第88話ずるい。
言うなればこの料理は口の中で完成する料理なのであろう。
あぁ、食べる手が止まりませんわっ!!
「はふぅー………」
そしてわたくしは、気が付けば『そーすかつどぅん』をペロリと平らげ幸せが篭ったため息を吐く。
「美味しかったか?」
「はいとってもっ!!………こほん、とても美味しかったですわ」
わたくしが食べ終えた事を見て旦那様が美味しかったかと聞いて来るので思わず『そーすかつどぅん』を食べ終えた高いテンションで返してしまい恥ずかしさで顔が真っ赤になっていくのが分かるが一拍置いてとても美味しかったという事を伝える。
「旦那様の元へ嫁いでからというもの、毎日わたくしの知らない、そして想像した事もないくらい美味しい料理を頂けているのですけれども、貴族の主催するパーティーを何度も経験してきたこのわたくしがまだ味わった事の無い未知かつとても美味しい料理がまだまだあるのだと知って毎日が驚きと興奮の連続ですわ」
「そうか。こちらの料理がシャーリーの口に合ってたみたいで安心した。どんなに美味しい料理でも千人が食べれば一人は必ず合わない人も出てくるからな。それはそうと、口端にお弁当をつけているぞ」
「お、お弁当?って何を…………あっ!?」
旦那様はわたくしの話を聞きシノミヤ家での食事がわたくしの口に合っている事を知り安心した事を口にすると、わたくしの口端へ手を近づけて来る。
そして『あっ』と思った時にはもう旦那様はわたくしの口端にくっついていたみたいであるご飯を一粒取ると、そのままその一粒を旦那様の口の中へと入れるではないか。
な、なななな、なんと破廉恥なっ!?
いやでもわたくし達は夫婦なのですから別に良いのでは?
ぎゃ、逆に異性とも大人の女性とも何とも思って無いからこそ何の緊張感も無く『すっ』っといとも簡単に出来たのでは?
分からない。
分からないのだが、ただ分かる事があるとすればわたくしだけが旦那様の行動で一喜一憂しているのがなんだか納得が行かないという事である。
そしてわたくしは真っ赤に染まった顔を見られるのが恥ずかしいので下を向きながら旦那様の胸を抗議の意味も込めて納得いかないと軽く『ポス』と殴る。
「おっと、すまん。流石に三十超えたオッサンが年頃の異性にして良い行為ではなかったな。許せ」
そう言いながら頭を優しく撫でられると許してしまうでは無いか。
ずるい。
そもそも頭を撫でるという行為もわたくしどうかと思いましてよっ!!
と心の中で叫ぶのであった。
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