第83話凄い国力ですわね

「旦那様っ!こんな綺麗な石畳、見たこともない上にずっと続いてますわよっ!」

「ああ、それ石畳ではなくてアスファルトという石の様に硬いのに液体という少し変わった素材で出来ている」

「まるで石の様ですのに液体って不思議な素材ですわね」

「因み日本の道路のほぼ全ての道路はアスファルトで整備されている」

「く、国中ですのっ!?」

「ああ、国中だな。今走っている山の上の道がアスファルトで整備されている様に」

「す、凄い国力ですわね」


シノミヤ家の門を『まいくろばす』で出てから半刻程が経った。


『にほん』のシノミヤ家は山の上に建てていたのか見たことも無いほど綺麗な石畳の上をわたくしが知る馬車の何倍ものスピードでずっと降っていた。


余りにもスピードが出ていたのでそのままカーブを曲がりきれず石畳を超えてしまい整備されていない山の上斜面に放り出されてしまわないかという恐怖心から旦那様の手をギュッと握ってしまうが恥ずかしがる余裕などあろう筈もない。


しかしながらこのスピードで半刻も経てば流石に慣れて来る訳で、そして半刻もの間、地面に敷かれた石畳が途切れる事もなく続いている事に気づき思わず声に出してしまうと、旦那様が優しく蘊蓄を交えて教えてくれる。


それにしても国中の道を『あすふぁると』という素材で整備する程の国力を持つ国がいかに強大であるかという事が間接的ではあるが知れて、少しだけ恐怖を感じてしまう。


恐らく道路だけ見ても王国では逆立ちしても勝てない国家戦力及び技術力を持っている事が伺えて来るというものである。


「因みに奥方様、ガラスも液体なんすよー」

「へぇー………ガラスも液体なんですねー………へ?ガラスも、液体?」

「そうですよー」

「そ」

「そ?」

「そういう事だったんですねぇぇぇえええええっ!!?コレは凄い発見でしてよっ!今までガラスを扱った魔術が効率良く発動しなかったり計算よりも威力が小さかったりする原因は、ガラスが固形ではなくて液体だからですわねぇぇええっ!!コレは魔術界を揺るがしかねない事でしてよっ!!流石ルルゥさんですっ!」


あぁ、この事実を魔術師協会へ教えればどれほど王国の魔術が塗り替えられ、進歩するのか想像も出来ない程である。


そうは言っても今のわたくしはただの辺境領主の妻ですのでどうにも出来ませんし、もし伝えたとしても信じては貰えないですわね。


「おいルルゥ」

「何でしょう旦那様?」

「俺よりもシャーリーに刺さる蘊蓄を言ったのはわざとか?」

「ふふふ、さぁどうでしょう?お年寄りには何の事だが分かりません」

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