第131話これは生の魚の肉だな

婚約破棄されて家を追い出された時はこの世の終わり、生きていても仕方が無いとすら思っていたのだが、今は婚約破棄をする前のわたくしよりものびのびと毎日楽しく、そして新しい発見をしながら暮らせているのだから人生という物は分からないものである。


そしてルルゥがわたくしの席に置かれた『こーら』という飲み物をコップになみなみと注いでくれるのだが、その『こーら』という飲み物はコップに溢れんばかりに泡立ち始めるではないか。


その様は、成人になったら飲んでみたいと、どんな感じなのだろうと思っていたエールないしシャンパンを彷彿とさせ、最早その黒い見た目からくる戸惑いよりも、飲んだ時どんな感じなのかという好奇心の方が勝っていたわたくしは黒い見た目に臆する事無く、しかしながら丁寧に口へと持って行き、一口、口に入れる。


「っ!?このコーラという飲み物、今まで体験したことのない不思議な味なのですけれども、そんな事よりもこの飲み物口の中でパチパチと弾けていますわっ!?」

「ああ、この炭酸ジュースの炭酸というのは口の中でパチパチと始める種類の飲み物だから、王国でいうところのエールやシャンパンと言った飲み物のアルコールが無い物、飲んだ時の爽快感は同じ部類と思って良い」

「わたくし、最近成人になったばかりでワインは嗜んだことがございますが、まだエールやシャンパンを嗜んだ事が無くて………思わず初めての感覚に驚いてしまいましたわ。それにこのように泡立っている飲み物を大人になったら飲んでみたいと思っておりましたし、幼き頃からの少ないわたくしの夢でもありましたので、今その夢が叶ったと思うと何だか不思議な気分ですわね」


そして旦那様が『たんさん』という物はこのように泡立つ飲み物の総称であると教えて下さる。


しかしながらこの『コーラ』という飲み物なのだが何だか甘くした薬の様な味であるのだが確かに言われてみれば癖になりそうな味でもあるな、と思う。


そう思いつつ、飲み物ばかり飲んでいてはお腹は膨れないと、こちらはこちらで楽しみにしていた料理へと目線を移す。


初めこそ席の上にはコップと食器しか無かったのだが、今では色鮮やかな料理の数々が運ばれている。


しかしわたくしはその中で一つ、見た事も、またどのような料理であるのか想像もつか無い食材が目に入って来たので旦那様へ聞いてみる事にする。


「旦那様、旦那様。これは何ですの?」

「ああ、これは生の魚の肉だな」

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