第182話他人の空似
それでもわたくしが行かない事によりこの四宮家に泥を塗ってしまう事の方がわたくしは耐えられそうにないし、旦那様やここに住む使用人の方々に顔向けできない。
「分かりましたわ。取り敢えず明日出発すれば何とか間に合うようですので、早速出発の準備を致しましょうか。それと、クヴィスト家へ持っていくお土産を選びに日本へと向かいましょうか」
そして、これを口実に日本へ行きたい、そして商品を物色したいという欲求が無かった問えば噓になるのだが、ミヤコを含めその他本日の側仕え達の表情が喜々と輝きだしたのを見るに、やはり日本という国はたった一週間では満足できないと思っていた者はわたくしだけではないようだ。
一年単位で過ごしても満足しないと胸を張って言える。
「それでは、その様に手配と旦那様へご報告をさせて頂きますので今しばらくお待ちくださいませ」
「ええ、宜しくお願い致しますわ」
そして、既にお茶会へ行かなければならないという鬱屈した気持ちなどきれいさっぱり無くなりワクワクとした感情と、それと同時に日本のお土産でびっくりさせたいというドキドキへと変わる。
あれ程嫌だと思っていたお茶会を、むしろ行きたいとすら思えさせてくれる日本という国はやはりわたくしにとって旦那様と同じくらい大切で、必要な存在なのだなと思うのであった。
◆
馬車に揺られる事数日。
出発時にどこか見覚えのあるような気がする新人庭師に、すこしだけ引っかかりを覚えるものの、まさかあのプライドが人一倍高いお方が見下していたわたくしとその嫁ぎ先という場所で庭師の格好をする事などあり得るはずがない、他人の空似なのだろうと自己解決するような件があったのだが、それ以外は比較的何も問題などなくクヴィスト家へと到着する事が出来た。
そして今回同行してくれた側仕えはミヤコと何故か杏奈としおりんが同行していた。
同行してくれるのはとても嬉しいし、道中会話に花が咲き退屈しなさそうだと思うのだが、日本でのメイドとしてのお仕事は大丈夫なのか?と聞くと、今回同行するのも仕事の一環だと言うので大丈夫なのだろう。
因みにルルゥは子供の面倒を見なければならない為同席していないのだが、子供たちも同行したいとぐずり、それはそれで大変であった。
「お久しぶりですわね、シャーリー」
「ええ、お久しぶりでございます、ペトラ様。本日はお招きいただきありがとうございますわ」
前回会った時はわたくしの方が家格が上であったのだが今ではわたくしの方が家格が下になってしまった為、お姿こそあまり変わりないのだがお互いの態度は前回とは真逆である。
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