32話 遺跡ハンター

 古代帝国については聞いたことがある。

 ただそれは、大昔に大きな国があってすでに滅びた……ということでしかなかったが。


「その古代帝国の遺物がここはまだ隠されている……」


 僕はベッドに横になりながら、見た事のない古代帝国の様子を思い返していた。

 ……わくわくするなぁ!

 僕は胸のドキドキが止まらなくて、なかなか寝付けなかった。


「それでは、遺跡発掘のチームを分けます!」

「おーっ」


 島に残るであろう遺跡の痕跡を求めて、僕達は一斉探索をかけることにした。

 期限は三日。


「はいはい! オレはラリサさんと……」

「却下!」


 三日間もラリサとヴィオを一緒になんかいさせられるか。

 

「ヴィオはセドリックとチームだ」

「そんなぁ」

「ヴィオは体力自慢だから、セドリックをサポートしてやってくれ」

「ううーん」

「セドリックは僕と一緒に別の遺跡も見ている。ヴィオもラリサも見た事ないだろう?」


 渋っているヴィオを理詰めで黙らせる。


「で、僕はカラとマリーとラリサと回る……と」

「アレン、女の子ばっかりじゃないか」

「し、しかたないだろう!!」

「家事はよろしいのですか、マスター」

「それよりこちらを優先して」

「かしこまりました」


 さてアレンチームとセドリックチームは島を半分にして三日間島を探索することになった。


「なにか見つけたら狼煙をあげる、これでいいね」

「はい、それから三日目の夕方には灯台に戻る、ですね」

「ああ。それでは行こう!」


 僕らは筏に、セドリック達はカヌーに乗って灯台を離れた。


「さて。西の滝とあの廃屋を抜かす……ってことは山の裏側かな」

「そうですね、お館様」


 僕達は西側の山の裏側を探索したけれど、特に何も見つからなかった。


「今日はここまでか……」


 夕闇が迫ってきている。空を見あげたが、狼煙の様子はない。


「今日眠るところを探そう」


 カラが短刀を手にして周りの草を切り払った。


「マスター。でしたら、これをお使いください」

「え?」


 マリーが何かをポンポンと叩いている。


「何それ」

「ここから管理棟に向かえます」

「……別廊下ってことか」

「はい」


 驚いたことに人がやっと通れるくらいではあるが、この廊下は山を穿って反対側のあの廃屋に繋がっているという。


「『修復』!!」


 僕は途中で生き埋めになるのはごめんなので、念の為スキルで修復をかけた。

 そこまで難しい作りではなかったことはラッキーだった。


「じゃあ行こう」

「うん」


 遺跡にお泊まりか……。マリーもいるし大丈夫だと思うんだけど。


「マスター、お疲れでしょうからお茶を淹れます」

「あ……じゃあ焚き火の準備をするよ」

「それは不要です」


 遺跡の中で火を炊く訳には行かないと僕が外に出ようとすると、マリーが首を振った。


「ここから出る熱で調理ができます」

「ここって……棚じゃないか」


 腰ほどの高さの棚の上にマリーがケトルと並べると、しばらくして湯気が立ちはじめた。

 マリーは持ってきた茶葉でお茶をいれると僕達に出した。


「ほ、本当だ……」


 僕はぐびっとお茶を飲み干すと、マリーの使っている棚にすがりついてスキルを使った。

 

「ほんほん……」

「アレン、マリーが夕食作れないよ?」


 ああ惜しい。トンネルを直したせいで魔力が足りない。


「これは拠点にも置きたいな」


 複製だと強度が足りないかもだけど、壊れたら僕が直せばいいだけだし。


「あとでにしなって!」

「あ……うん」


 カラに引きはがされるまで僕はその高性能なかまど? にしがみついていた。



 翌日も僕達は山の中を探索していた。


「マリーは他の建物のこととかは知らないの?」

「ええ、私の担当区域以外のことは知りません」

「そうか……」


 時折、空もチェックするが知らせはない。


「はー……今日もここまでか……」


 そろそろ日が暮れる。そう思って空を見た。


「あ! 狼煙だ!」

「み・つ・け・た」


 カラが狼煙を見つめながら呟いた。どうやら狼煙の上げ方で内容を知らせる術らしい。


「ヴィオが何かみつけたようです!」

「日が暮れてしまう、早く行こう!!」


 僕達は慌てて山を降りて筏に乗り込んだ。

 ぐるりと回って、丁度灯台と山を挟んで反対側辺りだろうか。


「アレン、みんな!」


 ヴィオが僕らを見つけて駆け寄ってくる。


「多分遺跡じゃないかってものを見つけたぞ!」

「よし、でかした!!」


 そのヴィオの案内で僕達は山に入る。


「これは……」


 それは土から少し露出した白い人工物だった。

 今までのパターンととても似ている。


「ちょっと待って」


 僕は集中してそれにそっと触れた。

 流れ込んでくる膨大な意味不明の情報。

 ……確かにこれは建物だったものだ。そしてその年代はとてもとても古い物。


「これは随分と大型だな……」


 僕はゴクリとつばを飲んだ。


「とにかく今日はここまでですね」

「そうだな。修復するにしても明日だ」


 セドリックの言葉に、僕は頷く。


 翌日から僕はその建物の修復に取りかかった。

 大型なのもあって随分と時間がかかる。

 毎日灯台からこの場所に通って、一ヶ月がかかった。


「できたぁ……」

「まるで神殿ですね」


 僕が感慨深く修復を終えた遺跡を見ていると、横にいたセドリックがそう漏らした。

 確かに、その形は僕達がスキルを授けられる神殿によく似ている。


「さ、みんな待たせたね。じゃあ遺跡の中をあんないするよ」


 僕がそう後ろにいる仲間達にそう声をかけると、みんなワクワクした顔で頷いた。

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