第13話テント





「では暗くなる前にテントでも建てましょうか」


 賊達を縛り、最低限の治療を終えた後ミヤーコがそんな事を言い始める。


「テントを建てるのは良いのですけれども、そのテントそのものが馬車には積まれていない様に見えるのですけれども……?」


 そもそもの話、この馬車は商人が使う様な荷物を運ぶ様な幌馬車では無く少人数が乗るだけの四人乗りのランドータイプの馬車である為テントなどを収納する場所など無い上に、それらしきものも見えない。


「馬車後方の椅子が収納スペースでございますので腰掛けの部分を上に上げますと、その中に一人用のテントが二つほど入っております。 因みに前方部分の収納スペースには食料と、お昼の余ったカレーを収納しております。 二食連続でカレーとなってしまいますが一日寝かしたカレーは美味しいですので、一日とは行きませんが半日寝かせたのでお昼よりも美味しくなっている事でしょう。 ささっとテントを建てて夜ご飯と致しましょう」


 そんなわたくしの問いにミヤーコはそう答えると馬車の椅子の腰掛け部分を上げ、中から筒状の光沢がある濃い緑色をした布に包まれた物を二つ手にするとわたくしへそれを見せてくる。


 まさか、そんな細く短い、少し大きな枕の様な物の中にテントが入っているとでも言うのだろうか?


 わたくしも子供では無いので流石にこんな子供騙しに騙される訳が無い。


 そんなわたくしの心境などお構いなしにミヤーコは地面にシートを敷くと折れた棒に紐がくっ付いた様な物を取り出して瞬く間に一本の棒状にするとそれを二本使いもう一枚の布へとクロスする様に刺して行くと、テントが出来ていた。


 そしてペグを打ちテントを固定すると、その光景に驚くわたくし等お構いなしと言った感じで隣に同じ順序で素早くテントを作って行くのであった。






「はぁっ!? 暗殺に失敗したと、今お前はそう言ったのかっ!?」


王城にある一室に苛立ちだった怒鳴り声が廊下まで響き渡る。


「フン、大層な口を利くもんだからわざわざ貴様等騎士団を使ってやったというのに、言うにことかいてたかが小娘一人、それも唯一の攻撃手段である魔法もまともに扱えない状況の小娘一人の暗殺を失敗するどころか反撃され負傷した上に捕らえられて衛兵に突き出され牢屋に打ち込まれたとか冗談でも笑えねーぞっ!? ダグラスっ!!」

「す、すみません。 シュバルツ様。 確かに騎士団の中でも精鋭達を集めて実行に移ったのですが………」

「小娘一人殺せないどころか反撃されるレベルの者達が精鋭とは、お前達騎士団はおままごとをやってるつもりなのかなぁっ!?」

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