第82話  終戦

ディスガルド軍が壊滅している頃、フェリクスはやっとダンジョンから出てきたモンスターたちに追いついていた。すぐに壊滅したディスガルド軍であったが、時間稼ぎと言う意味では十分な役目を果たしてくれていた。


軍を壊滅させたドラゴンを電撃魔法で素早く塵にすると、フェリクスはさらにスピードを上げ、モンスターたちの先頭を目指した。


それは直ぐに見えてくることになる。


フェリクスがこの前立ち寄った国境から一番近くの町にモンスターたちの先頭は居た。遠目に見ると町の城壁の上で冒険者たちがどうにか、モンスターたちの侵入を防いでいる様だった。


その様子が見えたフェリクスは魔法でそのモンスターたちを一掃した。


「消えた?」

「どうなったんだ」

「助かったのか?」


街を守っていた冒険者たちは突然、目の前のモンスターたちが消えた事に困惑していた、フェリクスはそこに声を掛けた。


「町全体に魔法を掛けるから、そこで町を守っといてくれ」

「まさか、お前が、モンスターを全部倒したのか?」


冒険者は状況からモンスターが倒していたのがフェリクスの所為だと判断したようだ。


「そうだけど、何か、質問でもあるの?」

「いや、確認したかっただけだ、町を守ってつもりの兵士たちは我先にどっかに行っちまったからな、君の様な冒険者が居て、嬉しい気持ちになっただけだよ。私たちでは力不足だろう、少し心苦しいが君の言う通りにしよう」

「よろしくお願いします」


引き留められて、急いでいるフェリクスは雑な質問を返したが、意外にも真摯な解答だった為、改めてフェリクスはお願いをやり直した。


それが終わると改めてフェリクスは探知魔法を使い、モンスターの進行具合と逃げ遅れている人がいないかを確認した。


そして、フェリクスは、モンスターたちが広範囲に広がっていることが分かった。


「シルフ、ノチス」

「また大変なとこに呼んだわね」

「ごめん、また、働かせて」

「・・・別に大丈夫よ」

「頑張ります、ご主人様」


精霊たちも呼び、フェリクスの防衛戦が始まった。


ダンジョンに潜り、ダンジョンコアを破壊するのと違い、モンスターが密集していないのがフェリクスの一番の問題だった。


それだったならば、刀で迫りくるモンスターたちをただ、切り伏せればいいが、モンスターたちが広がっているとそう言う訳には行かなかった。


どうしても広範囲をカバーしようとするとどうしても魔法か、精霊術が必要になってくる。さっきの巨人の先頭で魔力、神力をかなり消費したフェリクスだが、民を守ると決めた以上、泣き言は言っていられなかった。


なるべく、刀でモンスターを倒しつつ、刀で無理な敵は、魔法と精霊術で倒していった。いつまでもモンスターの波は続いてくると思われたが、どんどん一部のモンスターがダンジョンコアを破壊されたのか、塵に消えていった。


そうしてモンスターの数はどんどん減っていったが、フェリクスの魔力、神力もそろそろ限界だった。魔力、神力が少ない為、意識を保つのがかなり辛くなっていたフェリクスは、最後のモンスターが消えたのを確認すると、そのまま地面に倒れこんだ。


フェリクスが地面に倒れこむ前に、ダルクがフェリクスを抱え込み、地面に当たるのを防いだ。


「全く、無理はするなと言っただろうが」


しかし、ダルクの声はフェリクスにはもう聞こえていなかった。


フェリクスを地面に置いてダルクが待っているとそこに遅れて、ヴェルナーとロレンツが現れ、フェリクスの頬っぺたをつねってからかっていた。


「久しぶりに頼ってきたと思ったら、本当に大変で焦ったぞ」

「・・・元気そうでよかった」

「お前たち、あまりフェリクスで遊ぶなよ」


フェリクスの顔に何を描き始めた2人に対してダルクは注意を飛ばした。


「すみません、久しぶりでつい」

「・・・反省する」

「さて、後は後始末だが、どうしたもんか」


索敵魔法によって、ディスガルド軍が壊滅したことは把握していたが、この戦争の落としどころがどうなるかは、現時点でどうなるかは、ダルクにも予想がつかなかった。


なんなら、その軍にアースガル王や腐りきっていた貴族が全員いたとは誰も知らなかったのである。


幸いにもディスガルド帝国にはもう戦う戦力が無かったのでこれ以上戦いが起こることはなく、それは戦争が終わったことを意味していた。

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