4.本番
一ヶ月が過ぎた頃、娘は笑顔で私にこう言った。
「そろそろおとうさんにみせようとおもうの。どう?」
娘にとって見せるレベルまで成長したらしい。それを聞いた私ははりきってこう返した。
「じゃあ、可愛い衣装作らないとね」
発表する日を二人で決めて、娘は最後の仕上げに私は衣装に取り掛かった。
色やフリルの要望を聞いて、二人で布を買いに行き材料を揃えた。それから私はミシンと向き合うことになる。作業をしながら娘を見ると、一生懸命「ここはこうだから」と言いながら直していた。こんなに楽しんでやっているのを見て目頭が熱くなった。子供の成長は早い。今こうやって近くで成長を感じられることがとても嬉しかった。
ついに本番。娘は朝からそわそわしている。
仕事が休みのお父さんはその光景を見て「何かあった?」と聞いてきた。その言葉を遠くから聞いていた娘は、お父さんに近寄って言った。
「きょうはおとうさんにみせたいものがあるので、ここにすわってて」
お父さんをソファーに座らせ、娘は部屋に行き衣装に着替えている。
着替え終わると少し照れながらソファーの前にやってきた。お父さんが「おお」と言ったのを聞いて、私に「おねがい」と声をかける。その合図で私は用意していた音楽をかけた。
曲が流れ始めて歌いだす。まだたどたどしいけれど一生懸命歌っている。途中から踊りが始まると、歌はほとんどなくなる。だけど、大きく動けていて、細かい動きも上手になっていた。
曲はあっという間に終わって、お父さんを見ると号泣していた。何で泣いてるのと声をかける私も泣いていた。「なんでないてるの?」と聞く娘を抱きしめ「すごいなぁ」とお父さんは褒めていた。私も一緒にすごいすごいと言いながら頭を撫でた。
今日のことはずっと忘れないだろう。発表が終わっても歌ったり踊ったりする姿を見て、まだまだこの成長が見られるんだなぁと嬉しかった。心残りといえば、あの発表を映像に残しておかなかったことぐらいだろうか。
我が家のアイドル 福蘭縁寿 @kaname54
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