God Save The Queen(シングルVer.)
宇目埜めう
Prologue
――人生が何かって?神とは何かって?ふん、そんなことはどうでもいい。自分にあるものをただ楽しんで、突き進め―― ジョン・ライドン/Sex Pistols
次に創るシングルはライブアルバムに収録されたカバー曲の再録が良いと彼女は思っていた。バンドの結成から活動休止、活動再開までを表現したライブアルバム。
その想いをメンバーに伝えるには少し勇気が必要だった。
オリジナル志向の強い彼女のバンドにあってカバー曲はタブーに近い。あのライブアルバムを除いては…。
それでも彼女がカバー曲でシングルを創りたいと思ったのには理由がある。
光を見つけ、ドラムを叩くことで生きる勇気を培った彼女がバンドでドラムを叩きたいと思うきっかけになった出来事を一つの作品として表現したいと思ったからだ。
きっと、オリジナル曲じゃダメなのかとの反論を浴びるだろう。
それでもかまわないと思っていた。
彼女が表現したいのはまだ一人で戦っていた――いや、戦ってすらいなかった――あの頃のことだ。
あの頃。彼女が一歩足を踏み出すことすら恐ろしくなるような暗闇を抜けた先に見つけた微かだけど確かなものは光だった。眩しく容赦なく彼女を照らす光。
あの日、行きたくないとごねた彼女を半ば無理やり音楽フェスに連れ出してくれた父親に今では感謝している。
自分の人生なんてあってもなくても同じ。どうでもいい。彼女はいつもそんな風に拗ねていた。
どうでもいいと思いながら他人の評価は人一倍気にする。彼女はいつもそんな矛盾を抱えていた。
それが光を見つけるこどで、自分の人生を意味のあるものだと考えられるようになった。
光も神様もないなんてもう思わない。少なくともその存在は信じている。彼女は光をもうすでに見つけていたから。
彼女が光の次に見つけたのは神だった。
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