第39話語るに落ちるとはこの事か

「いえ、結構です。 その必要はございません」


 そして俺がシュバルツ殿下から頂いた、今回の任務が実際にシュバルツ殿下の名の下に下された正式な任務である事が記された羊皮紙を出そうとすると、門番は出す必要は無いと言うでは無いか。


 語るに落ちるとはこの事か。


 俺が持っている物が本物である場合は王族の命を妨げたこの門番の命の保証は無いだろう。


 だからこそこの門番は俺がシュバルツ殿下の命で来ている証拠を出される事を拒んだのである。


 そしてそこまで推理した俺は思わず口角が上がっていくのが分かる。


 そう、大義名分の名の下に人を切れるという事に、笑わずにいられようか。


 あぁ、この馬鹿には俺の言葉を頑なに拒んでくれて有難うという感謝の気持ちが湧いてくる。


 この俺をコケにした事をあの世で悔いるがいい。


「ハハ、ハハハハハッ!! よくもっ!よくもよくもよくもこの俺様をたかが平民風情がここまでコケにしてくれたなっ!? 今更事も重大さに気付いて命乞いいても無駄なんだよっ! ばぁぁぁぁぁあああかっ!!」

「どうなっても知らんぞっ!! それを出されてはこちらも引けぬのだぞっ!?」

「今更そんなハッタリで騙されるかよっ!!」


 あぁ、そうだ。


 この表情だ。


 シャーリーの奴の頭を足で踏み締めた時ほどでは無いが、自分が強者であると思い込んでいる弱者を踏み躙りお前は無力だと思い知らせるこの瞬間が、堪らなくゾクゾクする。


 この快感は一度味わってしまうともう戻れない。


 それ程までに強烈な快感が俺の身体の隅々まで駆け巡り、脳を溶かしていく。


 そして俺は快感が絶頂になった所でシュバルツ殿下から頂いた羊皮紙を出して紐を解き、丸まった状態から門番に見せ付けるが如く目の前で開く。


 その瞬間、辺りに落雷が落ちた様な乾いた破裂音が二発鳴り響く。


「あがっ!? あ、熱い………? 太腿が熱い……いや、痛い? 痛いっ! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い

っ!? 足がぁぁぁっ! 俺の太腿から血がっ!!」


 その破裂音と共に俺の両の太腿が熱いと感じた直後立ってられない程の痛みが襲い始める。


 見れば両の太腿から血が流れており、魔術で攻撃されていることに気付く。


「ぐぅぅうっ! 貴様……どうやってこの俺様に攻撃を当てたっ!? 予め施していた結界魔法が何故反応しないっ!! いや、そんな事よりもこの俺様に攻撃するとは何事だぁぁあっ!? 国家反逆罪として成敗して───」

「流石にしつこいですよ」


 そして俺の言葉を遮る様に女性の声が聞こえて来たと思うと一人の若いメイドであろうか?見た事も無い紺色の服にエプロンを着けている女性が現れ、また先程の耳をつん裂く様な破裂音が鳴り響く。

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