隠る心

NOTTI

第1話:突き進め!

 2020年冬、慎太朗はあるプロジェクトを始動させるための準備チームに選抜された。初招集日当日になり、彼が会場に着いて、受付をして会議資料を見たときにびっくりしたことがある。それは、メンバーが大手企業や各省庁など自分には場違いではないかというくらいハイスペックな人ばかりが集まっており、彼はまだどこか信じられないことが多くなっていた。


 実は彼がこのプロジェクトに参加するまでにはたくさんの挫折を味わってきた。その度に心身のバランスが取れなくなっていき、自分の中でコントロールが出来ない事もあった。


 そして、会場の関係者のような人に案内されて、会合が開かれる部屋に通されると、そこには経済産業大臣を含めた官僚の方々が前に座っていて、会議を始まるまで待っていた。その時、このような経験を今までしたことがなかった彼にとっては心臓が飛び出てしまいそうなくらいびっくりしてしまった。


 そして、会議が始まる時間になり、初日のプログラムが始まった。大臣のスピーチに始まり、各担当者の紹介、委員の紹介、メンバーの自己紹介と初日のレセプションが終わっていった。彼は式の間緊張がほぐれず、ずっと冷や汗をかいていて、隣に座っていたメンバーの方に心配されてしまうほどだった。


 そして、会議が始まると知らないうちに彼の中で使命感がみなぎっていた。


 そして、周囲が意見を出していき、彼に意見を出す順番が回ってきた。彼は緊張しながらも自分の意見を言い間違えないように話していた。そして、休憩時間にあるメンバーから慎太朗に質問してきた。それは、「あなたの経歴を見るとほとんどが短期間しか働いていないみたいだけど、大丈夫なの?」とすでに内部抗争のような状態になっていた。実はこの会議とは別のプロジェクトに参加している先輩からも「おそらく派閥闘争のようなものが渦巻いているから、巻き込まれないように気を付けた方が良いぞ!」と助言を受けていた。今回の場合は派閥闘争というよりマウントに近い感じだったため、「私は学歴よりもどれだけこのプロジェクトにどれだけ参加できるかが大事だと思っているので」とお茶を濁してその場を去った。


 そして、午後の会議が始まり、各担当者からのプレゼンテーション、事業説明など事細かに会議は進んでいった。


 その後、意見交換の場で他のメンバーから「この部分をこのように変えてはどうだろうか?」や「ここは良いが、ここはこうするべきだ」などプロジェクトの第一段階からかなり危ない船出になってしまった。彼は他のメンバーよりも出遅れてしまっている感が強かった。

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