第12話本日一番の笑顔
それは一瞬の事でありわたくしも賊も一瞬呆けてしまうのだが、次の瞬間には賊たちが足を抱えて呻きながら倒れ始めるではないか。
一体どのような魔術を使ったのか?と見た事も無い攻撃魔術に立場も現状も忘れて興味が湧き始めるのだが、件のミヤーコさんを見ると全身の毛が逆立ち怒り心頭と言った感じであった為その好奇心にそっと蓋をする。
「我が旦那様であるソウイチロウ様の奥方様に手を出そうとする者が現れた場合は情け容赦なく始末するようにと、旦那様からご命令を受けております。 お覚悟は宜しいでしょうか?」
「ち、違うんだっ!! 俺たちは雇われただけなんだっ!! しかも雇い主は依頼を断れるような相手じゃないっ!! そ、それに俺達は賊ではなく王国騎士団なんだっ!! ほらっ!! これが証拠だっ!! それがどういう意味を持つか分からないお主ではなかろうっ!! 頭が高いぞっ!!」
ほんの十秒にも満たない短い時間で狩る側が狩られる側へと立場が変わり、情けなくもリーダーであろう男性が、何故かわたくしの方を見て命乞いをし始め、王国騎士団である証の銀バッジを手に取り見せるのだが、バックにいるお方の権力が通用すると思っているのか彼らには余裕が見て取れ、そして上から目線の態度は健在である。
そんな賊のリーダーに対してミヤーコが返事を返す。
「大丈夫ですよ。 恐らくあなたは獣人でかつ平民である私に言った所であなた達のバックに王族が付いている事が分からないとでも思っているのでしょうけどご安心ください。私もしっかりと理解しております故」
「だ、だったら────」
「まだ分からないのですか? 予め理解した上で反撃をしたと申しているのですよ。 アナタたちの頭でも理解できるようにご説明いたしましょう。 この奥方様の旦那様であられるソウイチロウ・シノミヤ様のこの国でのお立場は、あなた方のバックについているであろう王族よりも上、国王と同等のお立場でございます。 ソウイチロウ・シノミヤ様は我が王国の国王のご友人であるという事がどういう事か理解できずにあなたはこの依頼をお受けしたのですか?」
「あ、あれは単なる噂話では………」
「噂話であるのならば旦那様は今頃不敬罪並びに虚偽罪で投獄されているはずですが?国王がそれを黙認し投獄されていないという事はそういう事では?」
「ま、まってくれっ!! 俺たちは何も知らなかったんだっ!! だから、なっ!?」
そして賊のリーダーはミヤーコの言葉を聞き事の重大さを知ったのか先ほどまでの余裕は無くなり、今度は縋るように命乞いをし始める。
「では私たちは何も知らないまま犯され、殺されていたという事ですか?」
「いや………それはっ」
「そもそも、私達を殺そうとしたにも拘わらず逆の立場になると命乞いは流石にどうかと思いますけど………そうですね、仕込み武器が怖いので全ての衣服を脱ぎ捨てて裸になり、縄に繋がれた状態でヤルコの街まで行き憲兵に引き渡されるかここで死ぬかぐらいは選ばせてあげます。 あ、因みに旦那様が領主として経営しているヤルコであなた方のバックの権力が通用するとは思わない事です」
そしてミヤーコは本日一番の笑顔で賊達にそう問いかけるのであった。
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