第78話お人形さんみたいっ!




「おかえりなさいませ、旦那様。そしてお初にお目にかかります奥方様。わたくしは四宮家の日本側を担当しております執事のジョンでございます。家名はございませんが日本では四宮家の養子とさせて頂いておりますのでこちらでは四宮を名乗らせて頂いております」


門をくぐるとそこに『にほん』で旦那様の側に仕える執事、ジョンと名乗る人物と複数名のメイド達が迎えてくれていた。


旦那様は王国だけではなく『にほん』の地でも働いているので、王国同様に『にほん』でも使用人を抱えていてもなんら不思議では無いのだが、最早見慣れて来た王国側と変わり映えの無い異国風の小部屋とこちらは王国風の支給服メイド服に身を包んだ使用人たちになんだか少しだけがっかりしてしまう。


「さすがに鳥居周辺は王国同様屋敷の中に繋がるようにしてある。悪天候や魔物や害獣、それと他人に見られてもまずいしな」


そんなわたくしの心を見破ったのか旦那様がわたくしの頭を少しだけ乱暴に撫でながら説明してくれる。


「わ。分かってはいますけれども、異国に来たという感動が来ると待ち構えていたのが少しだけ恥ずかしいですわ」

「これから想像していた以上の感動を嫌という程味わうのでお楽しみはこれからという事で取っておきましょう、奥方様」

「それもそうですわね」


そう優しくしてくれるルルゥなのだが、なんだかここ最近わたくしの周りがわたくしを子どもの様に接してくれている様に感じ、思わずこちらまで幼児退行してしまいそうですわね。


公爵家との対応の違いに、偶に戸惑いそうになる。


「ルルゥゥゥゥゥウウウッ!!久しぶりッ!!」

「杏奈っ!!久しぶりぃぃいいっ!!」


そんな時、わたくしと比べて恐らく外見からして五歳前後年下のメイドが母親ぐらい歳の離れたルルゥとまるで親友の様に抱き付き再会を喜び合うではないか。


その光景にわたくしは少しだけルルゥとを取られたような感情になり、モヤっとする。


「これが旦那様の奥方様ですかっ!?可愛いぃぃぃいっ!!お人形さんみたいっ!!」

「ダメですよ杏奈。いくら杏奈と言えど奥方様は渡しませんから」


しかしその感情が嫉妬心であると気付く前にわたくしはルルゥに抱き付かれ、アンナからわたくしを背中で隠す様にルルゥが遮る。


「旦那様の前だけならまだしも奥方様の前でそんなに子供みたいにはしゃいでみっともないっ!!我らが日本側の恥をこれ以上晒す出ないっ!この馬鹿っ!!」

「痛いっ!?ジョンさんそれパワハラですよっ!!労基に言いつけてやるっ!」

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