第23話大賢者様

「それでは、この部屋の簡単なご説明をさせて頂きますね」

「簡単な………説明?」


 想像していたよりも遥かに高性能、高水準のお風呂場の事を思い出しているとルルゥがわたくしに当てがわれた部屋の説明をすると言い始める。


 いくら箱入り娘と思われていたとしてもコレは無いだろうと思ったのだがお風呂場の件もある為わたくしには理解出来ない何かがあるのかもしれないと思いとどまる。


「まずこのエアコンの説明と操作法で御座いますが、この大きな矢印のボタン、上向きのボタンで室内の温度が一度上がり下向きのボタンで室内の温度が一度下がります。 また暖房と冷房があり外気が暑く感じる時は冷房で逆に寒く感じる時は暖房でご利用下さい。 冷房と暖房はここのボタンで切り替えが出来ます。 今現在秋ですので暖房で使用するのが好ましいかと思います」


 ルルゥの説明によりわたくしは一つの答えに辿り着いた。


「………………成る程、成る程ですわ」

「………奥方様?」

「ソウイチロウ様は大賢者様か何かなのですのね」


 それなら今までのマジックアイテムや今説明して頂いたマジックアイテムが存在する事も理解できるし、奴隷契約までして隠したいというのも理解できる。


 しかし、わたくしの言葉を聞いたルルゥは何故か笑うのを堪えているではないか。


「そ、そうですねっ。 ふふっ。 旦那様は確かに、視点を変えればある意味で大賢者なのかも知れませんね」

「ち、違うのですの?」

「さぁ、どうでしょう? 旦那様にお聞きになれば教えてくれますよ。 さて、それでは次に移りますね」


 一体、わたくしの旦那様となるとお方はどちらなのかルルゥはそれとなくはぐらかすとそのまま部屋に備え付けられた設備の説明をし始める。


 部屋の灯から冷蔵庫、目覚まし時計、電気ポット、トイレまで、全てが新鮮で全てがとんでもないマジックアイテムである事は分かった。


「あ、あの………」

「はい、何でしょう?」

「大変お恥ずかしいのですが流石に覚えきれませんわ………」

「あ、それでしたらこちらの冊子に全て纏めておりますので都度ご確認頂きますよう宜しくお願い致します」

「あ、ありがとうございます」





「全く、ここまで使えない奴等だとは思いもよらなかったわ。 何が騎士団の精鋭であるか。ボンクラの集まり、国庫の穀潰し供が。 アイリスの前で恥をかかせやがってからに」


 ダグラスが血相を変えて部屋を出て行ってもまだ俺は腹の虫は収まらずに悪態を吐く。


 小娘一人を始末する事すら出来ない者達を育て上げる為に国の金を出して育てているのではコレからの予算を見直す必要もあるだろう。

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