは大学進学に向けて、やる気のあるやつと無いやつを把握するのが大事らしい」


「ほーん」


なるほど、今のうちに担任へアピールしとけということか。


「この調査票、本人じゃなくて親が書いたりする場合もあるのか?」


「そりゃあ6月に三者面談があるから、それに向けて書く親はいるんじゃないか?ま、俺は親に言わずに自分で書いたけどさ」


薫の取り出した進路調査票を見て俺はある事に気づく。


「あっ、ボールペンで書いてるんだな。俺なんかシャーペンだ」


なぞって消しゴムで消そうと、ごそごそと自分のバッグから進路調査票を取り出した時、俺は固まってしまった。


「は?」


「ん?なんだ?親バレして書き直されたとかか?」


薫に覗き込まれる。


「んんん?これは・・・」


第一志望 五橋望美


ボールペンでハッキリと書かれたその文字は、俺の幼馴染の名前だった。

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