第148話重要な何かを知っていそうですね

「そして、一応手紙を送っているのですが、早くても返事が来るのが距離的にも四日後、遅くて一週間と言ったところですが、シュバルツ殿下や公爵家の息がかかった領地の街を経由した場合は手紙自体が届かない、又は返事の手紙が届かない場合が高いかと思います」


そういうモーリーはオークキングですら逃げ出してしまいそうな表情をしていた。


そしてモーリーの言うう通り、シノミヤ家へと送った手紙の返事はわたくし達の元へと来ない可能性が高いであろう。


恐らく配達の途中で検閲されて捨てられるのならばまだ良いのだが、公爵家またはシュバルツ殿下へ手紙を横流しさせられる可能性の方が高いであろう。


そうなった場合、手紙の内容はよくある日常を綴った文章であったとしても改竄されれば言い訳などできない上に、改竄等をしなくても嘘の内容をでっち上げられあらぬ罪をかけられた上にシノミヤ家と共に裁かれる可能性がある。


シュバルツ殿下と公爵家の権力を使えば多少の矛盾も握り潰され、他国のスパイとみなされ反逆罪を着せてくる等、あらぬ罪を着せる事等容易であろう。


そしてそうする事によってシュバルツ殿下と公爵家は国家反逆を企てた売国奴を捉えたという箔も付く。


「モーリー………」

「もう、そんな顔しないでくださいアンナ。今回の手紙については我が一族の許可を得ております。最悪の時が訪れた場合は速やかに他国へ逃げる段取りも出来ておりますから心配しないでください。ただ、そうなるともうアンナともシャーリーとも会う事はおろか手紙すら出せなくなってしまいますが………」


そしてモーリーは「それに」と話を続ける。


「何故だか知らないのですけれどもいつも最悪の場合を想定して石橋を叩きまくった上に石橋を渡らない様なお父様が今回に限っては、簡単に手紙を送る事を了承したと思えば怯える様子も一切見せずいつもと変わらない姿で過ごしています。これは恐らくお父様は最悪の事態にはならないという確固たる証拠をもっているのだと思います。ただ、その時が来ないことにはどうなるかは未定である事には変わりなく、誰も未来を見る事等出来ません為念のために逃げる準備をしているといった感じでもありますので、そんなん今生の別れが訪れてしまうのではないかという表情をしないでください。大丈夫です。今までもそうだったように何とかなりますわ」

「そ、それなら良いのですが………その話を聞く限りモーリーのお父様は今回の件について重要な何かを知っていそうですね」

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