第24話なんと心地よい事か

「何を考えているんですか?」

「いや、コレからの事を考えていたんだよ」

「そんなの下の奴らに全部任せてやらせとけば良いじゃない。 何でこの国のトップがそんな面倒臭い事をやらなくちゃいけないの?」


 そんな事を考えているとアイリスが心底不思議そうに話しかけてくる。


 そして俺はその内容に衝撃を受けた。


 そうだ。 アイリスの言う通り俺がこの国ので一番偉い筈であるにも拘わらず何で俺が苦労をしなければいけないのか。


 アイリスの言う通り面倒臭い事は全て下の者がやれば良いではないか。


「おお、そうだなっ! 流石は俺のアイリスだっ!! 褒めてやろうっ! シャーリーと違ってやはり頭が良いなっ! あのバカは口を開けば『国民や下の者の為に殿下自らが動かねばなりませんわ』などと言いやがるから鬱陶し奴だったわっ!!」

「ありがとうございますっ! シュバルツ殿下っ! しかし、私の前であのブスの名前は出さないで下さいぃ〜っ。 私、あのバカがこの世に生きていると思うだけで恐怖でどうにかなってしまいそうなのぉ〜っ」

「おお、それはすまんな。 しかしアイリスよ、あんな女の事などいちいち怖がる必要などないぞっ! コレからはアイツの事はゴブリン女とでも思えばいいさ。 それに今俺の使える権力全てを総動員してあのバカ女を始末する様に動いている所だからな、安心出来る日も近いと思うぞっ!」

「ありがとうございますぅ〜っ! 流石私の殿下ですぅ〜っ!!」



 ああ、なんと心地よい事か。


 俺の凄さを理解出来ていないバカな女のシャーリーの時は俺が何を言っても『なりませんわ殿下。殿下のお立場をお考えください』等と小言が来ていた分、逆に俺の凄さを理解できているアイリスという女性がいかに優れているのかが理解できるというものであろう。


 この娘こそ俺の妻として相応しい。


 心からそう思えるのだが、いかせん俺の周りはシャーリー含めてバカが多過ぎて困る。


 俺の、アイリスを正妻として迎える旨を伝えた者全てが俺の正気を疑い、そしてアイリスを正妻として向かい入れる事を否定し出すのである。


 なんと無能ばかりなのかとため息すら出る。


 挙句の果てには我が父上である。


 シャーリーに婚約破棄を伝えた事を申し、代わりにアイリスを正妻へ迎え入れる意向を申した所、みた事もない形相で怒り出し、三時間は収まらなかった程であった。


 あれ程怒った父上は見た事がなかった為圧倒こそされたものの、父上も他の者と同じく無能であったという事の方が衝撃的であった。

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