第96話今思えば息苦しかった



「ララちゃん、わたくし本当にララちゃんの着ているお洋服にビックリしただけですのよ?ただただ純粋に思った事を口にしただけで───」

「分かってますからっ!奥方様っ!!そんなに謝られたら何だかこっちも奥方様に悪い事をしたみたいになるじゃないですかっ」


『いーおーん」の駐車場、そこで今わたくしは今何度目かになる謝罪をしており、ララちゃんを困惑させていた。


しかし、困惑させていたとしても相手の対して不快にしてしまったかもしれないと思ってしまうと大丈夫と言われても謝ってもしまう。


「それだったらしもむらではないけれども丁度イーオーンにウニクロもあるんだし一緒にお洋服を買いに行ってみてはどうでしょうか、奥方様」

「お、そうだな。シャーリーも何着かはこちら側の洋服を持っていて損は無いだろうし、洋服を買うには丁度いいタイミングでもあるしな」

「旦那様、もう少し言い方という物があると思いますが?せめて『夫である俺が妻であるシャーリーに似合うと思う服を買ってあげるからその服を着た姿をこの俺に見せてくれないか』みたいな言葉の一つも吐けないんですか?」

「そんな、砂糖過多で口から砂糖を吐き出しかねない台詞など言えるか。それに流石にオッサンの俺にそんな事言われても気持ち悪いだけだ。そしてそんなルルゥのは『年相応』という言葉をお返しに返すよ」

「お言葉ですが旦那様はそんな旦那様だから唐変木なんですよ。黙って乙女代表のルルゥの言葉には耳を傾けて置くべきですし参考にして損はさせません」

「乙女ねぇ、年齢的にどうなの?」

「乙女に言ってはならぬ事を言いましたねっ!?旦那様っ!!この私がいかに乙女であるか耳にタコができるくらい説明しましょうかっ!?」

「だから恥ずかしいから止めてっていつもいつも言ってるでしょお母さんっ!!でも奥方様と一緒にウニクロでお買い物は大っ大っ大賛成っ!」


そして気がつけばわたくしが何度も謝罪するという流れから旦那様とルルゥの言い合いに変わっており、謝罪するタイミングを失ったわたくしは旦那様とルルゥとのやり取りや恥ずかしがって母親であるルルゥを止めに入るララちゃんをみて少しだけ羨ましいと思った。


公爵であるダルトワ家では常に公爵家として恥ずかしくない生き方をしなさいと厳しく育てられたあの日常は、あの時は比較対象が無いためそれが普通だとも思っていたのだけれども、今思えば息苦しかったのだと思い始める。

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