最弱勇者の物語
藤咲 みつき
第1章
最弱勇者の物語
作者 藤咲 みつき
登場人物
勇者 アクア・リスカ
14歳
性別 女
黒髪ロングフリルの戦闘服、ミニスカ、二ーソックス
出身地 サベール村
剣士 クライン・レスアラ
18歳
性別 男
ひねくれ者で髪は少し長め、釣り目の男
出身地
魔法使い クリス・クロイツ
28歳
性別 男
白いマント、ロングヘアーの変人
出身地消滅により不明
巫女 ヒカリ・トウノ
15歳
性別 女
上は白い着物、下は赤いミニスカートの巫女服もどき
出身地 南東の島国にある、社の一族
魔王 リステア
18歳
性別 女
ポニーテールでお嬢様服装 現職の魔王。
出身地 魔王領首都 トラリベルズ
魔王の親友 アリス
20歳
性別 女
ツインテール、巫女服、体が少し小さい
出身地 魔王領首都近郊 ラベルリスタ村
謎の人 グラ
19歳
性別 女
みつ網で落ち着いた服装
出身地 魔王領 首都近郊 ラベルリスタ村
モンスター クリ「くうぅ」
?歳
性別不明
ピンク色のぷにぷにした何か
出身地 不明
第一章
かつて、この星には何千億という人々が住み、平和を願いながら暮らし、多少の争いは絶えなかったが、人々はそれなりに平和に暮らしていた。
だが2935年6月下旬世界的天変地異により世界は混乱に陥り、人々はあっさりと地球を捨てて宇宙へと上がり、地球には誰もいなくなったはずだった。
だが、例外はどこにでもあるらしく、この時もそれはあった。
地球を捨てた人々と地球に残った者。地球に残された者が結構いた。当初残された人たちは絶望した。
地球に天変地異が起きた時点で、星は終わる、そういわれていたからだ。
だが、それから10年で地球は正常な機能を取り戻し、人々は、また平和な時を過ごしていました。
3495年6月、世界はまたも危機を迎えます。
魔王といわれる者が世界征服をし始め、それから200年暗黒の時代と呼ばれる時代が来るが、3795年5月、5勇者という存在が現れ、魔王を倒し、世界にまた平和が訪れました。
しかし、歴史は繰り返され、またも魔王が現れました。
3967年6月・・・・・・どうして六月に集中しているかは不明だが、魔王と自分で名乗りを上げた者は、唐突に世界征服をはじめ、世界の半分ぐらいをあっさりと自分のものにしてしまった。
5月8日 8時40分
神聖帝国領内 サベール街道
(アクア)「というお話がありました。めでたし、めでたし」
(クライン)「終わらすな!」
私の適当な説明に不平不満を怒鳴りながら叫んだ相棒(仮)・・・・・クラインは私を見ながら呆れていた。
(クライン)「お前、その話、今、現在進行形だろ」
(アクア)「だって~、モンスター強いんだもん!」
(クライン)「勇者だろお前、どうして最弱モンスターすら倒せないんだよ。その剣は飾りか?」
私たちの前には今、クリと言われるプニプニしたピンクの変な物体がおり、それを倒すために私は剣を抜く・・・・・・はずなんだけど。
(アクア)「だって襲ってこないし!」
そう、クリは別に危険なモンスターではなく、何かしなければ襲ってくることもない、なので、無理して倒す必要はない、はずなんだけど。
(クライン)「お前、この前そこのクリにやられただろう!」
(アクア)「うぅ・・・・・」
そうなのだ、私、アクア・リスカは旅を始めて1ヶ月、最初に戦ったクリに、あろう事かボロボロにされたのだ。
子供ですら勝てると言われている、あのクリに。
そのとき助けてくれたのが、呆れと、哀れみの目を向けながら近づいてきた、この剣士、クライン・レスアラだ。
クラインは見た目は美形男子で、町を歩いていれば、きゃー、とか黄色い声が聞こえてくる人であるが、中身はひねくれている。
(クライン)「お前、今失礼なこと思わなかったか?」
(アクア)「何のこと? こんな美少女捕まえて」
(クライン)「否定は・・・・・・・はぁしたいが・・・・・見た目だけは可愛いからな、でも雑魚だし・・・・」
(アクア)「見た目は、と、雑魚は、い・ら・な・い」
そう、私は見た目は、正直自分でもわかるぐらい美人である。
黒髪のロングヘヤー、ニーソックスにミニスカート、フリルのついた戦闘服、見た目は完璧、剣も伝説の勇者の剣、聖剣(らしい)なのだ。
どこからどう見ても完璧(のはず)なのだ。
先日、クリと戦うまで一度も戦いをしたこともなければ、剣すら抜いたことがない、超素人という事を除けば。
(クライン)「いいから抜け」
(アクア)「え~、重いんだもん」
なんで装備品が完璧なのにボロボロにされたのかというと、重くて剣が抜けなかったという、根本的過ぎる理由からだった。
まぁ、当たり前といえば当たり前だ。今の今まで剣など握ったことがないただの村娘(自称、村のアイドル)が腕力があるわけがない。
そんな人に鉄の塊である剣を持たせ、旅に無理やり出されたのには理由が・・・あるにはあるけど、正直ありえない理由だった。
私の血筋が勇者のそれだったからという、ただそれだけで世界の命運を託されたのだ。
それならば私も真面目に態様しないで、適当にごまかしてしまえばいいものを。
(アクア)「よーし、世界を救っちゃうぞ!」
などと村の人に乗せられて言っちゃったので、言った手前、引けなくなっていた。
(クライン)「何してる・・・・・」
(アクア)「ぬ・・・・・ぬぬぬ、抜けた!」
(クライン)「・・・・いいから切りかかれ」
(アクア)「まだ14歳の私に、そんな物騒なことをさせる気なの、貴方は!?」
(クライン)「モンスター相手に何あほなこと言ってるんだ。どうせ重くて嫌になっただけだろ」
うぅ、この人、人の心読めるのかしら。
などと考えているうちに、私が剣を抜いたことが相手の闘争心を駆り立てたのか、普段はおとなしいクリが、私めがけて襲い掛かってきた。
(アクア)「え、え、ど、どどどあ!」
(クライン)「はぁ」
腹部に衝撃が走り、私はあっさりクリの体当たりを受けてしまい、そのまま倒れた。
(クライン)「起きろ、痛くないだろ」
(アクア)「何でわかるのよ」
倒れたまま答えると。
(クライン)「クリはプニプニしてるから別に痛くないはずだ。そもそも先日、よくもあれだけボロボロにされたとほめたいぐらいだぞ」
(アクア)「な、何ですって!」
私は勢いよく起き上がると、手に持っていた剣でクラインに切りかかる・・・・・はずがその重さで結局動けず、睨み付けるだけになってしまった。
(クライン)「いいから倒せ・・・・・俺も暇じゃない」
(アクア)「あくびしながら言わないで。私だって暇じゃないわよ、魔王を倒さないといけないんだから!」
(クライン)「へ・・・・・・・」
(アクア)「あー、もぉ、何なのよ! いいわよ、こんなの私がどうにか倒すわよ!」
鼻で笑ったクラインに心底腹が立った私は、怒りの赴くままに剣を構え・・・・・・ようとして結局剣先が地面についたままの状態で構えた。
相手との距離はさほどなく、クリはこんなの、と言われたことがムカッときているのか、ピンピンはねながら私を威嚇している。
相手が動き、私に向かって突進してくるのを、私は体を少しずらしてそれをかわす、その勢いで剣を中心に半回転、勢いを利用して剣を振り、相手に・・・・・・当たる寸前で惜しくもよけられた。
(クライン)「おお、考えた、考えた」
(アクア)「何よ、その、よくできましたね。えらい、えらい。みたいな発言は」
(クライン)「えらい、えらい」
イラ・・・・・・絶対に成功させてやる。
そう意気込みはしたが、実際どうしたものかと言うのが現状だ。
相手は小さく的が狭すぎる、今の私の命中率は無いに等しい状態、であれば・・・・・これしかない。
そう思い、私は剣を引きずりながらクリに踏み込むと、クリは私の動きに対して体当たりを真正面からしてきた。
私はそれを、左手で剣を持ちながら、右手を平手にし、思いっきり平手でクリを地面にたたきつける。
すると、クリは少しひるみ、動けなくなった。そこに私は自分の右足を押し付け、クリの動きを封じた。
(アクア)「どうよ、これで・・・・・」
(クライン)「最弱モンスター足蹴にして何、自慢げにしてんだ・・・・・・」
(アクア)「何よその哀れみの目は!・・・・・・うぅ・・・・・」
私は足元に居るクリに視線を落とすと、そこには涙目で上目ずかいにこっちを見ているクリがそこに居た。
私はそれを見て、自分は何をしているのだろうと、そう思わずには居られず、すぐにその足をどけてかがみこむと、クリの頭をなでた。
(クライン)「何してんだお前?」
(アクア)「ごめんね、痛かったよね?」
裏で呆れながら、ものすごくに何か言いたそうな視線を私に向けているクラインを無視し、私はモンスタークリにそう話しかけると、クリは理解したのか、うれしそうに飛び跳ねた。
(クライン)「うわぁ、モンスターが喜んでるよ・・・・・今まで見たこねぇ」
(アクア)「うるさいわねぇ、いいじゃない、モンスターだって生き物なのよ」
(クライン)「生き物だが外敵だ」
(アクア)「モンスターが皆悪いってわけじゃないでしょ!」
(クリ)「ピピピピ!」
(クライン)「な、何だこいつ」
私の言葉を理解したのか、それともクラインの言葉が気に入らなかったのか、ポンポン飛び跳ねながらクラインを威嚇する。
(???)「あははははは」
(アクア)「だ、誰よ!」
突然どこから高笑いが聞こえ、私は周囲を見渡し、クラインはなぜかげんなりした顔になりだした。
そもそも、こんなところで高笑いを・・・・・・に聞こえたのは最初だけで、なんだか不愉快な笑いかとをしていると感じ始め、そんな人物に私は多少なりとも苛立ちを感じた。
ある程度笑うのが終わったのか、木の木陰から二人の女の子が出てきた。
一人は髪型がポニーテールにドレス姿のどこかのお嬢様みたいな格好、もう人が三つ編みで、おっとりした感じ、ミニスカートにこれまた上がどうしてか和服・・・・・と言う変わった服装の女の子だ。
(おっとり女)「駄目よ、リステア、そんなに笑っては」
(お嬢様ぽい女)「いやいや、すまんすまん、まさかこんな面白いシーンが見れるとは。わざわざ来た甲斐があったというものだ」
(アクア)「あんたら誰よ・・・・・って何してのクライン?」
(クライン)「聞こえない、聞こえない、見えない、見えない」
何がなんだかわからないが、いきなりクラインがおかしくなりだし、耳を両手でふさぎ、両目を思いっきり閉じて何かにおびえているような、そんな状態だった。
(おっとり女)「何をしているクライン」
(アクア)「知り合いなの」
(クライン)「知りません、聞こえません、赤の他人です」
そんな態度を取られたら知っていますよと言っている様なものだが、本人が知らないと言うのだから、あえて突っ込むのはやめておいたほうがいいのだろうなぁと思った。
そんなことを思いながら謎の女の子二人に視線を向けると、彼女たちはどことなくえらそうな、そんな気がしてならなかった。
(アクア)「それで、何なの?」
(お嬢様ぽい女)「いやなに、勇者が現れたとか言うから見に来てやったんだ」
(おっとり女)「とんだ無駄足・・・・・・・」
登場して早々に、失礼極まりない発言をする二人をおいて置いて、私は横で挙動不審になりだしているクラインに視線を向けると、すでにそこにはいなかった。
(おっとり女)「こら待て・・・・・・」
(アクア)「へ?」
声がしたのでそちらに視線を向けると、首根っこをつかまれ身動きが取れなくなっているクラインがそこに居り、涙目で私に視線を向けていた。
(アクア)「クライン・・・・・」
さっきの捻くれた顔が今は情けない表情で私を見ているものだから、私は何なのこの人はと思った矢先。
(おっとり女)「リステア様、クラインですけど・・・・・・」
(リステア)「そうね、クラインね」
(クライン)「・・・・・人違いです魔王様・・・・」
魔王・・・・・様?
今何か聞き捨てならない言葉がクラインの口から出た。
(アクア)「あの、そこの美少女聞きた・・・・・・・」
(リステア)「何かしら貧弱勇者さん」
美少女といわれたがそんなにうれしいのか、満面の笑みを浮かべながら、私が一番気にしていることを口にし、これまた美少女ならでは天使のような微笑を浮かべていた。
(アクア)「魔王って・・・・・」
(リステア)「私のことよ」
ポニーテールの女の子は、そんなあっさり言うか?!
と声が思わず出てしまうぐらい、あっさりそういった。
などと驚いている場合ではなく、探している魔王が今目の前にいるのだ、これをどうにかしないてはないと思った。
けど、その服装、その人相と体格・・・・・どう見ても魔王と言うよりは、どこかのアイドルです、とか言われたほうがまだしっくりくるというものだ。
(おっとり女)「そうだ、女の子大好きすぎて世界征服をしだした変態が、魔王です。ちゃんと、この変体の家計が魔王の血筋なのがさらに世界的に致命的な・・・・・」
(リステア)「グラぁ、それ以上言うとこいつと結婚させるわよ」
(グラ)「いらないわよ。あなたの幼馴染でしょ・・・・・」
幼馴染・・・・誰が、誰の?
そう聞きそうになってクラインを見て、そういうことかと気がついた。
どうりで様子がおかしかったのだ、今さながらになっとくはした。
だが、どうしてこんな美少女を目の前にしてその反応なのか、それだけが腑に落ちないのは私だけだろうか。
(リステア)「何アンタ、私のあてつけにこっちの味方するの?」
(クライン)「いや、当て付けじゃないし、それに・・・・・・・お前俺の事恨んでるだろ」
(リステア)「ええ恨んでるわ!」
(アクア)「何したのよ、クライン・・・・・」
魔王に恨まれるぐらいだ、相当ひどい今年をしたに違いない、そう思って聞いていると。
(リステア)「美少女が皆アンタにメロメロだから、私がハブらせられないのよ!」
(アクア)「・・・・・は?!」
(グラ)「・・・・こういう魔王を倒すのよ、あなたは」
知りたくなかったです、グラさんとやら。
(アクア)「貴方、何のために世界征服するのよ・・・・・」
別に聞かなくても答えはわかっているようなものだけど、お約束というか、一様聞いてあげるのが筋かな、などと思いつつ、そう聞くと。
良くぞ聞いてくれましたといわんばかりに勇者の私に向かって、人差し指をさし堂々と宣言した。人の子と指さしちゃいけませんよ。
(リステア)「そんなの決まってるでしょ、世界の美少女たちを集めて私だけのハーレム帝国を作るのよ、あははははは」
貴方、女の子ですよね。
そう聞きたかったが、そういう人なんだと認識するしかもうないような気がして、私は頭を抱えたいのを必死でこらえていたのと同時に、どうしてクラインが他人のふりをしようと必死だったのかわかった。
魔王だからじゃない、これにからまれて同じ人だと思われたくなかったのだろう。
幼馴染ならなおさらだ。
(グラ)「リステア様、これどうするの?」
グラはそういいながら、首根っこをつかんでいるクラインに視線を落としながら、実にめんどうくさそうにリステアという魔王に向かって聞くと。
(リステア)「そうね・・・・・地中に埋めましょう」
(グラ)「環境に悪いわ、ちゃんと燃やして科学反応しないようにしないと」
(クライン)「お前ら、俺を危険物とか化学薬品じゃないんだぞ」
(アクア)「その前に葬られる所に突っ込みなさいよ!」
思わずつっこんでしまったが、こんな調子じゃぁクラインがこのリステア(魔王)から逃げたかったのもうなずける、いろいろ面倒そうだ。
(リステア)「そこの勇者!」
(アクア)「な、なに?」
一瞬、心の中でも覗かれたか、それとも、思ってることが口に出たかと思ってびっくりしてしまい、恐る恐るリステアに視線を向けると、彼女は満面の笑みで私に言った。
(リステア)「これ、あげるから」
(アクア)「いらないし、それに私と貴方は敵で・・・・・」
(リステア)「貴方が私を倒すの???????」
(アクア)「そんな、めいいっぱい、?、が頭に浮かびました、といわんばかりの反応をしなくても、私だってどう考えても無理ってことぐらいわかってるわよ」
などと言いつつも、ここで倒せれば面倒な旅もすぐに終わってくれる、などと浅はかな希望を抱いたりしたけど。
(リステア)「ほれ・・・・」
そう言って、右手を振り上げた瞬間、私の右を何かが通り過ぎると同時に、ドカドカと激しい音と砂煙が巻き上がり、視界が一気に悪くなった。
(アクア)「ちょっ、何なの!?」
砂煙が晴れ、視界が戻ってくる、私は何がおきたのか把握するために周囲を見渡す。
私の右側にあったはずの木々がすっかりなくなっており、何かに抉り取られたかのように新地になっていた。
ふざけていることを言ってはいるが、どうやら本当に魔王と言われるだけの力が彼女にはあり、私みたいに名前だけの存在ではないのだと言われている様な気がした。
(グラ)「あ・・・・・・」
(クライン)「はぁ、やっと抜け出せた。ほら、ぼけっとするな、お前もだぞ!」
(アクア)「え! え?」
(クリ)「クピ~!」
私とクリに怒鳴りつけると、抜け出したクラインがすぐに戦闘体制に入り、剣を鞘から抜いて幼馴染に構える。
それを見たリステアは、はぁ、と一つため息をつくと、背筋がゾクッとするような笑みを浮かべると。
(リステア)「久しぶりねぇ貴方とやりあうなんて・・・・・」
(グラ)「リステア様、あまり力を使われると・・・・・」
グラが何かを言っている途中でその言葉が切れ、ものすごい音ともに、リステアを中心に魔力が集まり、周りの重力が重くなっていく。
そんな中、私は重くなった剣を必死に握るだけで精一杯で動けず、クリちゃんも同様に動くことができない中、ただ一人だけあっさり動き、クラインはリステアに突っ込んでいった。
(クライン)「うぉぉぉ!」
(リステア)「『降り注げ、冷たき一滴の雫よ!』」
詠唱を行うリステアが右手を前に掲げると、右手から水が飛び出し、ものすごい勢いでクライン目掛けて襲い掛かるが、それを気にすることなくクラインは突っ込み、その剣で魔法で作られた水を真っ二つにぶった斬ると、そのまま進み、リステアに切りかかった。
だが、その刃は彼女にぶつかる、ほんの数センチで何かに阻まれるように止った。
(???)「リステア、クライン。ここで何してるの?」
(リステア)「はぁ~、邪魔するなよアリス」
(グラ)「ナイスタイミングよ、アリスちゃん!」
リステアに当たる直前にどこから現れたのか、一人のツインテール少女が登場し、あっさりとクラインの一撃を短剣で受け止め、何事もなかったかのように二人に話しかけていた。
(クライン)「あ・・・・・・アリス・・・・・また面倒なのが」
(アリス)「面倒とはご挨拶ですね、久しぶりの幼馴染、その2、との再会に」
アリスといわれたツインテール少女は、にっこり笑顔を作ると、クラインの剣をはじき、リステアをその小さな体で抱きつくと、その小さな体では考えられないようにひょいっとリステアごと距離をとった。
(アクア)「アレもアンタの知り合い?」
(クライン)「こっちを見るな・・・・・」
(クリ)「クピ~」
私とクリでクラインを見ると、クラインは顔を背け、私とクリちゃんから視線をそらした。
この男はどこまで魔王たちと関わりがあるのかと、そう思わずにはいられず。
もしかしたら私のことを消すために私の前に現れたのではないかと一瞬思った。
けど、この反応からしてありえないだろう、こんなにまで顔を合わせる事に抵抗している人が、その人たちのために戦うなど、まずありえない。
(アリス)「それで、お城をまた抜け出して、こんな辺鄙なところで何をしているのかしら?」
(リステア)「アリス、笑顔だけど目が怖いわよ」
(グラ)「無理もないわ、普通に魔王が出歩くアールピージーがるんですか?」
(アクア)「これはゲームじゃないでしょ!」
グラのボケについつい突っ込んでしまった私だが、本当にそうだ。
これは遊びじゃないし、もし遊びならば私はこんな剣などもって旅などしていない。
魔王など出てきたから、私はこんなことになっているのだ。
そう思うと、突然言い知れぬ怒りがこみ上げてきた。
(アクア)「そこの3馬鹿!」
(魔王組3人)「「「3馬鹿??????????」」」
そんな、誰の事いってるんですか、って言わんばかりに首をかしげながら、私のほうを振り向かないでほしいわ。
3人の間抜けな表情を見たクラインが、これで分かるだろ、かかわり合いになりたくない気持ちが、と言いたげに私を見つめてくる。
(リステア)「何よ最弱勇者」
(アクア)「うぅ・・・・・・」
それだけは言わないでもらえると助かります。
(クライン)「なにやってんだお前は。アリス、いいから連れて帰れ」
(アクア)「な、何を言って・・・・・・クライン、そこに魔王が!」
(クライン)「今のお前じゃまず無理だ」
そ、そんなにはっきり言わなくても良くないですか。
私は構えていた剣を下ろした。
正直に言ってしまえば、剣を持っているだけで、すでに限界で。これをもって走るなんて事が今の私にできるわけもなく、私は仕方なく相手の出方を伺う事にした。
すると、アリスといわれた女の子は、私を見てクラインを見て、また私を見て言った。
(アリス)「やめときなさい」
(アクア)「な、何のことよ・・・・・?」
私がそう聞き返すと、真顔でアリスちゃんは。
(アリス)「付き合ってるんでしょ」
(クライン)「そうなんだよ、いやぁ~まぐぁ!」
すかさず私はクリを手に持つと、それを全力でクラインの顔面に投げつけた。
冗談とはいえ、時と場合は考えなさい。
(アリス)「まぁいいわ、貴方ね勇者・・・・・・待ってるわ」
アリスちゃんはそういい。
(リステア「じゃぁねぇ、ちゃんとお城まで来てくれないと暇だか・・・・・・いや、神聖帝国の王都まで来なさい」
リステアは実に楽しそうにそう言う。
(アリス)「ちょっと、またどこかに行くのリステア、家臣にしめしがつかなく・・・・・」
(リステア)「グラ、そう目くじら立てないで。今から国王を消しに行ってくるのよ」
(グラ)「良いかもね、私は賛成よ。アレ邪魔だし」
どうやらこの3人は王都に向かうらしい、それならば、王都に向かってこの三人をどうにかすればこの旅も終わる。
などと浅はかな期待を抱きつつ、私は浮かれていた。
だが、肝心なことを聞き逃していることに私は気がつかなかった。
(リステア)「ということだから、追ってきてね最弱勇者と、その1と、その2」
リステアは、クラインとクリをついでのように言いながらそう言う。
(アクア)「俺は最弱じゃない」
(クリ)「くぴ!」
最弱勇者、といわれムカッとするも、こればっかりはどうにもできないが、クラインとクリ、二人そろって私以外はまともです、といわんばかりの反応をしてくれるのは、私に対する嫌がらせかしら。
などと落ち込んでいるうちに3人は姿を消し、森に静けさが戻っていた。
(クライン)「行くのか?」
(アクア)「行くに決まってるでしょ、こんな旅すぐに終わらせるんだから!」
(クリ)「クピクピ!」
(クライン)「俺は行かな・・・・こら放せ!」
(アクア)「アンタがいなかったら、私がリステア達に勝てないでしょ!」
こうして、私の魔王退治は、魔王の幼馴染と世界で一番弱いモンスターを仲間をしたところから始まったのでした。
幸先、若干不安がないわけではないけど、どうにかなるだろうと思いながら、クラインの首根っこを掴み、王都へと向かうのだった。
まぁ、私一人なんかで旅するよりは間違いなく倒せる確率が上がるはず、たぶん。
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